目をそむけたくなるほどのリアリティ 『帝王の誤算』 #199
キャリタス就活が発表した「2020年卒の就活生が選ぶ人気企業とは?~就職希望企業ランキング」によると、1位は伊藤忠商事、3位に三菱商事と、トップ3には総合商社が2社も入っています。
一方、業種別で<マスコミ>を見てみると、トップは博報堂/博報堂DYメディアパートナーズでした。業績で業界トップの電通は2位。
「広告代理店」という名前は聞くものの、いったいどんな仕事をしているのか、という疑問をもつ人も多いと思います。
そんな方には日本最大の広告代理店を舞台にしたエンタメ小説をおすすめしたい。鷹匠裕さんの『帝王の誤算 小説 世界最大の広告代理店を創った男』です。
物語は「城田毅」という男の葬儀会場から始まります。そこで受付をしている真美は、長年、城田の秘書を務めた女性でした。
城田毅は広告代理店「連広」の社長だった男。「帝王」として君臨し、会社を日本最大の広告代理店へと成長させます。手段を選ばずナショナルクライアントの広告を独占、ライバル企業に圧力をかけ、トップクリエイターを取り込む。
その手腕をすぐ側で見てきた真美とは、いったい誰なのか?
実在の企業(どこかはお分かりですよね。笑)、実在の人物をモデルに、高度経済成長期の企業戦士が描かれています。
著者の鷹匠さん自身、広告業界の出身。「働き方改革」という言葉があふれる今日、単純に残業を減らすのではなく、もっとビジネスの根本から見直さなければいけないのではないかという疑問が執筆の動機だったそうです。
本の帯に「社員の命より、栄光が欲しいか」とある通りの世界が繰り広げられるわけですが、これは営業部から見た会社なのかもしれないなと感じました。この小説に登場する人たちは、誰の幸せのために働いていたんだろう?と思わずにいられない。
考えてみると、広告代理店自体、何かを生み出す企業ではありません。それは営業という職種も同じ。クリエイティブな仕事をしていると「過程」を大事にしますが、営業は結果が「数字」で判断される分、「過程」がなおざりにされるのではないかな、と。そうすると、手段なんてどうでもよくなっちゃいますよね。
過程をみない仕事には美学もセンスもないのです。
20年卒の学生はあと2か月ほどで社会人デビュー、21年卒の就活はまもなく始まるわけですが、どうか幸せな「仕事人生」を歩んでほしい。仕事をするって、やり方次第でいくらでも楽しくできるから、ね。
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