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ビジネスチャンスは転がっているものではなく、探索するもの【TLLイベントレポート #4】

7月29日に行われたイベント「“しごと“を見つめ直すフィールド 〜ローカルイノベーターの宝庫:京丹後に学ぶ〜」のレポートシリーズ最終回。京丹後へ事業を立ち上げたお二人と、コンソーシアムを率いる長瀬さん、そして外部企業としての立場で参画するIDLの白井さんの4人で、それぞれの異なる視点から「京丹後×仕事」のテーマでディスカッションしました。
(ここまでの流れは下記3編をご参照ください。)

まず一つ目の問いは「都市部の企業、ビジネスパーソンには、京丹後でどんな学びや関わりしろがあるだろうか?」

関さんからあがったのは、体験プログラムの提携先や、技術パートナーとしての関わり方。酒蔵から出る未利用資源の酒粕を利用して、タンパク質を抽出した代替肉的な新しい食品のアイデアがある一方、それを実現する技術や知識まで内部で賄うのはなかなか難しく、まさに連携や共創が求められる部分です。

足立さんは、都市部の人も巻き込み、サウナを一過性のブームではなく文化として醸成するようなアイデアやムーブメントの必要性を感じているそう。愛好家だけに刺さるものではなく、サウナ×マラソン、サウナ×食といった、パイを広げるコンテンツを発掘したいとのことで、都市部のサウナー企業人にとっては非常に心躍る機会かと思います。

一方、長瀬さんと白井さんからは、経営、組織マネジメント的な視点から、「本質的な問い」を見つける場としての価値を提示してもらいました。

長瀬:京丹後で事業をおこされている方の多くが、自然や地域の方々に調和するような経営をされていると感じます。里山、里海の保全に繋がったり、地域にお金が循環するような事業を、何十年何百年にも渡って続けている。ご本人たちにとっては当たり前のことだから「SDGs」「ESG経営」といったわかりやすいラベルは貼られていないけれども、とても大切なことに気付かされることが多い
ビジネス文脈にあえて置き換えるのであれば、経営戦略やサステナビリティの本質といったところでしょうか。

白井:課題先進的なところや、足りていないところも多い中で、「自分自身が動かないと何も変わらない」というマインドでスピード感を持ってチャレンジを続けている方が非常に多くいらっしゃる。だから、都会で自分自身の仕事と日々向き合っている方にとっては、思いもよらない根源的な問いに出くわすことが多いのではないかなと思います。

そういった方々との対話から自分自身の在り方を見つめ直すこと。少し視野を広げると、家族や友人と共にどう生きたいか。もっとスケールを広げると、地域をどうするか、存在している企業の中でどうあるべきか。突き詰めると、社会としてどうあるべきか、どう豊かにあるべきかというところに行き着くと思うんですよね。


ご自身のお仕事やビジネスを、ウェルビーイングを通して問い直した時に、事業としてどのように位置づけられるのかとか、どのように改善していけるのか。ふだんの生活に戻ってから、いきなり180度変えることはできなくても、何から変えていけるのか、という気づきや刺激を得られるのは貴重な体験だと思います。

企業が関わるメリットを挙げる一方で、短絡的、表層的な目的に偏重する危険性にも言及がありました。

長瀬:色んなビジネスチャンスがありますよと言えたら、それが一番いいですけれども、最初からチャンスが転がっている状態は割と稀有なのかな、と個人的には思っています。
現場で対話する中で、チャンスになるかもしれないものが見えてくると思いますので、興味や関心があったり、少しでも試してみたいなというものがあれば、ぜひ京丹後で我々に投げていただきたいです。そういう分野に興味がある事業者さんを紹介したり、色んな方法を共有して、一緒にやってみたい。ここまでのお話でも何度もありましたが、一緒に仮説を立てて実証していくことに対して非常にモチベーションの高い方が多いので、お客さんというよりは仲間として関わっていただく方が、建設的な関係性なのかなと思いますね。

足立:確かに、何かやりたいという思いや目的を持って来てもらう方が、京丹後をより楽しめるのではないかと思います。海をきれいにしたいとか、人と関われるコミュニティを作りたいとか、漠然としたものでいいので。

長瀬:今、京丹後では環境へのアクションを起こしている人が増えているので、その辺りのテーマを持ってきていただくのもいいですね。

山下:チャンスが最初からそのまま転がっているわけじゃないという話にすごく共感していて。チャンスになる前の、探索の過程が重要だと思うんです。例えば、環境関連の新しいビジネスをやりたくても、例えばビーチクリーンに参加してみて初めて見えるもの、取り組んでいる人のモチベーションだったり、活動の価値を知ることで、会社としての関わり方を発見できて、ビジネスの発想に繋がっていくのかなと。

ひととして、組織として。どちらにとっても、「最適解」を見つけるきっかけが京丹後にある

菊石:最後の質問は、先ほどの「事業の持続性」にも繋がりますが、「これからの仕事のあり方」について皆さんのご意見をお聞きできればと思います。

足立:「自分の最適を探す」と書きました。僕がサウナを通して改めて確信したのが、人の幸せはそれぞれ違うということです。学生の頃は、大企業で働いたらそれが幸せなんだと漠然と思っていたのですが、いざ東京のサラリーマンになってみたら全然面白くなくて。自分の仕事が人の幸せに本当に繋がっているのか、疑問に思う瞬間が多々ありました。

そんな時にサウナに出会って、目の前の人が本当にとろけた顔をしているのを見て(笑)。幸せってこういうことなんじゃないのかと思い始めたんですね。広告で沢山の人に幸せを感じてもらうのがモチベーションという人もいるけど、僕はインパクトはなくても良いから、周りの人を幸せにしたいんだと。人それぞれ、色々ある中で自分の最適を探す。比較対象がないと探すのが難しいので、色々チャレンジすることで、自分の幸せを漠然とした広いところから狭いところに落とし込む。そういう作業が最終的に自他の幸せに繋がっていくと思っています。

関:サウナ入ると皆本当に良い顔しますよね。

足立:そうなんですよ。言っちゃ悪いですけど、みんな本当にだらしない顔をしていて……。その人の素の顔が見れた気がして嬉しいんです。こうやって自分の愛することを仕事にしていくのは、これから重要だと思っています。白井さんが書かれている「本質的な価値」も同じようなことかと思うのですが、いかがでしょう?

白井:僕も、似たようなことを企業を主語に考えていました。今はどの企業も持続可能性やサスティナビリティをテーマに掲げています。そうなると、短期的なものよりも長期的、本質的な部分に向き合わざるを得ない。京丹後には、そのような根源的な問いを見つめ直すきっかけが多くあると感じています。まずはフラットに、探索するという気持ちで、京丹後に足を運んでいただければ。種を探すところは全力でご一緒させていただきたいと思います。

地域とサステナブルな事業アイデアをデザインする2泊3日

以上、4回に渡って京丹後の魅力を掘り下げたイベントレポートでした。ちょうどコロナの感染者数が落ち着いた谷間で、リアル開催できた今回のイベント。私自身最後にリアルイベントに参加したのがいつかわからないくらい久しぶりで、目の前の登壇者から感じるエネルギーに圧倒され、お仕事で参加したはずが、純粋に「おもしろい」という気持ちがしばらく冷めやりませんでした。単に「リアルだから」ではなく、「京丹後の人たちだから」が理由だと思います。

イベントでは何度も「新しいことを面白がってくれる土壌があるから、挑戦したい人が集まる」というメッセージが、それぞれの人の言葉で、違った角度から表現されていたと感じます。「土壌」や「空気」というものは数字では表せず、言葉でもすべてを表現し切ることはできません。是非一度京丹後に足を運んでいただいて「新しい何かを生み出せそう」というエネルギーを実際に感じていただけたら嬉しいかぎりです。

そして、「行ってみたい」と思ってくださった方の背中を押すような機会をつくるべく、丹後リビングラボでの活動の一環としてIDLでプログラムを用意しました。テーマは「地域と都市のCo-Update(コ・アップデート)」。都市か、ローカルか、という二項対立ではなく、現代社会に横たわる課題や価値を相対的に捉え直し、それぞれに転用・応用可能なしくみのあり方、事業の機会を探ります。

キーパーソンや生活者、注目の取り組みに直接触れられる京丹後というフィールドだからこそ実現し得る事業創造プログラムです。現地での体験や実感から新たな問いを掘り起こし、これからの社会と自社に望ましい事業をデザインする機会となるよう、IDLが培ってきた知見や視点を詰め込みます。詳細はこちらのページをご覧ください。

皆さまと京丹後でお会いできるのを楽しみにしています。


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