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ものづくりの側面から見る3Dプリンタ

こんにちは。323工房の、ものづくりびとの方です。

自己紹介でも書いた通り、当工房は、ものづくり畑の出の人間とCG・CAD畑の人間が2人でやっています。
この組み合わせは、3Dプリンタというものを始めるにあたっては結構有効だったのかな、というのが私たちの感触です。

3Dプリンタ。
たぶん、多くの人のイメージでは、

日頃からフィギュア作りなどをやっていて、新たな表現手段としてCGを取り入れたい、という人や……
CADを既に使っていて、これまでは自分でやるのは設計までだったけれど、形にするのも自力でやりたい、という人……

そういう人たちがチャレンジするもの、と思っているのではないでしょうか。

実際、検索してみても明らかに多いのはこのあたりです。つまり、「設計」や「ガジェット趣味」、そして「プラモ・フィギュア畑」。
モノというと、音が反響するスマホスタンドだとか、メッシュ構造になった何かの台とか。
その辺りが、外野の印象における「ザ・3D」なのではないでしょうか。

一方私は完全に「ものづくり畑」の人間。
用途の計算されたポケットがたくさんついているPCバッグよりも手縫いの革の鞄を、アップル○ォッチよりも歯車が見えたり太陽と月の文字盤だったりする腕時計を好む部類です。
こういうたぐいの人間でも、しかし、3Dプリンタは楽しい!ということを、同類の方々に向けて主張してみたいと思います。

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そもそもレジンである

光造形式の3Dプリンタって、レジンなんですよ。素材が。そもそも。

レジンのアクセサリ、大好きですよね皆さま。
私は元々の分野は違うのですが、それでもある程度触ったり試作してみたりしたことはあります。

3Dプリンタには2種類あります。
ひとつは、プラスチック等を溶かした糸のようなものを積み上げるもの(これもまあ、プラ糸で作る手びねり陶器だと思えば、親近感も持てなくもないですが)。これが「積層式」。
もうひとつは、レジンのプールから少しずつ硬化させて目当ての形を引き出してくるもの。これが「光造形式」です。

光造形式で使うのは専用の特殊レジンではありますが、基本的な取り扱いの注意などは同じようなもの。一度出来上がってきてしまえば、お手持ちのアクセサリー用UV硬化レジンを使ってパーツをくっつけたりもできます。
これだけでも、「なにがなにやら得体が知れない」感はだいぶ薄れるのではないかと思います。

CGができれば作れるわけでもない

この点について、CG側の視点からはまた別のnoteを書きましたが……

「CGができる人のためのものなんでしょ?」と言ったところで、CGができれば作れるというわけでもなさそうなのです。

しかしこの辺りは、逆にものづくり側から見れば、要するに、「試作からこっちは自分のフィールド」です。

どういうことか?

3Dプリンタが取り出してきた造形物を、最初はまだ少し柔らかいので、傷つけてしまわないよう注意しながらヘラを使って台座から外し、
レジンにどっぷり浸かった状態なので、アルコール洗浄液に浸け洗いをし、
窓辺で日光に当てて二次硬化をし、
台座とつながっていた支柱をニッパーで切って、表面をヤスリで仕上げる。
そしてお好みによってはアルコール絵具等で着彩したり、UVレジンを使って別のパーツをつけたり。

こういった「モノの取り扱い」は、結局はものづくり。

この一連の作業、私は実際、洗浄液とそれ用のタッパーくらいしか買い足さずに行えました。どこかしらで一度やったことのある作業ばかり。こっちのもんです。
CG側から入ると、ここで苦戦する人も結構いるんじゃないかなあ、と見ています。実際、「光造形式は、とてもきれいに出力されるが、仕上げが手間」みたいな意見もちらほら。ものづくり側から言わせてもらえば、まあ大丈夫! このくらいなら全然いけます!

「なんか作りたい」願望が手軽に叶う

例えば、↑のようなペンギンのフィギュアを作りたいと思ったときに、素材はどんなものが考えうるでしょうか?
陶芸? 木彫り? 型を作って石膏で固める? ぬいぐるみ?
そのどれでも、多分できるでしょうけれど……

↑のペンは? ガラス? 金属で軸を作って、既存のGペン先をつけられるようにする?

作りたいものがあったとき、まずはそれに合う素材・手法を考えて、自分のスキルの範疇でなければ勉強するなり人に頼むなりして……ということになると思うのですが……
3Dプリンタがすごいのは、「ある程度なんでも作れる」というところ。
もちろん、サイズの制限や強度の問題はあるし、色も質感も限られるし、それぞれの素材でなければ実現できないことは勿論あります。ただ「ひとまず立体化する」という点について言えば、実に手軽に、かつ幅広いことが可能だと思います。

私は長年レザークラフトをやってきました。土もガラスも扱えません。
しかしそんな私でも、「頭に思い描いたものを、ひとまず現実世界に顕現させる」ということが、3Dプリンタなら可能です。
3Dプリンタで立体化してから、じゃあこれを元型にして他の素材に移そう、というのでも、もちろんいいんです(実際、たとえば指輪など彫金のデザイナーさんは既に普通に、3Dプリンタで試作・元型作りを行なっているようです)。ただこの、「まず作ってみる」というスピード感において、3Dプリンタの右に出る手段は、今のところなかなかないんじゃないかなぁと思います。

※ この辺のスピード感や手軽さについては、もちろん、ソフトウェアによるという側面もあります。私にとってはzbrushという、いわばCG上で粘土細工をするソフトが、どうやら相性が良かったのですが、アクセサリー畑などの方ですとCADの方が性に合うといった場合もあるでしょう(この辺の区別は、いつかもう1人の中の人が多分書いてくれると思います。くれるんじゃないかな)。

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いかがでしょうか。

別にCGやガジェット系に興味がなくても、ものづくり畑の人間であっても、いや、だからこそ、3Dプリンタは結構楽しいし意外とアクセサリー作りや立体造形と重なる部分もある。そういう側面を主張してみたいと思います。

具体的な道具の揃え方や、いかにCG初心者でも上手いことやるかについては、またの機会に。

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