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トリビュートアルバムへのいざない (その1): 尾崎豊に捧ぐ (元教授、定年退職163日目)

最近はカバーソングについて、特に歌い手に焦点を当ててきましたので、今回は作り手側のアーティストに敬意を表する「トリビュートアルバム」についてご紹介します。古きよき時代を彼らと共に過ごした私たちにとっては、懐かしさがこみ上げてくるのです。トリビュートアルバムは元々洋楽に多かったと聞きますが、近年は邦楽にも素晴らしい作品が数多くあります。今回はその中から、尾崎豊さんのトリビュートアルバムを取り上げます。


トリビュートアルバムの魅力の一つは、そのアーティストを尊敬しているまたは親しい関係にある人々がカバーしているので、その人間関係や背景を知ることができる点です。また、オリジナル楽曲が、参加アーティストによってどのようにアレンジされるのかも見逃せません。以前も述べましたが、オリジナルの素晴らしさは言うまでもありませんが、異なる感性や技術を持つアーティストたちが自分流に曲を解釈し、新たな魅力を引き出す過程も楽しめます。カバーアルバムと比較すると、アルバム全体の統一感に欠ける面がありますが、その分、多様な音楽性に触れることができるのがトリビュートアルバムの魅力でしょう。


尾崎さんは私の少し下の世代ですが、鮮烈な歌詞とパフォーマンスで、若者を中心に圧倒的な支持を集めたカリスマ的なシンガーソングライターでした。26歳という若さでこの世を去りましたが、没後30年経った今でも、多くのファンに愛され続けています(タイトル写真:注1)。

私が初めて尾崎さんの存在を知ったのは若手教員だった頃。学生たちとカラオケに行った際、普段はおとなしい学生が尾崎さんの「卒業」を熱唱した時です。「先生あなたはかよわき大人の代弁者なのか。俺達の怒り、どこへ向うべきなのか」そして「この支配からの卒業。闘いからの卒業」という歌詞は、当時の私には少なからずショックでした。しかし、それと同時に、自分の悩みや生きる意味、そして夢や愛をストレートに表現する尾崎さんの音楽に、私もすぐに引き込まれていきました(下写真)。

私の iPhone から


<余談> 1987年に放送されたテレビドラマ「北の国から ’87初恋」でも、尾崎さんの絶大な人気を垣間見ることができました。主人公の「純 くん」が「れい ちゃん」と出会い、互いのぎこちなさを和らげていったのが、共通のファンだった「尾崎」の音楽でした。この自然な出会いの流れは、尾崎さんの音楽があったからこそ生み出されたと思います。

尾崎さんのトリビュートアルバムは、没後13回忌にあたる2004年にメジャー系アーティストによる「Blue」とインディーズ系による「Green」の2枚が同時リリースされました。「Blue」には、Mr.Children、斉藤和義さん、槇原敬之さん、岡村靖幸さんなどが参加し、尾崎さんへのレクイエムとしての思いが込められたアルバムとなっています。どの曲からも深いリスペクトを感じ取ることができましたが、同時に、参加アーティストたちはそれぞれの個性を存分に発揮しています。中でも特に印象的なのは、オリジナルとは全く違う曲かと思うほどの 175R による「十七歳の地図」、そして宇多田ヒカルさんの「I LOVE YOU」です。特に宇多田さんの歌声は秀逸で、透明感のある細い歌声で軽めに歌う「I LOVE YOU」が、女性の視点から解釈された新しい魅力を感じさせました。


トリビュートアルバムは、すでにこの世を去ったり、解散してしまったアーティストの魅力を、次の世代に伝える役割も担っています。尾崎さんの場合、特にその使命を強く感じます。

尾崎豊さんに捧ぐ(注1)


次回もトリビュートアルバムの話を続けます。どうぞお楽しみに!

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注1:NHK BS “尾崎 豊 約束の日 1991”リマスター より



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