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元教授のパリオリンピック観戦記(3日目、高レベルな観客に感激する): 定年退職121日目

パリオリンピック3日目です。最近の私は、毎朝蝉の声で起こされます。午前5時頃、一匹が「ジジッ」と鳴き始めると、一斉に何十匹もが堰を切ったように鳴き出し、とても寝ていられなくなります。しかし、今日はそのおかげで、5時15分から始まったフェンシング男子・エペ個人決勝をライブで見ることができました(タイトル写真、注1)。


日本のフェンシングが強くなってきたと、元フェンシング部の研究室学生から聞いていました。決勝のカードはフランスの英雄ヤニック・ボレル選手と日本の加納虹輝選手の対戦でした。ボレル選手の登場時、その体格差に度肝を抜かれました。身長は加納選手より頭一つ分大きく、肩幅や手足の長さも圧倒的に違います(下写真)。さらに、凄まじい地元フランスの応援も加わり(下写真)、まさにアウェーの状況でした。

ボレル選手(一番左)と加納選手(左から二人目)の対戦(注1)
凄まじい地元フランスの応援(注1)

試合開始後、最初は両者が探り合う展開でしたが、徐々にボレル選手の前に圧力をかける攻撃の前に防戦一方となりました。しかし、加納選手はそれらの攻撃を完全にディフェンスし、一瞬で飛び込んでいくアタックを決めました。その後も多彩な攻撃を続け、最終的には15-9で快勝。個人での金メダル獲得は日本勢初とのことで、朝から最高の気分に浸りました。

優勝の瞬間(それにしても、体格差)(注1)


観客に関して感銘を受けた場面が二つありました。一つは、試合の前後は声援が凄いのですが、試合が始まると完全に無音になるのです。選手へのリスペクトを感じさせる、素晴らしい観戦マナーです。もう一つは、試合後、観客全員がスタンディングオベーションを送ってくれたことです(下写真)。地元の英雄が敗れたにもかかわらず、ブーイングは一切なく、驚きました。ヨーロッパの騎士道は日本の武士道に通じるものがあり、選手も観客も礼節を大切にする素晴らしいスポーツだと思いました(明日、もう少し書かせていただきます)。

試合後、観客全員がスタンディングオベーション


3日目は日本勢が大活躍しました。サッカー女子はブラジル相手に終了間際に同点に追いつき逆転しました。水泳では18歳の松下知之選手が銀メダルを獲得。柔道でも阿部一二三選手が東京オリンピックに続き連覇を果たしました。一方、同じく連覇を狙った妹の詩選手が二回戦で敗退してしまいました(詩選手を破った選手は優勝しました)。スポーツで負けは仕方がないのですが、詩選手の場合は相当試合に賭けていたようで、終了後に今までに見たこともないほど泣き崩れていました。コーチが慰めても号泣は数分間続き、私は詩選手が壊れてしまったのではないかと心配しました。その時です。会場全体から「ウータ(詩)」コールが沸き起こったのです。柔道会場でこんな光景は初めて見ました。すると、彼女は少しだけ落ち着きを取り戻し、歩きはじめました。これこそ、素晴らしい声援だと感じました。


最後は、スケートボード女子ストリート競技について。日本勢が金・銀メダルを独占しました(下写真)。試合自体、素晴らしい逆転があり印象的だったのですが、感心したのはここでも観客の声援でした。他の競技とは少し雰囲気が異なり、明るく元気な応援が印象的でした。面白いと思ったのは、素晴らしい演技の成功時にもちろん声援はあるのですが、それよりも果敢に挑戦して失敗した選手に、より大きな声援が送られるのです。

表彰式後のワンショット、若い!(注1)

特に印象的だったのは、ブラジルのパメラ・ローザ選手でした(下写真)。元世界チャンピオンの彼女は、14,15歳の細い選手の多い中で、25歳で若干ふっくらした体型ですが、絶対に無理と思われるセッションに弾丸のようなスピードで突っ込んでいきます。ほとんどの挑戦は失敗に終わりましたが、観客は彼女の挑戦に大興奮。そして、3度目の挑戦でついに成功した瞬間、その日一番の大歓声が沸き起こりました。私も奥様と一緒に思わず声を上げてしまいました。スポーツ観戦の新たな楽しみ方を教えてもらった気がします。

ローザ選手、3度目の挑戦でついに成功!(注1)


今日は、観客の素晴らしさに焦点を当ててみましたが、とてもレベルの高い観客たちでした。では、また明日。

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注1:NHK テレビ中継より



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