【ただの日記】バレンタイン

昨日はバレンタインデーでした。
まぁ僕にとってはただの平日ですけどね。

小学校や中学校の頃、気になるあの子からチョコは貰えるのかドキドキしながら一日を過ごしたのが懐かしく、出来ることなら戻りたいと思います。

今年のバレンタインデーは一言で言えば、
教授から研究課題をどっさりと出されたため、コーヒー店でパソコンをカタカタする平凡な一日でした。
一点の出来事を除いては。

僕には、地元の友人がたくさんいます。
みんな小学校からの付き合いで、最近も公園でバスケをしたり、散歩をしたりして、節度を守って遊んでいます。
そのうちの友達の一人に齋藤という奴がいます。

齋藤は、去年の秋に彼女が出来て、交際3ヶ月で二人で新居を借りて同棲するというすごいことをしました。
僕は羨ましさを感じながらも、なにかお祝いしてあげたいと思い、バカラのペアグラスを買って祝ってあげました。祝ってやりました。

その齋藤が、バレンタインの日の昼頃に電話をかけてきました。
齋藤「いま何してる?」
自分「タリーズでパソコンいじってる」
齋藤「後で行くわ」
自分「はいよ」

という、ラインでもできる四文の会話を電話でして、電話を終えました。

三時になりました。
僕は割と集中モードに入っていて、脳をフル回転して考察を進めていました。

突然「よっ!」っと目の前から声がしました。

あ、やっときたな。
そう思って顔を上げると、齋藤が立っている横に女の人がいて、二人で立っていました。

「…えっ!」とびっくりして思考を停止する僕をよそに齋藤はニヤニヤしながら、僕の隣の空いている席に腰を下ろします。それに続いて、その女の人も齋藤の前に座りました。

突然の齋藤の彼女の登場に、どう振舞ったらいいのか、まずなにから話せばいいのか、妙な緊張と同時に頭が白紙になりました。
とりあえず、齋藤の友達としてふさわしい行動をしなければとだけ考えました。


僕の目を見ながら、「彼女」とだけ齋藤はいいます。
「そんなん分かるわ」
僕は思います。
ただ言葉には出しません。

そんな二人を他所に、
齋藤の彼女は「これ、バカラの御礼です。」と言って、リンドールのチョコセットを手渡してくれました。

その後、もはや自分がなんの言葉を発したか覚えていません笑
チョコのお礼を言って、最近何してるか、何の映画みたか、という当たり障りのない会話をしたのだけは覚えています。
友達の彼女に会ったときは、気の利いたこと言おうと思っていたはずなのに、突然のサプライズへの対応力は皆無でした。

十分ほど会話をして、二人は離席しました。
この後、ドライブに行くらしいのです。

「また今度三人で飲もうね!」
齋藤はそう言って手を振り、彼女も頭を下げます。僕も御礼を言って、手を振りました。

二人が居なくなって初めて我にかえりました。

店の外までお見送りするべきだった。
もっと自然に接したかった。
時を戻したい。


…全く集中できずに五時になりました。トートバッグにパソコンを入れて帰ります。
いつもは持ってない紙袋を手にぶら下げて



僕の横には今、リンドールのチョコがあります。
このチョコだけはとっても甘いです。

この記事が参加している募集

#自己紹介

230,124件

#この街がすき

43,763件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?