ショートショート:会員制の粉雪(戯)
トイレから戻ると、俺が予約したはずの『粉雪』が削除されていた。
「誰?粉雪消したの」
一瞬気まずい時が流れたのち、ひとりの友人が手を挙げる。
「なんで消すんだよ、俺の十八番だぞ」
入れ直そうとすると、手を捕まれた。
「何だよ」
「粉雪、入れないで」
「いや、だから俺の十八番なんだって」
「十八番って言っても君、サビのキー出てないよね、いつも」
「いや、そんな」
「毎回毎回カッスカスの『こな~ゆきぃ~』を聞かされるこっちの身にもなってよ」
「そりゃ、調子悪いときもあるけど、」
「いやいや、毎回だから」
「でも、冬といえばこの曲だし…」
「夏も歌ってんじゃん」
「…」
「歌う表情もちょっと嫌だ」
「…」
「君はもっと、」
「あー!わかった!わかったから!」
なんでこんなにボロカスに言われなきゃならないんだ!カラオケって楽しく歌うもんじゃないの!?
「君もサビのキーが出るようになったら歌っても良いよ」
「何なんだよそのルールは!」
「会員制の粉雪ってことで…」
(410字)
BGM 粉雪/レミオロメン
※フィクションです。
今回もたらはかに(田原にか)様の企画『毎週ショートショートnote』に参加いたしました。ふざけました。我慢できませんでした。すみません。
粉雪は難しいですね。でも、好きな歌を歌うのがいちばんだと思います。気を遣うカラオケは苦手です。(何の話?)
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