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【連載小説】発砲美人は嫌われたくない

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2020年10月の記事一覧

【連載小説】発砲美人は嫌われたくない_8

 高温に熱した鉄板に肉を載せた瞬間の、じゅぅうううという暴力的なまでに食欲を刺激するあの音に鼓膜を揺さぶられ、僕はたまらず生唾をのんだ。
 焼いているのは分厚くステーキカットにされた霜降り牛。
 キッチンにあるものは何でも食べていい、とヤカタさんは言ったが、そもそもキッチンには冷凍庫しかなかった。それも、狭い1Kのキッチン部分から今にもせり出してきそうな、業務用とおぼしき冷凍庫だ。
 "冷凍庫"に

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