アントン工房

アントン工房

最近の記事

月の夜、本を読む。一葉「裏紫」を読む

一葉の“圧っ” 「裏紫」は、樋口一葉最後の作品で、作品自体は中断したまま、一葉は亡くなってしまっています。 この作品の内容は、不倫をしている女性が、夫を誤魔化して不倫相手に会う為に外出する、これだけです。 ただ、この作品の原文を声に出して読んでみると一葉の文章の、すごい圧力のようなものを感じます。 私は、特に古文に詳しい訳でも専門的な知識を持っている訳でもないけど、この「裏紫」の文章の圧力は、ちょっと異様なぐらいだなと思いました。 一葉の生きた時代は、明治時代。 女性への

    • 裏紫に咲く藤の恋

      樋口一葉の最後の作品「裏紫」をモチーフに短い朗読劇をつくりました。(脚本・滝浪陽子) 優しい夫のいる女性、律が不倫をしていて、それに律の姉が気付き…というお話しです。 公演のリハーサルをそのまま録音した為、雑音が入っているのですが、一葉の文章の熱さは出ているんじゃないかなと思います。 是非、最後までお聞き下さい。 出演  一葉 後藤小百合 律 滝浪陽子 律の姉 岡崎朋代 吉岡 吉池健二郎 音楽 後藤浩明 Linga Franga公演リハーサルより

      • 月の夜、本を読む・大塚楠緒子「寂寞」を読む

         あなたが月がキレイと言ったなら 夏目漱石が恋していたという説もある大塚楠緒子さん。 その大塚楠緒子さんの作品をいくつか読んでみました。 現代の私達にとって作家としてはあまり知られていない人だし、評論でいくつか大塚楠緒子さんについて読んでも、高い評価は受けていないので、期待せず読みました。 が。予想外に心に響く作品がいくつかありました。 その中の一つ、「寂寞」という作品は、未亡人になった姉を支える為に好きな人との結婚をあきらめた妹を描いた短編です。 最終的に好きな人は別の人

        • 月の夜、本を読む・漱石「それから」を読む

          「それから」のそれから 夏目漱石は、言わずと知れた日本文学史に名を残す大作家である。 しかも作家として不遇な時代などなく、存命中から高い評価を得ていた。 28歳の時に結婚して、たくさんの子供にも恵まれ男子の跡継ぎも生まれている(これは当時の人生においてポイントが高い) 絵に書いたように順調で幸せな人生だが、40歳ぐらいから胃病に悩み始め、49歳で死ぬまでの間、病にひたすら苦しむ。 漱石は、結婚前に本当に好きな人がいたらしく、その人との結婚をあきらめてお見合いで結婚したらし

        月の夜、本を読む。一葉「裏紫」を読む

          月の夜、本を読む・末摘花の巻を読む

          紫式部、恐るべし! 紫式部は、源氏物語において、きらびやかで美しい数々の姫君を登場させながら、時折びっくりするような面白い女性キャラを描き出す。 中でも末摘花という姫君は、不美人の代表的存在として描かれる、かなり痛い感じの姫君だ。 しかも、末摘花は口下手でセンスもなく、和歌もヘボい(この当時、ヘボい和歌しか作れないのは女性として致命的なマイナスポイントだった)。 ただし、血統はとても良い高貴なお姫様だ。 主人公、源氏は、末摘花と関係を持っても全く恋愛感情を持たず、しかしや

          月の夜、本を読む・末摘花の巻を読む

          月の夜、本を読む 「源氏物語」を読む

          光源氏の孤独な宇宙「源氏物語」は平安時代に、かの紫式部が書いた長編小説で、その主人公、光源氏は(作中、様々な呼び方をされるが、ここでは光源氏と呼んでおく)、国の中枢で政治家として活躍しながら、様々な女性と関係していく。 その中で、紫の上という女性は、幼少の頃、光源氏に引き取られ、成長してからは、光源氏の、ほぼ正妻的な地位を保ち続ける。 しかし、紫の上が30歳前後の頃、光源氏は、紫の上より身分が上で、まだ十代前半の三の宮という姫君を、正式の正妻として迎えることになる。 身分

          月の夜、本を読む 「源氏物語」を読む

          月の夜、本を読む・宮沢賢治を読む

          宮沢賢治の詩宮沢賢治の詩は、小学生の時の教科書に載っていた。童話も読んだ。 彼の詩も、童話も、あまり幼い私の関心を引かなかった。 彼の作品は、幼い私から見て、あまりにも邪気がなさすぎのような感じがして、物足りないような気がした。 高校生になって。 それなりに頑張って進学した高校は、女子高で進学校で、自分に合わないと感じ(自分で選んだのだが)、家に帰ると両親とはケンカばかりで居心地が悪く。なんだか世界のどこにも居場所がないな、とか思っていた頃、賢治の詩と再会する。 そして、死

          月の夜、本を読む・宮沢賢治を読む