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月の夜、本を読む・大塚楠緒子「寂寞」を読む

 あなたが月がキレイと言ったなら

夏目漱石が恋していたという説もある大塚楠緒子さん。
その大塚楠緒子さんの作品をいくつか読んでみました。
現代の私達にとって作家としてはあまり知られていない人だし、評論でいくつか大塚楠緒子さんについて読んでも、高い評価は受けていないので、期待せず読みました。
が。予想外に心に響く作品がいくつかありました。
その中の一つ、「寂寞」という作品は、未亡人になった姉を支える為に好きな人との結婚をあきらめた妹を描いた短編です。
最終的に好きな人は別の人と結婚して、姉はなんと姉自身の油断もあり殺されてしまい、妹は一人ぼっちになってしまうという何とも可哀想なお話しです。
一人ぼっちになってしまった妹の悲しみや寂しさが読んでいる私にダイレクトに伝わってきて、楠緒子さん、人の生の感情が描けるすごい才能の持ち物だったんだな、と思いました。
だから漱石も、恋してしまったのかもしれないですね。
残っている写真を見ると美しい人だったようだけど、漱石が本当に好きになったのは、文章に現れた楠緒子さんの繊細で豊かな感情そのものだったのかもしれませんね。

夏目漱石には「それから」という、やはり本当に好きな人と結婚出来ない苦しみ悩みを描いた作品があります。

大塚楠緒子さんと漱石の恋愛の事の真偽は、さておき。

それぞれ他の人と結婚している二人が、各々の作品を通して心で交流していたとしたら、それはとんでもなく苦しくもあり、でもやっぱり素敵なことでもあるなーと思ったりします。

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