憧れのライターの「クリエイティブ・ストーカー」になれ! 文章スキルとセンスを手にする方法。
「作文の教室」を数多く開催してきましたが、一番多く質問を受けるのが「スズキコウタさんは文章力を高め、センスを磨くために何をしてきましたか?」ということです。
単刀直入に言います。
尊敬できる書き手を見つけることです。
そして、どんどん真似ていっちゃえ。
そういつも言っています。
これは作文だけでなく、音楽でも、美術の世界でも言えることだと思いますね。今では超一流の画家も、習作を描いていた頃は古典的な絵のオマージュをしていることが多いです。
大衆音楽の頂点に君臨しているザ・ビートルズも、活動を始めた最初の頃は、自分たちが影響を受けたバンドや作曲家の曲を真似ることから始めました。初期のアルバムは、14曲中6曲ぐらいがカヴァーであることが多いですよね。
「真似る」ことを恥じてはいけませんよ。最初はそれでいいんです。その「真似る」ということの中で、少しずつ「自分だったら・・・」というアレンジを取り入れていって、オリジナルを形にしていく。事実、ジョン・レノンとポール・マッカートニーは、そうして斬新な音楽が生んでいきました。
すべての創作物において、「100%私が根からすべて考えたオリジナルです」と言い切れるものってないんじゃないかなと思います。どこかしらに過去の秀作からのインプットがある。もちろん、オリジナルと言い張れるパーセンテージを増やしていけると幸せですけれどね。
だから、「真似る」ことに遠慮して、オリジナルを開発しようとしていると、なかなか先に進めないと理解したほうがいいと思います。
作文というと、小説、取材記事、エッセイ、評論、コラム、SNS投稿、広報など多岐に渡りますし、そのすべてに僕は向き合う学校として「作文の教室」をしていますが、どのアウトプットでも一緒です。まず自分でゼロから考えようとするよりも、「なんかこの人の言葉選び、空気感、切り口のつくり方が好きだ」というライターを見つけ真似ることがいいでしょう。
僕が2012年ごろ、NPO法人グリーンズで働き始めたときに、まず5人、この人の「クリエイティブ・ストーカー(※)」になろうと決めたのは‥‥。
(※)本当のストーカーではありません(笑) 憧れている人のアウトプットがどのように生まれているのか、文章をどんどん分析しテクニックや感性を見つけていく。同時にSNSでの投稿で垣間見れる普段の様子と彼らのアウトプットを重ねて検証していく。
僕が「クリエイティブ・ストーキング」している5人
松浦弥太郎さん
(あなたの暮らしを素敵にします、という切り口と空気感が印象的です。基本的にエッセイ畑の人ですが、温和な空気感の中にも、きちんと筋の通った提案を書く方です。)
辻信一さん
(面識もあり、大変影響を受けた社会活動家・教育者ですが、政治的・社会的・学問的に強い価値観や方向性を明確に提示するのに、言葉が柔らかいので、受け取り手もマインドフルでいられるし、思考の余白が担保されています。)
萩原健太さん
(僕が音楽評論家を志していたときのヒーローの一人です。評論家なのに、彼は「不公平」なんです。自分はブライアン・ウィルソンが好き、大滝詠一が好き、ボブ・ディランが好き、と自分の趣味嗜好を白状する。そして、偏愛ぶりを書きまくる。彼は口語の交え方、体言止めの入れ方が絶妙です。「しびれた」だけで一段落使う評論家なんて他にいない。)
兼松佳宏さん
(当時の直属の上司で、greenz.jp 2代目の編集長。社会課題に対して、アンチテーゼじゃなくて、クリエイティブなアイデアで打ち返すウェブマガジンの編集長だったわけですが、それゆえに漢字カナのバランスだとか、ライターさんのワクワク感の高め方にすごく注意をする人ですね。そうすることで、読者の心情変化を想定する。)
小沢健二さん
(ミュージシャンですが、彼の研究論文だとか、著書に綴られるエッセイやコラムは、すごく独特の世界観を持っています。端的に言うと、コラムを書くとしてひとつの事象をテーマ設定する。そのテーマをどんどん細分化して、読者を思考の旅行にいざなう力の秀逸さですね)
ちなみに。「クリエイティブ・ストーカー」になりすぎてたのか、兼松さんには、一時「僕の文章っぽ過ぎる」と指摘されたことがありました(笑) 近くで働いていましたしね・・・ 今は、そういうことはないと思うんですが。
本当のストーカーは犯罪です(笑) でも、憧れの方々の感性を追跡していくことは犯罪ではないでしょう。僕はこれ、見城徹さんが石原慎太郎さんに本を書いてもらうときに、過去の著書を一字一句暗記して打ち合わせに挑んだというエピソードから浮かんだんですけれどね。
こういう内容をガヤガヤ、僕以外の編集者たちも交えて「作文の教室」ですることになります。僕が楽しみ。みなさんも、遊びに来てください!
感性のストーカー、始めましょう!
INFO.
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