6.8 世界海洋デー
どこかの家の花瓶に挿した深紅の薔薇の花びらが音を立てて一枚ぽたりと落ちた
眠りについていた海洋生物が目を覚まし口から透明な泡をぶわりと吐いた
山頂に降った雨の粒が時間をかけて集まって蛙の泳ぐ池になった
深海で光る魚の鱗の遊色がどこかの森に新しい生命を産んだらしい
山高帽子のはるか上空を洗いたての石鹸の香りの雲が音もなく流れていく
しょっぱい水に顔をしかめる子供が一人
大きな鯨が口を開けて大量のプランクトンを飲み込んだ
その時どこかの夜に眠れない少女の呟きが月に向かって浮かんでいった
その呟きが雲を呼んで
雲は雨になって
雨は海へと流れて
また海洋生物を目覚めさせる
海洋生物の瞳のなかで
どこかの星が遊色に光っている
6.8 世界海洋デー
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