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擦り切れるまで

好きな曲の好きなフレーズを何度も何度も再生する。好きな映画の好きなシーンを何度も何度も再生する。きみがくれたあの言葉を何度も何度も再生する。反芻は、あの日々を本当にしてくれるかな、反芻が、わたしの一部にしてくれるかな。イントロを聴けば口ずさめるあの曲。この季節になると再生されるあの記憶。いつか擦り切れて、空白が生まれたその瞬間に、わたしはきっと、転生する。きみがまばたきをする瞬間に死んで、ふたたび目を開けた時には、わたしはもう、いないのに、きみの知るわたしはいないのに、きみはそのことにすら気づかない。わたしがわたしで在り続け、きみがきみで在り続ける確証なんてないのに、何が、ずっと愛してる、だ。わたしもきみも、おのれを過信しすぎている。だけど、信じることは祈ること。これは祈りだ。ずっと、は、きみに捧げる祈りであり、呪い。私を守ってくれていたその言葉が、いつか呪いに変わる時、やっとわたしたちは目を覚ます。その覚悟こそが恋でした。恋は命賭け。おのれを削り、おのれを研ぐ。間違った恋の仕方かもしれないけれど、そうしていのちを研いで磨くことが、磨き続けることだけが、ずっと、わたしにとっての恋でした。

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