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ひかりの淀

次の季節がわたしを呼ぶから生きてしまう。終電に向かって駆け抜けた街のひかりの残像がやけに綺麗で泣きたくなった。汚い街ほどひかりは鋭くかがやかしくて死にたくなった。だけど雨が、月が、私を生かす、この月は、この空は、どこまでも、あなたの街へも、きみの街へも繋がっている、その事実が、その縁が、わたしを生かす。もう会えぬひと。この星のどこかで、同じ空の下で、同じ月を見上げている時が1秒でもありますように。そんな祈りを、濡れたアスファルトにうつる星空や月光と一緒に踏みつけた。はやく家に帰ろう。わたしにはわたしの明日が待っている。わたしの季節が待っている。

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