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事業承継の3類型(②従業員承継)

従業員承継とは

親族内で後継者が見つからない場合、従業員や役員に事業を承継する方法で中小企業においては、親族内承継の次に検討される類型です。

「中小企業白書2019」によると、従業員承継を選択した会社は19.1%となっています。

中規模以上の企業では従業員承継が一般的であるものの、小規模になればなるほど親族内承継が多くなる傾向があります。

しかし後継者不足が問題となっている昨今、従業員承継を検討する企業は今後増加していくことが考えられます。

従業員承継のメリット

・現経営者が長期間一緒に仕事をしてきたメンバーの中から後継者を選ぶことができ、会社内容に詳しい人材に任せられること、これが最大のメリットです

・会社の事業や業界の商慣習といった実務に加え、企業理念や社風といった企業文化も理解しているため、ほかの従業員や取引先、金融機関等など、関係者からも受け入れられやすい

・社内においてある程度の実績を残しているので、育成の手間をかけずに済むことが期待できる

従業員承継のデメリット

・従業員としては優秀でも経営者として優秀かどうかは不透明で、先代経営者の手法を踏襲する傾向が強く、経営環境の変化に合わせて新たな取り組みが求められる場合に、後手に回ってしまう可能性がある

・事業承継に伴う株式の買い取り資金の調達が容易ではない

・会社が金融機関から融資を受けている場合、現経営者個人が融資に対し個人保証(自宅を担保提供など)を提供しており、その引継ぎができない可能性がある

・従業員後継者自身はやる気があっても、個人保証等の問題で家族の反対があり、事業承継ができない可能性がある


課題を克服する方策

・外部のセミナーや勉強会に参加し、経営戦略、マーケティング、財務、人事、組織運営など経営全般に関する学習支援をおこなうこと

・株式取得資金を確保するための方策として、後継者から経営者に分割で支払う方法や金融機関等と密に連絡を取り合って交渉し、資金の調達、経営者の個人保証の引き継ぎや個人保証以外の保証を活用すること


まとめ

中小企業白書によると、従業員承継の後継者教育では、親族内承継に比べて「経営について社内で教育を行った」「社外セミナーへの参加」が大きく上回っており、既に実務能力は認めており、経営の実践や知識に教育の重点を置いていることが分かります

また、経営者が自社株式を保有したまま、会社を後継者に委ねると「所有と経営の分離」が発生します。

これでは経営者と後継者の意見が異なる場合、従業員や取引先などがどちらに従えばいいのか混乱する原因になります

従業員承継は今後小規模企業でも増加していくことが予想されていますが、そのためには課題を克服することが必須要件と言えるでしょう



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