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成田悠輔リテラシー.2

2023年02月08日記事

成田悠輔ロジック2編

「希望はマルクスか、アルゴリズムか?」成田悠輔×斎藤幸平が〈22世紀の資本主義〉を語る

「文藝春秋」編集部 2023/01/13 source : 文藝春秋
資本主義は“脱成長の敵”なのか

 東京大学准教授の斎藤幸平さんと、イェール大学助教授の成田悠輔さんによる文藝春秋ウェビナーでの対談「日本はゲームのルールを変えられるか?」が、2022年11月27日に「文藝春秋 電子版」開催されました。その議論の一部をテキスト化した記事を公開します。

成田 脱成長論が敵をしっかり定義できているかというと、怪しい気がするんですよ。いまの資本主義が経済や環境の問題を本当に悪化させているか考えてみると、事実ベースでは怪しくないでしょうか。
 絶対的貧困のもとで生きている人の割合とかは世界で順調に減っているわけです。それから世界全体の所得格差、経済格差をみても、今世紀に入ってからなぜか急激に減り始めている。だから地球全体で考えてみると、経済格差や所得格差は縮小する方向に進んでいるように見える。
 環境の問題を見ても、資本主義を象徴するような国、アメリカにしてもEUにしても、CO2の排出量とかは少しずつではあるけど、順調に減っています。

「脱成長」論への疑問をぶつける成田悠輔氏

斎藤 本当に少しずつ、ですが。成田 だから成長と格差緩和、あるいは成長と持続可能性はトレードオフではなく両立させることができるのではないか。そういう機運が高まってきたのが、今世紀に入ってからの世界ではないでしょうか。そうすると、脱成長論の敵は、成長そのものや資本主義ではないことになる。成長という概念や資本主義をそのまま改良していくことで、脱成長論が達成したい目的が実現できるのではないかという気がするんです。この点について、どう思われますか?

斎藤 経済成長が飢餓や貧困や疫病のような問題を解決するために、必要なインフラや技術の開発を実現してきたのはたしかに間違いないと思います。依然として世界には10億人単位で基礎的なインフラを持たない人たちがいて、その人たちのためにも成長が必要なのは間違いないという側面はある。
 だから、私は必ずしもありとあらゆる成長が悪だと言っているわけではありません。ただ、他方で今の先進国を中心に、これからもGDPで測られるようなかたちで経済成長を求めていくことが、地球環境や、私たち個人の幸福にとってよいと言えるでしょうか? 「イースタリンのパラドックス」のように、これまではそうだったかもしれないが、ある時期から相関が弱まってくることもありえます。

「資本主義をぶっ壊せ」と安易に叫ぶな

 特に、いまの資本主義経済は、あまりに不平等な金持ちを作り出してしまっている。最近だと125人の富豪たちが排出している二酸化炭素の排出量が、フランス一国とだいたい同じくらいという、とんでもないデータがある。プライベートジェットとか正直なくても別に人間らしい生活ができるにも関わらず、彼らは好き勝手なライフスタイルで地球を破壊しているわけです。
「資本主義をぶっ壊せ」と安易に叫ぶな斎藤 こうした問題が果たして今より経済成長することによって解決されるか、疑問です。あるいは日本であれば経済成長しないがゆえにますます長時間労働が行われ、要らないものを買わせるためのマーケティングや広告が蔓延しています。
 であれば、むしろフレームワークを変えて、もっと違うアプローチを試すべきじゃないでしょうか。格差をより減らし、本当に必要ではないものを制限していく。
 そういったアプローチを試すことで、環境によりよいアイデアとか、格差を是正して幸せになれるような方法が出てくるんじゃないでしょうか。こういう風にフレームワークをずらすこともまた、脱成長の実践の一つではないかと思っています。

成田 え、そんなに穏健な話でいいんですか?
斎藤 ひとまずは。
成田 いいんですか? 資本主義をぶっ壊せ、って言わないと大きな物語になりにくい気がしますが。
斎藤 そのバランスはけっこう難しいんです。資本主義をぶっ壊せという話だけでいくと、非常にふわふわした話になってしまう。現実的には、いきすぎた格差を是正する、長時間労働を是正する、といった個別のイシューに応じた対策が必要です。行き過ぎた資本主義社会に警鐘を鳴らす斎藤幸平氏 その先に目指すものとして、ある種のコミュニズムは常に念頭に置いておく必要があると考えているんですね。そうでないと、何かひとつの前進があり、そこで満足して終わりという話に容易になってしまう。だから、資本主義をぶっ壊せと簡単に言ってしまうとユートピア的になってしまう。
成田 共産主義やコミュニズムみたいな理念を掲げても、それがほんとうに前進や改善になるのか、僕にはよくわからない。
「いま、成長を作り出している経済システムが問題を抱えている」、このこと自体は僕も斎藤さんも、おそらく全員が同意すると思います。ただ、その問題が、徐々に相対的には改善されているように見える事実も明らかになってきている。だから、今の資本主義社会のシステムも少しずつ前進している。
以下割愛

画像 経済学者・成田悠輔テレビ地上波初MC!『夜明け前のPLAYERS』本日1/16(月)よりYouTubeでの配信開始!1/23(月)日本テレビにて放送開始!|PR TIMES|
Web東奥 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1481377

Web東奥

働き方のこれまで と これから
リモートワーク時代に求められるPCとはイェール大学助教授 
半熟仮想株式会社代表 成田 悠輔 氏
デル・テクノロジーズ株式会社 クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネス開発事業部 本部長 三井 唯史 氏日経クロステック
「人はオフィスで仕事をするもの」という常識をコロナ禍が覆し、リモートワークが定着。それに伴い、よりハイスペックなモバイルデバイスを活用するビジネスパーソンが増えている。モバイルデバイスの進化とともに、アフターコロナにおける働き方はどう変化していくのだろうか。経済学者・データ科学者でイェール大学助教授・半熟仮想株式会社代表の成田 悠輔氏と、デル・テクノロジーズでクライアントビジネス開発事業を統括する三井 唯史氏が意見を交わした。
もはや人は「どこにいるか」を問われないリモートワークが普及し、出社と在宅を柔軟に組み合わせるハイブリッドワークといった新しい働き方も広がっています。日本にもアメリカにも拠点をお持ちの成田さんは、どのようなスタイルでお仕事をしていますか。
成田 いまはだいたい半々の比率で日本とアメリカに暮らしています。アメリカでは大学のある街にほぼ定住していますが、日本では東京に家がありながら、仕事と旅行を兼ねて各地をふらふらと移動することが多いですね。「日本」と「アメリカ」、「仕事」と「遊び」、「定住」と「遊牧」が曖昧なところで活動するのが自分の性に合っているようです。
コロナ禍は成田さんの生活にも大きな影響を及ぼしましたか。
写真:小田駿一 
イェール大学助教授 半熟仮想株式会社代表 成田 悠輔 氏

成田 大きな影響がありました。2020年春に日本にいるときに感染が急拡大し、翌年の秋までアメリカに行けない状態になりました。その間、アメリカの大学での授業は日本からリモートで行いました。特に不都合を感じることもなく、それがきっかけになって日本にいながらアメリカの学生に向けて講義をしたり、アメリカにいながら日本のテレビ番組に出演したりすることがすっかり当たり前になりました。「場所や時間を無視して好き勝手に仕事をするとどうなるのか」という実験をしているつもりでいます。こんな時空間実験がちょうどできる時代にたまたま生きていたことに感謝ですね。
コロナが教えてくれたのは、学生と教員が教室に集まって授業をしたり、メンバーが顔を合わせて会議を開いたりするのは、多くの場合「そうしなければならない」という思い込みだったということに、私だけではなく多くの人が気付いたことです。人が決まった時間に決まった場所に集うことが多くの場合に無意味だという啓示を受けた感じです。もちろん人が集まることによってはじめて芽が出る組織や文化があるのも明らかですが…
三井 成田さんがお話しされたように、コロナ禍はこれまでの働き方に様々な疑問を突きつけました。デル・テクノロジーズは2020年度末に本社オフィスを神奈川県の川崎から東京の大手町に移転させる予定でしたが、コロナ禍となったために延期を余儀なくされました。当社ではもともと全社員にノートPCが配付されていたこともあって、外出自粛要請が出ていた期間中にリモートワークが定着。2021年9月には新しいオフィスへ移転しましたが、図らずもリモートワークで十分な生産性を発揮できることが明らかになり、オフィスの稼働率は高くありません。この状況にアジャストするオフィスの有効な使い方が社内で検討されはじめたところです。
成田 「本社は東京に」というのはいかにも日本的ですよね。アメリカは国土が広大なこともあって、何かをするために全員が同じ場所に集まることが物理的に難しい。ビジネスにせよ学問にせよエンターテインメントにせよ、はっきりとした中心地がなく、ニューヨークもあればLAもサンフランシスコもあり、ボストンもある。だからリモート化しやすい土壌があるわけですが、日本では対照的に大企業の本社の大半が東京に集中している。対面の意思疎通がしやすいのは利点かもしれませんが、そうしたアナログなコミュニケーションや働き方がうまくいく副作用として、リモート化やデジタル化が進みにくいというジレンマを内包しています。
リモートワーク時代に求められるPCとは日本とアメリカを頻繁に行き来し、日本国内における移動も多い成田さんは、携行するモバイルデバイスをどんな基準で選ばれていますか。
成田 持ち歩いても腰と肩に負担がかからない軽さと大きさであることが条件ですね。たとえ室内にいても私は同じところにとどまることが苦痛に感じるので、デスク、ソファ、ベッドと場所をこまめに変えながら仕事をします。そのため運びやすい13インチのノートPCを愛用していて、自宅では大型のディスプレイにつないで使っています。デスクトップPCを持たずにほぼすべての作業をノートPC1台で完結させられるのは、手元で巨大なデータを扱うことが少なく、計算系の作業はほとんどクラウドに投げるからです。
成田さんが重視する「携行のしやすさ」以外に、リモートワークが普及して以降のPCに対するユーザーのニーズに大きな変化は生じていますか。
三井 当社ではこれまで、個々のお客様に最適なデバイスを提供するため、「どこで働くのか」という観点からユーザー像=ペルソナを「外勤型」、「社内移動型」、「オフィス中心型」、「在宅型」にカテゴライズしてきました。しかしコロナ禍となってオフィス以外の場所で働く人が増えたことで、その見直しを迫られるようになりました。現在は「ビルダー」、「コネクター」、「スペシャリスト」、「プロデューサー」に分類、それぞれにマッチする製品やソリューションをご提案しています(図)。

リモートワークの拡大に伴い、PCユーザーのペルソナがそれまでの「どこで働くか」に変わり、「何をするのか」の観点から定義し直された
成田 「働く場所」ではなく、「その人の役割」に応じてペルソナを再定義したわけですね。
三井 そのとおりです。市場変化の大きな特長として挙げられるのは、固有の分野で専門性を発揮する「スペシャリスト」の多くが、一般のノートPCよりハイスペックなモバイルワークステーションに注目しはじめたことです。これまでは「大きな業務データを扱うスペシャリストはオフィスでデスクトップPCを使って仕事をする」という固定概念がありましたが、モバイルワークステーションを使えばリモート環境でもオフィスにいるときと同等の作業をすることが可能です。欧米ではモバイルワークステーションの普及率が50%を超えました。日本での普及率はまだ30%程度で欧米に比べると低い水準となっているものの、コロナ前は10%台だったことを考えるとここ数年で大きく普及が進んだといえるでしょう。今後もモバイルワークステーションのユーザーは大きく増加し、リモートワーク時代のキーアイテムになるのではないかと思われます。
主にどんな業界・業種のユーザーがモバイルワークステーションを活用しているのですか。

三井 代表的なのはCADによる設計をされる方やゲームクリエイターです。当社がサポートした建築会社では、印刷したCAD図面を建築現場に携行して複数の関係者が確認し、帰社後に会社のデスクトップPCで修正点を反映させていました。それでは非効率だということでモバイルワークステーションを導入し、設計データそのものを現場に持ち出すようにしたところ、その場で修正ができるようになって生産性が大幅に向上したということです。また、コンピュータグラフィックスの専門学校では、学校に据えられたデスクトップ型ワークステーションをモバイルタイプに更新。学生さんがデバイスを持ち帰れるようにすることで、自宅でもクリエイティブな作業ができるようにしています。
成田 なるほど。「大きなデータや重い計算を扱う作業にはデスクトップ」という考え方も旧時代の慣習ということになっていきますね。
リモート化が進んでもオフィスはなくならないアフターコロナ、またその先において、日本のビジネスパーソンの働き方はどのように変化していくと推測されますか。
成田 これからは、場所や時間に縛られずに働く人と、昔ながらのオフィスベースで決まった時間に仕事をする人に二極化していくのではないかと思います。前者に適しているのは、業務内容が明確に定義され、周囲にいる仲間と絶えずコミュニケーションを取る必要がなく、しかも成果が個人単位で測りやすい仕事で、設計士やデザイナー、エンジニアやサイエンティスト、各種の士業などがそれに相当します。そうしたスペシャリストは束縛されない方が働きやすいでしょうし、雇用する企業側もその人たちのために都心部で高いオフィス賃料を払う必要がないという意味で、Win-Winの関係といえるかもしれません。
ちなみに成田さんが代表を務める半熟仮想の皆さんはどんな働き方をされているのでしょうか。

成田 研究やソフトウエア開発などを手掛ける私の会社には10人ほどのメンバーがいますが、実際に顔を合わせる機会は少ないですね。近年の小規模なスタートアップ企業やWeb3系のコミュニティは、物理的に集まる場所を持たずにバーチャル組織として出発するケースが多いようです。既成の常識ではメンバーが分散している組織は機能しないようにも思われますが、初めからそういうつもりで立ち上げればうまくいくのかもしれず、今まさにそこが試されているところです。ただし、バーチャルな組織に携わる人や前述したようなスペシャリストは働く人全体から見れば少数で、大部分の人はこれまでどおりに組織ドリブンであり続けるでしょう。アメリカですら、リモートワークが進み過ぎて誰がどこにいるのか分からなくなった状況の揺り戻しのようなかたちで、社員をオフィスに呼び戻そうとする動きが見られます。
PCメーカーとしてはこうした状況をどう見ていますか。
三井 働き方が今後どう変化していくかは未知数ですが、高性能なデバイスの提供を通じて、ユーザーがどこにいようと高い業務生産性を発揮してもらう、という我々の使命は不変です。
成田 モバイルワークステーションが真価を発揮しそうな領域は、設計やデザインといったクリエイター系の業務以外にもあるのですか。
三井 実は一般的なオフィスワークにも広がっていくのでは、と考えています。データ量が膨大なためにスプレッドシートやプレゼンテーションソフトなどの動作が重いことに悩まれる方が少なくありませんが、ハイパフォーマンスなモバイルワークステーションはそうした課題の解消にも役立ちますので、業務効率化にも有用です。性能を体感していただくために検証機の無償貸し出しも行っていますので、ぜひ試してみていただきたいですね。
成田 無償貸出しで疑似体験できるのですね。それ以外にも何か今後ビジネスに向けたサポートを考えていらっしゃいますか。
三井 製品の提供にとどまらず、お客様同士が横のつながりを構築できるような場の提供にも力を入れていきたいですね。一例ですが、当社ではVRに関連するセミナーを主催するだけでなく、VR研究会をスポンサードし、参加企業様へ検証機材や人的リソースの積極的なサポートを行っています。今後はこういった活動を拡充することで、より一層お客様のビジネスにとって有益な支援をしていきたいと思います。
成田 そういった活動の中から新しいアイディアやビジネスチャンスが生まれてくるかもしれませんね。楽しみにしてます。

続編


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