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古いピアノと昔の部品

ピアノの鍵盤の下には何枚もの紙が入っていて、その量によって鍵盤の高さと沈む深さを調整できるようになっています。

「紙パンチング」と言うパーツで、厚さ0.04mmのかなり薄いものから、ある程度の厚みの0.75mmまで各種あり、これらを1枚抜いたり数枚足したりするだけで弾き心地がガラッと変わります。

厚みごとに色分けされています

この紙パンチング、今ではきちんと規格化され厚さが決まって売られていますが、昔はまだパーツとして製品化されておらず…当時の調律師は自分でチラシをポンチでくり抜いて作っていたそうで。

古いピアノの鍵盤を外してみると図らずも意味深なメッセージになっていたりして面白いです。

ただ、自作パンチングは厚みがランダムなのでこれが入っているピアノはメンテナンスがちょっと面倒なんです。

今の規格品であれば、「これなら青1枚入れれば揃うな」とか「ピンクを抜いて緑を入れよう」と計算しながらスピーディに作業ができます。チラシだとやってみないとわからないので地味に時間がかかります。

そして薄いチラシを大量に重ねて厚みを稼いでいたりするので、タッチはちょっとフワフワしがちです。これを現代の規格品に交換してしまえばその後の調整もしやすく、タッチもシャキッとするのですが…それが必ずしもそのピアノに正しいかと言うとそうでないことも。

古いピアノにはその当時手に入る部品がやっぱり相性が良いよね、と言うのは設計上からも理にかなっています。当時想定されていないものが使われるとバランスを崩すのは当然といえば当然。

一方、当時は状況的に断念していたことが、現代の部品をつかうことで新たな魅力を手にできる、と言う側面もあります。また、いつまでも古い部品が持つわけではないので、どこかのタイミングではアップデートすることになります。

現時点で手を入れるとすると、どちらが総合的に良いのか。

ピアノは最低でも数十年という長いスパンで使っていくものなので、こんな悩みと楽しみがあります。

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