除湿機がいらなくなる?新しいピアノ用の乾燥剤を試してみた話
今年のはじめ頃、ピアノ用調湿剤の新製品が発売されました。
長らくピアノの乾燥剤には「B型シリカゲル」が使われてきました。
こちらのSHARPが開発した「TEKIjuN(適潤)」はその3倍の調湿力があると言う素材。発表時にはいろんな湿度管理が必要なものにつかえる夢の素材!と話題になりました。
そして満を持して発売された、ピアノ用に調整されたこちらの商品。
かんたんに言えば…ピアノに入れるだけで除湿機、加湿器が無くても年間をとおして湿度50%に保ってくれるよ!ということのようです。
商品説明のとおりの効果があれば、お客さまへオススメする湿度管理のしかたがガラッと変わってきますので、かなり気になります。
気になるポイントは3つ
ホントにそんなに調湿能力が高いの?
ピアノ内部の広さで湿度を50%になるまで吸い取るのはなかなか大変です。乾燥からの加湿も同じく。
従来の乾燥剤とどこまで違いがある?
実はピアノ用の乾燥剤(B型シリカゲル)にはそもそも湿気を吸ったり吐き出したりする調湿機能があり、この製品に限ったことではありません。価格が従来の2〜3倍となりますが、どのくらいの違いがあるのか。
除湿機、加湿器がいらなくなる!?
果たして夢の調湿剤となり得るか。
実験しました
ということで製品を購入し、友人のピアノに入れて実験をさせてもらいました。
試してみる環境としてはピッタリで、
戸建て2階
北東向き
ピアノ専用の個室
あまり出入りをしない
除湿機はつかっていない
梅雨はそれなりに湿度は上がるけど特別ジメジメしているわけではなく、日当たりの影響があまり無い、何もしなくてもわりと環境が安定しているピアノ部屋です。
まずは6/18〜28夕方までの10日間は湿度計だけをピアノの中に設置して元々の湿度のデータをとります。そして6/28夕方に調湿剤を投入。
引き続き7/9までの10日間のデータをとりました。
グラフを見てみます
乾燥剤の実験でいつも悩ましいのが、同じ環境での比較ができないこと。
前半と後半の気象条件がそもそも違うので完全な実験とは言えませんが…いちおう同じ梅雨時期内なので大きな気候の変化は無い20日間という前提で、ここから読み取れることを考えてみました。
なにも入れてない状態では結構変動がある
最初の10日間はちょうど3日ごとくらいに湿度が高め→少し下がる→また上がると言う感じで変動しています。
乾燥剤を入れた直後にぐんと湿度が下がっている
結構わかりやすく湿度が下がっています。これはなかなか優秀ではないでしょうか?
湿度は50%までは下がらない
最初にぐんと下がって湿度53%。瞬間的には良いところまで下がっていますが、その後はまた上昇。その後は60%前後で推移しています。
ただし、入れる前よりも変動は少ない
グラフの形が、入れる前10日間はゆるやかにですが大きく変動しています。対して入れてからの10日間は高めですが比較的一定に保たれているように見えます。
湿度の平均値はほぼ変わらない
時期的なこともあり、前半の平均湿度は59.6%と高めです。後半も59.2%とほぼ変わらず。グングンと水分を吸ってくれると言うわけではなさそう。
結論:湿度を一定に保とうとする効果はけっこう高いようです。ただやはり除湿機を使うほどは下がらない。商品説明から感じる期待と比べると…正直ちょっと残念な結果に。
結局「買い」なのどうなの??
確かに従来の乾燥剤よりも調湿効果は高いような気がします。守るだけでなく、より積極的に調湿をしてくれると言うか。
ただそもそもの話なんですが、ピアノの湿度管理は内部だけでなく部屋自体も同じように管理したほうが良いんですよね。もしこれだけで内部の湿度が良い感じになったとしても、部屋にはけっきょく除湿機・加湿器が必要になります。単体で使うには物足りず、補助的な製品としては少し価格が高いかな?と言う印象です。
個人的には引き続き、夏は除湿機をメインにしつつ従来の乾燥剤を補助的に考える組み合わせがオススメかなと言う感じです。
「とにかくコストはかけてもベストを尽くしたい」と言う場合は従来の乾燥剤からの置き換えはありだと思います。他には、電源がどうしてもとれないとか、離れた場所で水捨ての問題がある、除湿機の音が苦手で置けない場合などもベターです。
今回は時期的に乾燥からの加湿効果は実験できませんでしたが、そちらの効果も気になります。
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