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人の、その印象を左右するのは

私はどちらかというと、人が好きだ。
接していて苦手な人、嫌な人がいないわけではない。
ただ、人と接しながら、あるいは同じ部屋にいる人のやりとりを遠くでなんとはなしに見聞きしていると、その人がどんな人なのか、少しだけ、見えてくる気がする。

人は第一印象で決まる、という。
まぁ、あながち間違っていないと私も思う。
ただ、その第一印象を無意識に決めてしまった後、問題はその後なのではないかと思うのだ。

たとえばだらしない格好をした、あなたにとって見慣れない、奇抜な髪色をした、ちょっと猫背気味の人が現れたとしよう。
たぶん、「あ、この人は」とどこかで思うかもしれない。
そんなあなたと、ちょうど目が合ってしまったとして。
そして、その人物がたとえばあなたに向かって少し困ったように笑いかけてきて、「ごめんください」とゆったりとした声をかけてきたとしよう。

たとえばしゃきっとスーツを来た人がきびきびと歩いてきたとしよう。
通りすがりに見たとして、「ふーん」と思うかもしれないし、何も思わないことのが多いかもしれない。
通り過ぎたはずのそのスーツを来た人が、あなたの行く手に戻って来たとして。
そして、その人物がたとえばどもりつっかえながら話し掛けて来たとしよう。

あなたは、どう思うだろうか。
印象、変わりませんか?

人の印象って、たぶん見た目が一番ってよく言われるのは間違いないと思う。でも、それって、結局のところ、見た目に準じたイメージを脳内で検索して、合致させて、そこからその人が「きっとこんな人物だろう」と想像するのだと思うのだ。そして、無意識にか意識的にか、「こんな人物だ」と決めつける。決めつけてしまう。

上であげた例で、「それで?」とか「それがなにか?」と思った人、あなたはこの先を読まなくてもいいかもしれない。きっとあなたは、見かけの印象だけでは判断を保留にしてくれている人だと思うので。

問題なのは。
その最初に抱いた印象やイメージ、自分の想像にすぎないものを決めつけてしまった後、「情報を更新しないこと」が問題なのだと思う。

たとえば、キツイ話し方をする人がいる。この人、私のこと、好きじゃないのかもな……そう思って、他の人とやりとりをしているのを見る。何人か見ていくと、「あ、この人、誰に対してもそういう言葉で話している。ということはつまり……キツイ言葉で話すのが癖なんだな」とか。
たとえば、やさしい話し方をする人がいる。おだやかで、いいなあと思える人。でも、電話口でどうやら別部署の人と話をしている。聞こえ漏れる内容自体がおだやかでないこともあるのだろうが、普段の話し方とは全然違った。なんというか苛々している感じの。「あ、この人、こんな一面もあるのか。なるほど」そっと遠ざかる。後で聞いたら、電話口の相手がトラブルを起こし、彼女はその事後処理に走り回らされたと聞いた。さもありなん。
たとえば、自分に挨拶しない人がいる。まれに返したとしても声は低く、仕事でもそっけない。他の人たちと話しているのを見たら、その人は高めの猫なで声に近い話し方をしていた。「なるほど、私は特に嫌われているらしい」そう思ったが、私は挨拶をするのをやめなかった。嫌われてようが、嫌われてなかろうが、だれにでも挨拶はすると私は決めていたので。

私が見たことのある、たとえばである。
人の印象って、自分が見ているものだけじゃなくて、だれかのやりとりという、少し遠いフィルターを通すことで、違ったものが見えてくることがある。
まぁ、気に入った人や好きだなと思える人にここまで丁寧に見る必要もないとは思うけれど。
自分にとって苦手だな、嫌だなと思ったとき、人は情報をそれ以上新たに入れようとは思わない。自分にとって利益がないということもあるだろうし、嫌いなものの情報を仕入れることって、苦痛に感じることもある。

でも、もしも。あなたにちょっとだけでも、「この人、なんでこういう感じなんだろうなあ」なんて思いがあるのなら。暇を割いてもいいと思うのなら。少しだけ観察してみるといいかもしれない。
印象ががらりと変わることもあるかもしれないし、変わらないままかもしれない。けれどそれって、あなたの観察眼が鍛えられて、どこか広く見えてくる手助けになると思うのだ。

私は人の印象を左右するのは、第一印象もあるが、その第一印象を決めたあなたや私が、その後、その人を「第一印象そのものだろうか」という確認作業のときに、新たな印象を取り入れる出来事ややりとりがあるか、それをあなたや私が見逃さずに、新しい情報に更新できるか。それによって印象はどこまでも変わるし、もちろん人によって全く変わらないこともある。そんなものだと思っている。

その人物の話し方が合わないとか、見た目がどうにもとか、まぁ、判断や印象を定めるのに、どうしても邪魔してしまう自分の思いもあると思うが。
おおむね、その人物を知りたければ、自分と他者(その人物にとって目上の人・目下の人・対外的なお客様など)の接し方ややりとりを見ておくと、「なるほど。この人ってもしや」と思わされることが多い。けっこう、面白いと思う。

この見方が正しいとか、正しくないとかではなくて。
これはあくまでも、私が人を観察して、一般人やふつうの人らしく振る舞うにはどうしたらいいのかと経験値を積むためのものでしかない。
そんな見方もあるんだな、そう思っていただけたらうれしく思う。

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