地方議員から見た『公職選挙法』~「東京都知事選」と「香典」から考える~
物議をかもした「東京都知事選」
47都道府県の一つの首長を決めるはずの「東京都知事選挙」が、想定をはるかに上回る立候補者や、それに伴うポスター掲示板の不足、選挙とは関係ないポスター掲示や街頭演説妨害などで、大きな話題となりました。
立候補者の選挙後の立ち振る舞いや、選挙制度の問題点などで、選挙から10日以上経過した今でも世間を騒がせています。
選挙結果の感想や、立候補者それぞれの選挙後の行動など、話したいことは山ほどありますが、それはさておき、乱立するポスター問題などで物議をかもした「公職選挙法」について、自民党と公明党で今秋の臨時国会において改正する方針で一致したとのことです。
これでいいのか「公職選挙法」
今回の「公職選挙法」の改正方針では、「品位保持」規定や営利目的の掲載に対する罰則の追加、候補者の氏名と写真の掲載義務化などを検討するとのことですが、はっきり言って「生ぬるいにも程がある」と言わざるを得ない内容です。
公職選挙法は、戦後の昭和25年(1950年)に制定された法律であり、70年以上経過した今でもその当時の世相や慣習を残したままの制度が続いており、今回の「東京都知事選挙」で現実と法律との乖離が改めてクローズアップされたといえます。
それが「候補者の乱立」「ポスター掲示板の広告化」「政見放送等による売名行為」等の問題だったわけですが、これらはいずれも300万円という安すぎる供託金に端を発しているので、まずは供託金の額の引き上げを検討すべきです。
そして「ポスター掲示板」の問題。
市町村議会議員選挙でも、掲示板の箇所が多すぎてポスターを貼るのが大変。
私が立候補した2年前の市議会議員選挙の際は、スタッフに頑張ってもらってなんとか告示日に約500か所のポスター掲示板すべてに、自分のポスターを貼ることができたのですが、今回の「東京都知事選挙」では、ポスター掲示板はなんと約14,000か所あったといいます。
告示日にすべてのポスター掲示板にポスターを貼るには、スタッフの相当数が必要であり、今回の立候補者の多くが、すべての箇所の掲示板にポスターを貼るのを断念したとも聞いています。
また、今回、東京都の選挙管理委員会は立候補者数の見立てを誤り、ポスター掲示板の区画数(ポスターを貼ることができる箇所)を48としていたのに対し、立候補者が56人も出てきたことで、残念ながら8名の候補者は、ポスターをクリアホルダーなどに入れて、掲示板の枠外に画鋲で止めるなどして掲示しました。
ところが、これを不服として落選した候補者が都に提訴する問題に発展。
選挙制度を時代に合ったものとするために、こういった意味からも思い切った「公職選挙法」の改正が必要と思います。
時代を見据えた「公職選挙法」に
ポスター掲示板の問題を解決するためには、アナログな「ポスター掲示板」から「デジタルサイネージ」にするのも一つの手だと思います。
そもそも「ポスター掲示板」をじっくり見て投票する有権者はどれくらいいるのでしょうか。
公共施設や集会所、人通りのある場所などに「デジタルサイネージ」を置いて立候補者の紹介をすることにより、立候補者の周知を図ることができるのではないでしょうか?
今回の東京都知事選挙で5番目に多い得票をした方も「デジタルサイネージ」を活用すべきと話しているようです。
また、「選挙カー」を使った名前の連呼についても見直しが必要と思います。
かくなる私も2年前の選挙の際は、「選挙カー」で自分の名前を連呼していたのですが、住民の方から「うるさい!」と注意されたことがあります。
それはその通りで住宅街で名前を連呼するのは大きな騒音でしかありません。
これは「公職選挙法」で認められた立派な選挙戦術なのですが、これも時代に合わせて規制する必要がありそうです。
今回の「東京都知事選挙」では、ある候補者が、1日に10数か所、1か所あたり15分くらいの街頭演説を行い、その様子を選対事務所がSNSに投稿。その投稿を支持者が拡散するという戦術をとりました。
その候補者は150万票を超える支持を集めたとのことですが、実は私が立候補した2年前の市議会議員選挙でも同じような選挙戦術をとりました。
これは若い選挙スタッフが発案したもので、街頭演説や有権者への直接の働きかけを写真に収め、SNSの投稿班に連絡してUPしてもらい、リアルタイムに発信する・・・そういった戦術は確かに効果があったと思います。
選挙にはお金がかかるといわれますが、その多くはポスター貼りや、選挙カーでの街宣、大量のはがきの発送や、電話等での投票の呼びかけにかかる「人件費」であり、デジタル化を図ることにより経費の大幅な削減につながります。
若い方に選挙に立候補してもらうためにも、経費がかからないような選挙にするべきであり、そういった意味で「時代を見据えた『公職選挙法』の改正」に取り組むべきだと思います。
「公職選挙法」を通じて有権者へのかかわりを考える
「東京都知事選挙」とは関係ない話になりますが、「公職選挙法」に関して衆議院議員の選挙事務所に東京地検特捜部が家宅捜索が入ったとのニュースが流れてきました。
そもそも国会議員は、議員本人が出席して直接する渡す場合を除いては、結婚祝や香典を出してはいけないことになっています。
これは、地方議員でも全く同じで、逆に地元密着の地方議員であればなおさら気をつけなければいけないルールであり、「寄附行為の禁止」は、地方議員なら誰もが知っているルールだと思います。
法律は法律なので、これを破って香典を渡して秘書に代理出席をさせていた堀井議員は厳罰に処せられるべきと思います。
一方で、私は、親しくしていた方のご親族が亡くなった時、自分のスケジュールとその方の葬儀の日程が合わず、やむを得ず不義理をしてしまったことがあります。
一般の方であれば、友人や家族の方に香典を頼んで弔意をしめすといったこともできると思うのですが、議員はそういうわけにはいかない。
また「香典」のみならず、祝意としての「入学祝」や「卒業祝」、相手を心配する心がある人だったら当たり前に行う「お見舞い」ですら禁止されているのですから、有権者とのかかわりという意味で「公職選挙法」が時代に合っているかといったら大いに疑問があります。
まあ時代が変われば、「香典」や「○○祝い」というのもどう変わるかわかりませんし、もしかしたら「香典」もLINE送金のように個人間のお金のやりとりになるかもしれません。
そういった意味でも、この「寄附行為の禁止」を含めた「公職選挙法」については、常に時代とともにアップデートしていく必要があるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、「公職選挙法」について思うところを書きました。
いずれ、公職選挙法を改正するのも立法府である「国会議員」なので、自分たちの都合いいように運用していく危険性も大いにあります。
「公職選挙法」に限ったことではないのですが、自分にとって痛みを伴ってでも国民(市民)目線で制度を変えていく、さまざまな課題に対して、私たち議員はそういった姿勢で臨んでいかなければならないと思います。
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