サムネ_新_

【第83回】まったく才能が無い男たち。(韓国旅行記 Vol.1)

有料記事ですが全文無料で読めます。面白いなと感じていただけたらお賽銭を入れるくらいの感覚で買ってもらえると今後の励みになります。

「全然海外に来た感じがしないな」

それが韓国の地に降り立ち、ソウル市街へと向かう空港鉄道に乗り込むまで、ずっと抱いていた僕の素直な気持ちだった。

僕の利用した仁川国際空港はアジア最大のハブ空港と呼ばれるだけあって、めちゃくちゃ広い。それはターミナル間の移動に電車に乗らなければならないほどで、飛行機から降りて入国審査場にすぐ着くと思っていたので面を喰らってしまった。

画像1

空港から駅に突然ワープしたのかと思った。

ただ、かなりの面積を誇るのに日本の空港と同じように清掃が行き届いていて綺麗だし、案内標識にはハングルに加え日本語も併記されている。場所によってはアナウンスでさえも日本語も流れるので外国に来た感じが全くしなかったというわけだ。

画像2

仁川空港。かなりキレイ。

しかし、空港鉄道の列車内の広告として竹島(韓国名:独島)の領有権を主張する映像を見た時「ああ、ここは間違いなく日本じゃない国だ…」と思ったわけで。

実際に流れていた映像。

そんな胸の内が少しざわめくような形で、僕の韓国旅行は幕を開けた。

なぜ韓国へ行くことになったのか。

2019年。日韓の関係は大きく冷え込んだ。

この冷え込みの最初のきっかけとして日本が韓国を「ホワイト国」から除外したことは記憶に新しい。近年、徴用工問題やレーダー照射問題など様々な対立が存在したこともあり「ホワイト国」からの除外は民間のボイコットジャパン運動(日本製品不買運動)に加えて日韓の政府間で締結されているGSOMIA破棄騒動にまで発展し、両国の関係は“戦後最悪”とまで称されるようになった。

そんな揉め事の真っ只中、2019年11月19日から23日まで3泊4日の間、韓国に行ってきたので旅行記を書きたいと思う。この旅行記のコンセプトとして「完全追体験」を謳っているので、出来事や感情を嘘偽りなく書くつもりだ。もしかしたら人によっては不快な思いをするかもしれない。また結局、僕が見てきたものは一部でしかないだろう。けれども21歳の一人の男が、見てきた今の韓国を少しでも感じて貰えればと思う。

さて、そもそもなぜ韓国に訪れるに至ったかだが、これは僕の友人たちの影響が大きい。

韓国に語学留学している友人に会いに行く計画があるという話を聞いたのだ。現地の学生と交流したりフリーハグもしてくるらしい。

こんな日韓が揉めているときに韓国へ行ってそういったことをする。それに対して僕は、とても「素敵だな」と思った記憶がある。ところが「素敵だな」とは思ったものの、韓国に行く気はサラサラ無かった。

当時は5泊6日のタイ旅行から帰国したばかり。もっといろんな国を回りたいという気持ちはあったけれども韓国に行きたいわけじゃなかった。別に韓国が嫌いとか、そういう話ではない。

ただ大学生活も残りわずか。できることなら社会人になってからでは行けないような遠い国に行きたいと思っていたからだ。韓国なら日本から日帰りだって行ける。社会人になってからでも仕事に影響することなく楽しめるはず。そう思うと話を聞いたタイミングでは気持ちが向かなかったのは確かだ。

しかし、友人らの行動に対して僕は確かに心を揺り動かされていたようである。以前から日韓関係を憂う気持ちはあったのだけれども、明らかに話を聞いて以降、韓国の情報に敏感になっていた。やがて「色々韓国に対して言う人いるけど実際に現地のこと何も知らないのによく言うよな」という気持ちになっていって様々な感情が胸の内を支配し、気がつくと(安かったというのもあるけれども)韓国行きのチケットを買っていた。

自分の行動に自分でもびっくりしたが、買ってしまったものはしょうがない。これは運命だ。僕は韓国に行く必要がある。

そう思い込むことにした。

旅の目的。

今回の韓国旅行の大きく分けて目的は3つある。

1つ目の目的は、僕の中での韓国を少しでもリアルなものにすること。そもそも「韓国」と言われても、どういった国かあんまりピンときてなかった節がある。僕はK-POPも聞かないし、韓流ドラマも見ない、韓国料理も全然食べたことない。日本に入ってくる韓国の情報は、ほとんどが若い女性向けか、激しい感情が入った事実かどうなのか疑ってしまうような情報ばかりに感じていたのでイメージしずらく近くて遠い国といった印象を持っていた。もし相互の不理解がこんな今を生んでいるのだとしたら、こんな今だからこそ、少しでも韓国という国の輪郭を掴めたらいいなと思ったわけで。

2つ目は、韓国の歴史観に触れること。戦後、日韓は様々な対立を繰り返してきたが、その大部分は1910年の韓国併合から1945年の日本の敗戦までの植民地支配に対する歴史認識にズレと、それが生み出す感情によるものだと思う。端的に言ってしまえば反日、嫌韓といった感情のことだ。どちらか一方の歴史が間違っているのは決めつけるのは非常に楽だけれども、それだと前に進めない。日本で手に入る韓国の歴史認識に対する情報は、どうにも勘定によって歪められているような気がして信じられなくなっていたので、足を運んで韓国の地で理解したくなったのだ。

3つ目は「今、韓国に行っても観光する分には全然大丈夫だよ」というのを証明すること。いや、これは証明するまでもないことだとは思う。増えた減った色々あるけれども「ホワイト国」除外以降も毎月20万人以上の日本人が韓国を訪れているわけなのだから。

画像3

データ出典:日本人海外旅行動向2020 - 観光統計 - JTB総合研究所より

ただ、この証明というのは僕の周りの人達に対してするものという側面が大きかった。いざ、韓国に行くと決めた話をすると「大丈夫なの?」「危ないんじゃない?」と、かなりの人から言われたからだ。何なら「あれ?僕はこれから敵国に行くんだっけ?」と錯覚してしまうような言い方をされたこともある。

個人的に心配はありがたい。ありがたいのだけれども「うるさいなあ」とも感じていた。別に紛争地域に行くわけでもないし、2005年や2012年の中国であった反日デモや暴動と違って日本人だからといって暴力を受ける状況でも基本的にはないはずなのだから。だからこそ、周りに対して証明したいという気持ちが沸々と沸き起こっていた。

「行ってもないし見てもいないのに、どうしてそんなこと言えるんだ。」結局の所、その気持ちが、すべての原動力になっていたと思う。

と、ここまで、たかだか3泊4日の旅行にしては大層なことを書いてしまったのだけれども、そんなことを思いながらも、韓国に行くことに対して微塵も恐怖心がなかったかというと嘘になる。露骨なものはなくても多少の暴言や暴力はあってもおかしくないよなと覚悟していた。だって、何の気構えもなく行って、そんな状況に陥ったら、たぶん子供のように泣いてしまう。結局、この覚悟は「だからやめとけばよかったのに」という人達への「は?そんなことになるのわかってたし。それであえてやったんだし。」と去勢を張るためでしかないわけだが、まあ何事も心の持ちようは大切だ。

さて、そんなことはどうでもいいとして、実際のところ韓国が、どう僕の目に映ったのかというのは、これから追々、書いていくことにしよう。

明洞(ミョンドン)

空港鉄道に乗って仁川空港出発した僕は、ソウル駅まで行きソウル鉄道4号線に乗り換えて明洞(ミョンドン)駅に到着した。明洞は韓国の中でも有名な繁華街で、韓国の渋谷と呼ばれることもある。

さて、ここで本編に全く関係ないが、残念なお知らせ。

まずは下の写真を見てほしい。

画像4

なにか気がつくことはないだろうか?

…何?わからない?ではもう一枚。

画像5

もうお分かりだろう。

写真のピントが合っていないのだ。

なぜ、こんな事になっているのか。端的に説明するとスマホカメラのピント調節機能が壊れたからだ。実は日本に来る前にスマホを落としてカメラを割ってしまったので民間修理会社に頼んで交換してもらったのだけれども交換したカメラに初期不良があった結果、最悪のタイミングで壊れてしまった。

僕が何をしたっていうんだ。助けてくれ。

画像6

そういう事情なので、きれいな写真は空港でおしまい。大ショックなのだけれども、こうなってしまってはもうしょうがない。せっかくの旅行だから楽しまないと損なので気持ちを切り替える。

ここからは、非常に申し訳ないがピントが合っていない写真が続くことになる。雰囲気だけでも楽しんでもらえると嬉しい。フリー画像で代用したり、ある程度説明に必要な画像はいくつか他サイト様から引用させてもらった。

話を戻そう。

明洞に来たのには先に行っている友達と会うためだ。各々の予定の都合上バラバラに韓国に行き現地で合流するという形になってしまった。結局、僕はフリーハグや現地学生と会う日には韓国に行くことができなかったが、まあそれはしょうがない。行くことに価値があるはず。

この日、合流したのはざわけん。彼もnote.で韓国に関しての記事を書いているので、ぜひ読んでみてほしい。彼の書いた他の記事も独自の視点で考えさせられる記事を書いているので、そちらもぜひ。

彼とは韓国に行く一週間前に滋賀で一緒に飲んだので、明洞駅で合流した際は、その状況がおかしくてついつい笑ってしまった。

才能が皆無の男たち。

僕らは、ひとしきり話をしたあと、まず明洞実弾射撃場に向かった。

知っている人も多いだろうが韓国ではお金を払えば銃を撃つことができる。日本でできない経験として、韓国でやりたいことの一つだった。仮に好奇心以外に銃を撃つ理由を付け加えるとしたら、韓国滞在中に様々な戦争に関して触れる機会を予定しているので、実弾を発射することで考えるいいきっかけになればとも思っていたのだ。

さて、この射撃場は明洞駅の9番出口から出て北へ徒歩3分程度の場所にある。若干古い雑居ビルの3階に位置しているので若干入りにくく感じるだろうが、日本語が堪能なスタッフがいるので安心してほしい。予約は基本不要なので飛び込みで大丈夫。

画像7

画像引用元https://www.konest.com/varimg/photogallery/Article_Photo/3634/big_273074.jpg

まず最初にパスポートの提示と申込書の記入が必要になるので、しっかり準備しておこう。このチェックが結構厳しく、滞在先のホテルの部屋番号まで聞かれるので注意。

その後、コースの選択に入る。

やはり日本人観光客ばかり来るのだろう。ルパン三世が使ってる拳銃のコースやバイオハザードに登場する拳銃のコースもある。残念ながら、紹介ていたいろいろな作品にはあんまり思い入れがないし、銃についてはほとんど知識がない。結局散々迷った挙げ句、ただなんとなく威力の強い銃を撃ちたかったので、デザートイーグル1丁の弾を10発+クーポン適用2発の計12発を打つことにした。ちなみに料金は50000ウォン(当時のレートで約4700円)だった。

安全対策として防弾チョッキ、イヤーマフ、ゴーグルを装着すると準備完了。

別室に通されると、射撃開始だ。経験者のスタッフにマンツーマンで指導してもらえるので安心だけれども、ちょっと無愛想で怖かったり。まあ万が一があってはいけないのでしょうがない。それに拳銃は、あんまりニコニコ、ヘラヘラして撃つようなものでもないだろう。

さっそく紐で宙に固定された銃を両手で持ちしっかりと的に向かって構える。

画像8

画像引用元https://www.konest.com/varimg/photogallery/Article_Photo/3634/big_273057.jpg

「ちゃんと銃を持って」

スタッフに言われて気がついたのだけれども防弾用のガラスの上に拳銃を持った腕が乗ったままになっていた。以外と重量はある。

しっかり照準器を使って狙いを定めて引き金を引くと───

ズドン!

鈍い音と光と共に弾が発射され、あたりには硝煙が広がり火薬の香りが鼻をついた。カランと音もしたのできっと空になった薬莢が飛んでいったのだろう。

人生で初めて銃を撃った感想としては「ああ、こいつは間違いなく武器なんだな」というものだった。想像よりも反動が強くない。確かに構えている腕は反動によって動いてしまうのだけれども、のけぞるほどじゃない。いざというときに相手を傷つけるためのものが使い勝手が悪いと使い物にならないので、間違いなく武器だと思ったわけだ。

そんな感慨にふけっていると、

「次」

と急かす声が。横からあーだこーだ言われるのが一番調子が狂うので苦手なのだけれども仕方がない。次の弾を撃つため銃を構え直した。デザートイーグルは自動拳銃(オートマチックピストル)なので排莢や弾の再装填(リロード)は必要がない。便利だ。

それから的に向かい照準器を除くと、さっきには気が付かなかった違和感が。

よく見えない。

「照準が合っていない」と横で言われながら、よく見えない目をなんとか凝らして弾を発射していく。理由は簡単で僕が右目の乱視だから。僕がハメているのが乱視用のコンタクトレンズではないので照準が合わないのだ。(これに関しては目に合ったコンタクトを使えという話だけれども乱視用のコンタクトは処方が割と面倒で高いから後回しにしていた)

見えないことで焦っていると、それに伴って緊張で体温が上がり、つけていたゴーグルが曇ってきた。更に弾を撃つことで上がった硝煙が濃くなり視界がどんどん悪くなる。そうなると横から照準を合わせるように急かされるわけで。うーん、この悪循環。

結局、最後の方は恐怖心が強くなり早く終わらないかなと思っていた。よくアニメや漫画の描写で初めて何か(例えば野球とか)をしたキャラに、その何かにめちゃくちゃ才能があって、やってみたら上手いというものがあるけれども、僕には少なくとも拳銃を撃つ才能は無さそうだ。

画像9

実際に撃った的。
120点満点中の83点。
約7割と考えたら素人ながら、がんばったか…?

ちなみに撃つ的は選ぶことができる。

ざわけんは人質を取った男の的を選んでいたのだけれども、思いっきり人質の頭を撃ち抜いていた。それを見て思わず笑ってしまった。いや、実際にこういう状況だったらと想像すると笑うに笑えないのだけれども、笑っちゃう。

これらの結果を見るに、どうやら僕らには拳銃を撃つ才能がまったく無いらしい。

最後に

韓国旅行記が始まりました。

少しずつ懐かしみながら書いていければと思います。

ぜひ次回も読んでください。

>>次の話はこちら:Coming Soon!


こちらのマガジンで更新中です!

#エッセイ #僕ノート #韓国 #仁川 #ソウル #海外旅行 #海外旅行記 #大学生

ここから先は

0字

¥ 100

最後まで読んでくださり、ありがとうございました! ご支援いただいたお金はエッセイのネタ集めのための費用か、僕自身の生活費に充てさせていただきます。