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【第33回】「孤独」のサウナでととのう。

※2019/07/26追記
noteのお題企画「#とは 」に参加することにしました。大好きなサウナに関して一生懸命書いたのでみんなにぜひ行ってととのってほしい〜〜〜〜〜!!!!!!

ああ、非常に疲れた。

試験に向けて勉強に熱中していたせいで変な時間に寝てしまった。そのおかげで体の普段は使わないような筋肉がこわばっているし、何となく気だるい。

そうだ、サウナに行こう。

思い立って僕は近所のスーパー銭湯に訪れた。

いつものように受付を済ませると脱衣所へと向かい普段追われている何かから開放されるかのように一糸まとわぬ姿になる。

手には家から持参した一枚のタオルを持ち浴場へと向かった。今ここでの僕はこれだけしか持っていない。普段の生活のことを思うと非日常がここにはあった。

足早にでも滑りやすいので転ばぬように浴場へと入る。そしたら湯船に入る前に僕は必ず体を洗うのだ。

しっかりかけ湯をして極端に体が汚くなければ真っ先に湯船に浸かっても問題はないのだけれども幼いころからの習慣がそうさせるのかまずは洗い場へと足が向いてしまう。

これはサウナを楽しむための最初の儀式でもあるのかもしれない。神聖なサウナへと入る前にしっかりと体を清めるのだ。本場フィンランドでは出産もサウナで行なっていたくらい神聖視されていたというし。

しっかりと体中を清めた後は湯船に漬かり体を温める。たまに最初からサウナに入ってしまう人がたまにいるのだけれども、それだとかなり長時間サウナに入らなければいけなくなってしまい結果として体の芯まで温まらないことが多いと僕は思っている。

言わばサウナという本番に向けての準備運動としてまずは湯船へと浸かるわけだ。

おすすめは炭酸泉の風呂である。原理としては皆さん大好きな炭酸飲料とまったく同じ。要は炭酸泉とは二酸化炭素が溶け込んだ風呂のことだ。

コーラがすぐに気が抜けてしまうように二酸化炭素は水中から逃げていってしまうから天然炭酸泉は日本国内においては非常に少ない。けれども炭酸泉そのものは医学的に血行促進などの医療効果が認められているらしく日本国内でも人工炭酸泉には比較的入ることができる。

炭酸泉は38℃程度と低温ではあるからこそ長く浸かれ、その効能によって体の内側から温まることができるので銭湯に行き一番最初に浸かる風呂とはしては最適だと思っている。いきなり高温風呂につかるより体への負担が少ないような気がする。

体がじんわりと温まり血行が良くなって肌が痒くなってきたら僕の場合は寝湯に移る。足にジェットを浴びながら体を休めるのだ。仰向けになった時に見える広々とした天井が家の風呂とは違う爽快感を味わえる。

ある程度体がほぐれたら少し深いジェットバスへ。次は背中の疲れを癒やしていく。ああ、気持ちがいい。一人で暮らしていると、どうしても背中をほぐすという行為はできないのでありがたい。

そして体全体がほぐれたなと思ったら内湯を出て露天風呂へ向かう。外にある影響からか露天風呂が僕のよく行くスーパー銭湯の中では一番温度が高い。薄暗くなった空を眺めながらサウナに向けて完全に体を温めるのだ。

十分に体が温まりぼーっとしてきて額に汗をかいてきたら満を持してサウナへと向かう。これまでも気持ちよかったのだけれどもあくまでこれまでは準備運動に過ぎない。

サウナ室への入り口付近でサウナマットと呼ばれるビート板のような板を持ちサウナに突入する。このときに体の水気はちゃんと切っておかねばならない。湿度が上がればサウナの温度は上がってしまうし何より体への熱の伝わりが悪くなってしまう。

扉を開け中に入ると体中にムワッとした強烈な熱波が押し寄せる。かなり暑い。サウナにはだいぶ慣れたのだけれどもこの暑さには入る度にびっくりするわけで。

サウナマットを床にしきできるだけ天井近くの空いているスペースに腰をかけた。暖かい空気は上に集まるので高い位置に行けば行くほど熱によって発汗できるのだ。

このマットはなぜあるのか僕はよくわかっていないのだけれども衛生面だとか床の熱を直に受けって火傷しないようにだとか様々な理由が考えられると思う。ただ、こういったマットがないサウナも多いのだけれどもあると非常に嬉しい。

一度サウナに入ってしまえばただひたすらに押し寄せる熱を体全体に受ける時間が始まる。これを拷問のような時間に感じる人が多いのだけれども決して僕はそうは思わない。生まれつき汗かきな僕が手持ちのタオルの残りの乾いたスペースだとか汗ふきシートの残量を全く気にせずに発汗できる場所はサウナという異空間にしか存在しないわけで。むしろスポーツをして汗水を流すかのような爽快感がそこにはある。このときばかりは中学校・高校といった時間に戻ったのような清々しさがここにあるのだ。

僕の住む近所のスーパー銭湯ではロウリュ(熱したサウナストーンと呼ばれる石に水をかけ水蒸気が発生することで体感温度を上げる入浴法の一つ)による熱波師のアウフグース(サウナの中でタオルやうちわといった物を使い熱波を浴びる入浴法のこと。日本では熱波師と呼ばれる人がそのサービスを行うこと多い。またアウフグースはロウリュに内包してそのままロウリュ呼ばれることがある)は全く行われないのだけれども日本式の高温低湿なドライサウナとしては非常に良いと思う。

サウナは我慢大会ではないから無理して長く入る必要も隣の客と競い合う必要も全くない。ただ己と向き合えばいいのだ。場所にもよるのだけれどもテレビが付いているサウナなのであれば見てもいいし、別に見なくてもよい。ただ最初のうちは慣れていないから少し負荷をかけ少ししんどいかなと思うくらい体を十分にほてらせたほうがこの後が恍惚の時間に感じてもらえるかもしれない。

目安としては顔が熱くなり、もう無理だなと思えば潔くサウナを飛び出して水風呂へ行こう。もちろんサウナで大量に出した汗はちゃんと流すのを忘れずに。水風呂に限らずみんなが入浴する風呂でのマナーだ。

最初はその冷たさにびっくりするかもしれないが、そこはがんばって肩まで浸かってしまおう。下手に下半身だけ入っていたほうが寒いかもしれない。十分に入浴やサウナを通じて体が温まっていれば体が膜に包まれたかのように冷たさはそこまで感じないはずだ。どうしても無理なら10秒程度肩まで浸かってすぐに出てしまえばいい。アルコール入りの飲料は生まれつき強い弱いが決まっているのだけれども、それと違ってこの冷たさはそのうち慣れる。

サウナの醍醐味はサウナ室の中にいる時間よりも、むしろそこを飛び出したあとに入る水風呂だ。熱々に蒸された体に冷えた水の心地よさがたまらない。最初にあれだけおっかなびっくりで入っていたあの頃の気持ちはどこへ行ってしまったんだろう。

水風呂から出たら体を休める時間になる。露天風呂に椅子があれば、そこでしっかり休めるのがい。なければ室内の椅子や浴槽のフチやカラン(洗い場の蛇口)の前に腰掛けても構わない。入浴は思った以上に体力を消耗してしまうから落ち着くのが肝心になってくる。これによって体は次に備える。

最高なのは露天風呂にある寝椅子だと思う。一度横になれば、そこから見える空が心を休ませてくれる。吹き抜ける風がなんとも心地よい。

少し肌寒くなったなと思えばサウナへと戻るのだ。それからもう一度ルーティンが始まる。

サウナ→水風呂→外気浴(外の風で体を休めること)をだいたい3セット繰り返すことでディープリラックス、サウナトランスと呼ばれる状態へと突入できるのだ。この状態はは俗に「ととのう」と呼ばれている。

この流れはまさしくサウナ好きのバイブルと言うべきタナカカツキ氏の「サ道」という漫画から教わったものだ。サウナをこれから楽しんでいこうと思う人はぜひ一度目を通しておくといい。サウナ業界は「サ道」以前と以後に分けられるともいうらしい。今、ドラマ化もされてTVerで無料配信しているので間違いなく見るべきだと思う。

この流れを繰り返していく中で日常考える嫌な雑念もしょーもないことも消え失せ、だんだんぼーっとしてくる。余計なものは何もない。ただそこにあるのは裸の自分とタオルが一枚あるだけだ。それを阻害し情報の洪水に溺れさせようとするスマホもないわけで。ただただ己と向き合う時間がそこにはある。

デジタルデトックス(スマホを始めとするデジタルデバイスと一定期間距離を置きストレスを軽減するもの)とマインドフルネス(瞑想から宗教性を排除し、ただ己の呼吸に集中することで深いリラックスや集中力の向上を図るもの。あのGoogleも取り入れている)がいっぺんにできて最高じゃないか。

サウナに入ることで日常のもやもやも疲れも何もかもが消えていく。まさしく「ととのった!!!」と叫びたくなるような状態がここにあるのだ。

テストのこと、就職先のこと、今後の将来のこと、バイトのこと、これから予定しているタイへの旅行のこと。考えてもどうしようもならない雑念がサウナを通じてどこかへ泡のように消えていく。

最後は水風呂で〆て風呂を出よう。これによって体中の毛穴が締まり熱が逃げにくくなる。夏ならば水風呂によって体が冷やされるから汗も出にくくなって非常に快適である。

サウナの醍醐味は風呂から上がった後だ。仮眠室や休憩所に横たわる体を休めることで得も言われぬリラックスが訪れる。

こうして明日への活力を得て家に帰るのだった。

ただ芸当が打てるのも1人でいるからだと思う。誰かと一緒だと流石にこうはいかない。

けれども友達と入る銭湯やサウナにはまた別の魅力があるわけで。それについてはまた別の機会に話すとしよう。

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