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書いた小説達

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本当に気が向いた時に小説を書いています。
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記事一覧

短編小説「魔性の女」

短編小説「魔性の女」

「ねえ、ケン。でかけよっか」

彼女はソファーに寝転がりうたた寝していた僕に向かって腰を落とし顔を覗き込むと、無邪気な笑顔で、そう声をかけてきた。

その言葉に、つい嬉しくなって僕は、思わず飛び上がり、ついつい小躍りをしてしまった。

「ふふ、そんなにはしゃがないの。もう子供じゃないんだから」

確かに、それもそうだ。僕もいい年だし、あまり子供っぽいのも恥ずかしい。けれども彼女と出かけるのが嬉しく

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短編小説「インプリンティング正月」

短編小説「インプリンティング正月」

正月は暇だ。俺はそう思う。

普段、仕事をしていると、この休みが待ち遠しいのだけれども、いざ当日になると特段、楽しくもなんともない。

そもそも、暦なんてものは人間が勝手に決めて意味をもたせた虚構でしかない。実際のところ日本から海を隔てた中国や韓国、ベトナムなどでは西暦ではなく、旧暦の正月を祝うそうだ。

全くおんなじ日でも場所が変われば、意味が変わる。これをバカバカしいと言わずに、なんと言えるだ

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短編小説「よーし失敗してくるぞー」

短編小説「よーし失敗してくるぞー」

「あのさぁ」

「ん?」

「お前、最近エッセイ書いてネットに上げてんじゃん?」

「そうだね」

「なんかいいよなお前のエッセイ」

「何だよ急に…。でも、ありがと」

「なんかエッセイを書き始めてからお前イキイキしてね」

「あー、確かに。ちょっと生活にメリハリでたかもしれん」

「いいなぁ。俺もいろんな人に書いた文章見てもらいたいわ。エッセイってどう書いたらいいの?」

「うーん、難しいな」

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