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「不動産広告のコピーは、いま」in 仙台

私は劇作家井上ひさしさんのエッセイがとても大好きです。
ユニークな視点、今、同じ時を共有してるように思わせる描写力、そして温かいメッセージ。家族や仕事など私生活のことから、文章上達法や日本語について、時には政治のことまで、幅広い話題を渡り歩いて、しかもとても平易な言葉で伝えてくれます。

そんな井上ひさしさんのエッセイの中で、とりわけ私が好きな一篇があります。

それが今回のタイトル 「不動産広告のコピーは、いま」(*)
というエッセイです。

内容を簡単に説明すると、その名の通り様々な不動産広告を紹介し、井上ひさしさんの視点で分析するというもの。こんなところに注目する人がいるのか、と読んだ当初は衝撃を受けました。

(*)初出は『ニホン語日記』(1996年7月)。井上ユリ編『井上ひさし ベスト・エッセイ』(ちくま文庫、2019年6月)にも収録されています。

これを読んでから駅や街中、時にはポストに投函される不動産広告に目がいくようになったのですが、これが本当に面白い。さすが日本語のプロは注目するところが違うなぁと思います。

そこで、今回はこのエッセイを真似て勝手に
「不動産広告のコピーは、いま in 仙台」
を開催したいと思います。

おもしろい広告がたくさん出てきますのでこうご期待。

✽✽✽

さて、最近の仙台のマンション広告を一覧してみると、ある単語が頻出していることが分かりました。

「「住宅」・「商業」・「医療」
一体の⼤規模プロジェクト、始動。
さぁ共に ⼈⽣100年時代へ。
新しい都⼼の暮らしへ。」


(プラウドタワー仙台晩翠通サウス/野村不動産/3LDK/3900万円)
「永住都心、泉中央の静地へ。」

(レジデンシャル泉中央/ワールドホールディングス/3LDK/3998万円)

「進化の象徴は南の新都心にある。」

(シティタワーあすとレジデンシャル(長町)/住友不動産・ワールドアイシティ/3LDK3300万円)

お気づきでしょうか。
そう、「都心」という言葉です。

都心って特に東京都内の中心部を指す言葉だと思っていましたが、仙台市のような地方中枢都市でも使われるんですね。

試しに広辞苑をひいてみると「大都市の中心部。特に、東京都の中心。」とありました。やっぱりそうだよね~。

さて、問題はここからです。

仙台市の都心はどこなのか??

仙台市内に住んでいる方はお気づきかと思いますが、この3つの広告のマンションの立地はバラバラです。

1つ目は、青葉区、2つ目は泉区、そして3つ目は太白区です。

1つ目の広告は、ここ(青葉区)が都心だという前提の上で、新しい都心へと向かっていく意気込みが感じられます。
対して2つ目の広告は、あくまでも都心とは仙台市全域であり、その中でも静かな土地である泉中央を推すコンセプトです。
そして3つ目は、太白区が「都心」であると高らかに宣言しています。青葉区に対しての堂々のライバル宣言ですね。

私は県庁や市役所、駅がある青葉区が都心だと思っていましたが、いろんな捉え方があるんですね。

それにしても、「都心」という言葉には未だ納得いきませんね。他にいい言葉はないのだろうか。

さて、お次です。

MID in CORE
青葉区本町、中枢を見晴らす贅。


(プラウド本町ディアージュ/野村不動産/3LDK/4459万円)
1MIN TOWER LIFE
徒歩1分内でそろう日常生活。
都心軸、勾当台通を生きる。


(プラウドタワー仙台勾当台通/野村不動産/3LDK 3780万円)

こちらは、「英語ー副題:日本語ー」スタイルの広告です。どちらも野村不動産のプラウドシリーズのマンションです。ということは、同じコピーライターさんなのかしら。

英語でキャッチコピーをつけるときは、三単語がベストだ、ということを以前耳にしたことがあります。

確かに有名な企業のキャッチコピーをみてみると
トヨタ自動車「START YOUR  IMPOSSIBLE」
日立「Inspire The Next」
などと、確かに3単語ですね。

プラウドシリーズは、HPを見て頂けるとわかるのですが、まさに「クール・リッチ・ハイセンス」を具現化したようなマンションです。英語のキャッチコピーがぴったりですね。

青葉区大手町、その上の頂へ。
至福の贅が支配する、麗しき日常領域へ。
未だ踏みも見ぬ丘極の邸へ。
それは、これ以上望むべくもない、仙台大手町の丘上。


(THE LEBEN仙台大手町/タカラレーベン/3900万円)

次の100年舞台へ。
その未来は、やがて象徴となる。


(プラウドシティ仙台上杉山通/野村不動産)

これまで出した広告にも何個か見られましたが、「~~へ。」という言い回しがとても多いですね。

明鏡国語辞典によると格助詞の「へ」は

《移動や伝達など方向性をもつ述語とともにつかって》
①移動の方向を表す。②到達点を表す。③動作が向かう相手を表す。
の三つの用法があるらしいのですが、おそらくこれらの広告で使われているのは②の用法ですね。

「~~へ」という言葉には、「未来」に向かって開けていくような意味が込められているように思います。それは裏を返すならば、「今」は発達途中である、ということも示しているのではないでしょうか。

確かにこの2つのマンションが建つ地区(大手町と上杉)は最近地下鉄東西線の駅ができたり、数年後に大規模な商業施設が建ったりと、これから活気が出てくるであろう場所なのです。

「~~へ。」という言い回しが出てきたら、そこはこれからどんどん開発されていく地区なんだな、と覚えているとマンション探しの時に役立つかもしれませんね。

✽✽✽

最後にですが、これらのキャッチコピーをお手本にして、私の住む寮のキャッチコピーも付けてみたいと思います。(ちなみに私の住む寮は、多くの留学生と共に共同生活をする寮です。)

Across The World 
たくさんの出会いがある場所。
坂の上の世界へ。 

これは、、、寮のHPに掲載待ったなしでは。

この記事を読んでマンション広告おもしろそう!と思った方は、Googleで「マンションポエム」と検索してみてください。中々おもしろいものがたくさんあります。

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