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春の匂いがやってきた

まだまだ朝晩は寒いけれども、日中は暖かい日が続く毎日。上着を選ぶときに少し薄めのものを手に取ったりして、ああ春がきたんだなあと思う。

薄手の上着に袖を通し、穏やかな陽気と少し肌寒い風に身を委ねながらブラブラと歩いていると、春の匂いを感じる。
どんな匂いかと言われても例えようがない。甘いとかいい匂いとかそういうものではなく、もっと体感的なもの。かといって暖かさによるものでもない。とにかく、春の匂いがするのだ。

この匂いを感じると、大学の新歓の時期を思い出す。

他の大学がどうだか知らないが、僕が通っていた大学はサークル活動が盛んで、新入生の入学に合わせて各サークルが一斉に新歓活動を始める。特に4月の第1週は、大学構内の盛り上がりがハンパない。各サークルがキャンパスのいたるところにブースを並べ、壁中所狭しと宣伝用ポスターが貼られ、サークル独自のジャージに身を包んだ学生が新入部員確保のためにあちらこちら走り回る。ときには勧誘活動をサボりそこらへんでくっちゃべってたりもする。外では常に軽音サークルやらダンス系サークルがパフォーマンスをしていて、どこかしらから賑やかな音楽が聞こえてくる。春の陽気も相まって、体中が熱くなってくる。年間を通しても、この時期が一番大学が盛り上がり楽しい時間だと思っている。

入学時の期待感、入部希望のサークルへ足を運ぶ緊張感、勧誘する側に回った時の高揚感、またこの季節がやってきたというワクワク感・・・春の匂いが訪れるといろんなことを思い出し、それらが瞬時に体内を駆け巡るのだ。


ポカポカ暖かい陽気は、サークルブースでお菓子を食べてダベってた時と同じ陽気。少し肌寒い風は、新入生が少なくてあちらこちら歩き回ったときに吹いてきたのと同じ風。風に揺られる草木の音は、今日も勧誘頑張ろうとサークル仲間と声を掛け合った通学路に生えていた木々と同じ音。街中の雑音は、キャンパスに響き渡っていたものと同じ音。
本当は違うのはわかってるけど、同じように感じてくるから不思議。

それはどこか居心地が悪いというか、こそばゆいというか、そわそわしてくる。けれどもそこにいつまでも浸っていたいし、それを感じたくて外に出たくなるような中毒性もある。

僕は今日も昼から外に出てきた。薄めの上着を着ながら。日陰はまだ少し寒い。日陰で吹く風は少し冷たい。いつもより人が多い気がする。そしてやっぱり、春の匂いがする。


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