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読書記録「嘘つきな六人の大学生」

嘘つきな大学生、と言われれば就活を思い出す。
就活時代に嘘を吐かなかった人なんていないんじゃない?

文庫本の表紙には履歴書に貼る証明写真のような六人の顔。
私も髪を黒く染めてひとつ結びにして、規格化された姿で就活をしていたなと思いながら本を購入した。
広告などで「自分らしく就活しよう」なんて言われるようになったけど、枠にハマっている方が落とされずに済むのは、今も変わらないのでしょうな。

人気のIT企業の新卒採用に残った6人の就活生。
最終選考の課題はグループディスカッション。
6人を1チームとして、チームを作り上げて最終選考に臨む予定だったが、直前に課題の変更が告げられる。
そして、内定を賭けたグループディスカッションの中で「告発文」が見つかる。その犯人とは。

ここまでの物語でも引き込まれていたのだが、この作品のすごいところが、ここまでのあらすじに書かれている物語がまだまだ序章であること。
ミステリーなので、犯人探しがメインだと思い、ミステリかじりの読者は、登場人物の6人を疑いながら読み進める。
おっと、うまくまとまって終わったな〜と思ったら終わってない!
目の前が終点かと思ったらブチ抜いていく。
考察好きは置いていかれるような、物語は予想外の展開で進む。

作者の浅倉秋成さんについて、帯には「伏線の名手」と書かれていた。
帯の通り、見事でした。
印象的な伏線は「月の裏側」の話。
伏線にも美しさがあることを知る。伏線の純度が美しい。

あと、読者にこっそり推理させてくれるところがある。
回答は明記されていなくて、それでよりクッと心が掴まれる。
誰かに言いたけどネタバレになるから言えなくて、さらに心に残る。
もう全部伏線なんでしょうね。

感情ユサユサ系ミステリ、というのか読みながら気持ちがすごい振り回された。
登場人物6人の個性について、こいつはさすがだな、と思っていたらなんだこいつ! と裏切られた気持ちになったり……
もう誰も信じられなくなったり。
でも信じたくなったり。

作者の好きなように感情が振り回されていたんだな、って読後に気付く。
それに気付いてから、ちょっと悔しくなっちゃうくらいに面白かったです。


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