「自分の強みにフォーカスする」は正しいか
自分の弱みよりも強みにフォーカスした方がいい。短所は気にせず、長所を伸ばせばいいという人が少なからず存在します。でもそれって正しいのでしょうか。
「8 Steps to High Performance: Focus On What You Can Change」 (未邦訳)という本の中で、著者の マーク・エフロンは「自分の強みにフォーカスする」ことのメリットに科学的根拠はなく、むしろ間違いであると述べています。
(マーク・エフロンはハーバードビジネスレビューでも人気のライターであり、「One page Talent」というベストセラー本も書いています。)
「自分の強みにフォーカスする」
この考えが誤りである理由がこの本の中で述べられていますので紹介します。
1)必要なスキルは変わる
今後、VUCAと呼ばれる時代に突入すると言われます。
VUCAとは
Volatility:不安定
Uncertainty:不確実
Complexity:複雑
Ambiguity:曖昧
の頭文字をとったもの。
「取り巻く環境が複雑になり、将来の予測が困難な状態を言います。
LIFE SHIFT(東洋経済)には生涯を通じて「変身」を続ける覚悟を
持たなくてはいけないと述べられています。つまり、私たちはこれからさらに広い視野を持って学び続け、変化に対応しなければいけない。
自分の強みにばかり囚われていては視野が狭くなり、やがて時代に取り残されてしまう危険性があります。
励ましなのかわかりませんが、「自分の短所に目を向けるよりも長所を伸ばそう」という教育は綺麗事でしかないと自覚すべきだと思います。
2)それは本当に自分の強みなのか
わかっているようでわからないのが「自分自身」です。自分を客観視するのは本当に難しい。ましてや自分の強みを客観的に評価など、なかなかできることではありません。色々な経験をして、得意なことも苦手なことも経験してやっと認識できるような代物です。
はなから「強み」のみにフォーカスするというのは、自分を知るという上でもマイナスになり得る考えです。
3)短所は足を引っ張る
言われてみれば当たり前のことです。短所は足を引っ張ります。自分の短所を自覚し、試行錯誤によってやがて修正することは可能でしょう。その上で自分の長所・強みを活かせば、より豊かな人生を得られると思います。
上の記事でも述べましたが、ギフテッドと呼ばれる、先天的に平均よりも顕著に能力が高い人たちの教育(ギフテッド教育)はよく、天才児教育だと言われることがあります。しかしそれは完全に誤解です。
確かにギフテッドの子どもたちは同年代の子に比べて、特定の分野で凄まじい才能を見せることがあります。
しかしギフテッドの子どもたちのもう一つの特徴として、発達障害をはじめとした生活に支障をきたす問題を抱えやすいというものがあります。
(「2E (twice-exceptional):二重に例外な」と表現します、)
能力に「峰」と「谷」を併せ持つようなイメージです。
ギフテッドの子供たちがより豊かな生活を送るためにはこの「峰」と「谷」の両方からアプローチする必要があります。これがギフテッド教育の本質です。
ギフテッドの子どもたちの才能を伸ばすために長所だけ伸ばせばいいという教育はギフテッド教育ではありません。
能力の「峰」と「谷」の両方をサポートしてあげることが大切なのです。
このような教育は通常学級の子どもたちの教育に対しても取り入れるべきだと考えます。
「自分の強みにフォーカスする」
この考えは自分の弱み・短所・苦手さから目を背けないからこそ活かされるものなのでしょう。
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