四国高松に部屋を借りる 3/3
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四国高松に部屋を借りる 3/3
そんな経緯があって、3月の月末に広島からその部屋に越した。どのような家具の配置にするかは専門分野なのでいろいろシミュレートをしたものの、やはり現地でいろいろ調整しながら配置をアレンジした。一人暮らしをしながら、生活の実験をするつもりで暮らそうと思っている。基本的には、プラスチックな生活雑貨を買わない。あるものを工夫して普通の人が「必要」だとつい思ってしまうものを吟味する。知り合いは「ミニマリスト」ですね?というが、ミニマリストというよりは、暮らし方を見つめた結果、モノを必要としない生活に落ち着けばいいなと考えているところだ。
掃除機は使わず、箒と塵取りや、他の電気を使わない道具で掃除をする。冷蔵庫は最小限。最初は洗濯機も無しにしようかとも考えたが、特に冬は皮膚が弱く手が荒れるので止むなく小さな全自動のものを購入した。寝具は、寝袋を試してみることにした。当たり前(に思われている)暮らし方を見つめ直してみる実験。気持ちよさと労力とコストのバランスをどう考えるか、である。尚且つ、シンプルでありながら、機知に富んだもの。例えば、クロスの貼られていた収納の引き戸の裏はラワンで仕上げだった。もちろん、扉をひっくり返し、ラワンを表に出して戸を立て込み直したり、そういう些細なことだ。
他には、和室と洋室と、LDを隔てている4枚の引き戸は外して、丁寧に補強と養生を加えて2枚づつ重ねて床に寝かせ、その上にそれぞれゴザとマットレスを敷いて、菊竹清訓の「スカイハウス」の「ばんだい」や、清家清の「私の家」の移動畳のような、プラットフォームに仕立てた。何のことはない、ただ建具を寝かせて台にしただけのことなのである。それと、新人くんのグッドジョブに感謝するしかないのだが、元々は大きすぎる玄関収納と、雰囲気のないペンダント照明が設備に付いていたが、これは他の空いている部屋に使ってくださいと申し出て、すんなりOKが出た。さぞ変わった借主だと思われたことだろうが、これもひとつの有効活用である。
賃貸用にこれまでに何度か改装や美装が行われているらしく、洗面室の出入り口は、サイズのフィットしないアコーディオンのパネルドアが付けられていた。これは美観を損ねるので、カバーするようにインド綿のファブリックを吊るした。中廊下に面したサッシュの外が暗いため、ここにもジュートのファブリックを吊るした。逆に、バルコニー側は川に面しており、対岸も住宅がないために、誰からも見られている気配を感じないため、今のところカーテンはつけていない。夏には西陽対策で簾か葦簀が必要かもしれない。物干し金物がバルコニーの天井に取り付けられていたので、竿は買わず、綿ロープを渡して洗濯物を干せるようにした。
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そんなわけで、1週間かけて、新しい暮らしのベースを、自分にとって美しくかつ暮らしやすくチューニングを施しながら、やっと形になってきた感じがある。毎朝、川からの水の音と微かな潮の香りで目を覚ます。夕暮れは坂出方面の半島の山に陽が沈む。なかなか良いではないか。コーヒーを片手に好きな音楽を聴きながら、キッチンのシンクしたの扉を開けた時、敷いていた紙に水が滴って色が変わった染みを発見した。シンクをよく見ると、黒ずんだ汚れだと思っていたものが、どうやら錆のようだった。ピンホールがあるのだろう、そこから水漏れがしているようだ。さて、新たな問題発生である。新人君の「本当にこの古い物件で大丈夫ですか?」という心配はこんなところで命中したのだった。
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その顛末は……(ストーリーとしては以上です、どうなったか知りたい人、このシリーズが良かった、という方は支援いただけたら喜びます!)
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