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江戸時代の市日を、いま。まちの人と想いがつくる「いっておかえり鹿野市」

今年は3年ぶりに、鹿野市かのいちが開催されるらしい……。
そんな話を噂に聞いたのは、3月のことでした。

水色が目に鮮やかな案内用旗。

山口県萩市城下から、岩国市北部の山代地方を結ぶ山代街道。
この道中に、周南市鹿野地域の町並みが広がっています。

道の両側にかつての商家が並び、毎月「3」のつく日には市が行われていました。江戸時代初期にはすでに市が開かれていた記録があり、この市日には鹿野の町は大変な賑わいを見せていたようです。

この市を現代に復活させ、鹿野の魅力を発信することを目的に開催しているのが「いっておかえり鹿野市」なんです。

「いっておかえり鹿野市」では、地域住民や山口県立大学の学生グループ「鹿野人かのんちゅ」によって、鹿野地域の産品である、強い渋味がくせになる「鹿野茶」や、渋柿に火を通すことで、まるでサツマイモのようなホクホクした食感と甘味になる「焼き柿」などが振る舞われます。

空き家などを活用した鹿野内外の有志による出店もあり、2011年から毎年2回、春と秋に開催してきた鹿野市は、16回目の開催となった2019年には、すっかり恒例行事になっていました。

鹿野地域で生まれ育った自分にとっても、いつも見慣れた町並みが賑やかになるこの日は、いつもは静かな鹿野の町並みと違う顔を見ることができて、楽しみな日になっています。

第16回(2019年10月開催)撮影。シンボルマークの青いのれんも、だいぶ年季が入っています。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響によって2020年5月以降は開催が見送られていました。
そんな中に聞いた再開の知らせ。
久しぶりに、鹿野の町並みが賑わう予感に胸が高鳴りました。

晴天に恵まれた5月14日、まちに響く子どもの声

鹿野町商工会横、旧廣本金物店に設置された総合案内所

「いっておかえり鹿野市」当日、5月14日(土)。
前日までの雨もすっかり上がった晴天の下、第3年ぶりの開催となる、17回目の「いっておかえり鹿野市」が開催されました。

これまでの会場である、旧山代街道のはしる鹿野中心部の通りだけでなく、その隣に鹿野町商工会や、鹿野小学校のある通りも会場にして行われました。

観光ボランティアガイドの受付も行う総合案内所や、更生保護女性会によるカレー提供、鹿野小PTCAの皆さんなど、地元の人が協力するバザーなどが鹿野市を盛り上げます。

ちなみに、鹿野小はいわゆるPTA(P=保護者、T=教員)に加え、C(コミュニティ)を加え、PTCAとして活動しています。地域の力も含めて、子どもたちと関わっていこうという気持ちを感じますね。

バザーの販売品のひとつ、鹿野地域の伝統工芸品「山代和紙」を利用した製品

その中で、特に鮮明に記憶に残ったものがあります。

会場のあちこちから聞こえてくる、地元に暮らす鹿野小・中学校の児童・生徒の皆さんの声。スタッフとして、鹿野市を楽しむ参加者としての子どもたちの声が、鹿野市の会場全体に響き渡っていたことです。

かき氷作りに歓声を上げる子どもたち

かき氷やわたがし作り体験に歓声をあげる小学生や、地元の高齢者生産活動センターが作るさまざまな商品を、熱心に説明する生徒たち……。

子どもたちのにぎやかな声が、町なかに響く。
ただそれだけなのに、なぜだかとても気分が明るくなるというか、温かくなるというか……そんなポジティブな気持ちを呼び起こしてくれます。

催しは再会の場所

鹿野市の中を歩き回りながらシャッターを切っていると、不意に名前を呼ばれました。
声がした方を振り向くと、そこにはよく足を運んでいたうどん屋「はなどり」の店主さんのご家族がいらっしゃいました。

周南市の中心部、徳山地域で超大人気のうどん屋「くうかい」で修行したというそのうどんは、細めの麺とおいしいスープに天ぷらと、とてもおいしかったことを思い出します。

実はソバ派な自分が、うどんもおいしいんだな……と感動したほどの味だったのですが、鹿野地域から徳山地域に引っ越してしばらくした頃に閉店してしまい、それ以来「元気かなぁ」と思い出すことはあれど、なかなか顔を見ることもできなかった方なんです。

その店主さんのお元気そうな様子を見ることができて、驚きとともにとても嬉しい気分になりました。
何年もの間、言葉を交わす機会もないままでしたが、近況を聞くこともでき、なんだかとても懐かしい気分になりました。

また、驚くことに、高校時代の友人も鹿野市に出店していました。
久しぶりすぎて、なかなか確証が持てなかったのですが、言葉を交わして「やっぱり!」となりました。聞けば、家業を継ぎながらいろいろな場所に出店しているのだとか。同級生のがんばりを知ることができて、とても嬉しい気分になりました。

鹿野市に限らず、こうした催しの場は「再会の場所」なのだ、と常々感じ
ます。普段の生活の中ではなかなか顔を合わせることができない知人と出会
うことができる。「最近どう? 元気でやってる?」と言葉を交わし合うこ
とができる……これも、催しの大事な側面の1つと言えるのではないだろう
かと思います。

鹿野の元気、復活の兆し

新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの催しが中止になっていた鹿野地域。そんな中、中止になっていた催しがまた開催されたということは、とても嬉しいことだと思います。

毎年7月30日に行われる鹿野地域の夏の風物詩である「鹿野天神祭」や、花火と言えば夏というイメージがある中、冬に行う珍しい花火大会「銀嶺の舞」など……鹿野の元気の象徴ともいえるこうした催しの数々が、もっと盛り上がる。そう感じました。

会場はこちら

16回目までは地図中央の通りが中心でしたが、17回目は地図左側の通りも会場になっていました。

例年通りであれば、5月の次は10月の開催となる「いっておかえり鹿野市」。秋が深まってくる10月に、もしかするとまた、鹿野市に出会えるかもしれませんね。

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