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鹿野の昔話「重左衛門爺さんとホトトギス」
山が若葉の頃になると、鹿野の里をぐるりと囲む山々のあちこちから「テッペン、カケタカ。テッペン、カケタカ」と、ホトトギスが忙しく鳴き始めます。あれは、「木のてっぺんに、巣をかけたか」と鳴いているのです。
怠け者のホトトギスは自分で巣作りをせず、ウグイスの巣が留守の時を狙って自分の卵を産み、ウグイスの卵を追い出して捨ててしまうのだとか。
そんな話をしてくれた重左衛門爺さんはたいそう話の上手な爺さまで、子どもの喜ぶ話をいくつもしてくれました。
「わしが、山へタケノコを取りに行ったときじゃがのう、わしの後ろを、ホトトギスがずっと追いかけてくるのいや」
爺さんはぽん、と、ピカピカの頭を叩いて見せて、
「そうしたらの、『テッペン、ハゲタカ。テッペン、ハゲタカ』と言うてくるもんじゃから、わしの頭がまぶしいんか、そんなら手拭いで隠そうかいと、ほっかむりをしてみたんじゃ」
腰にさげていた手拭いを、わざわざ禿げ頭にかむって見せて、爺さんは続けました。
「それでもホトトギスの奴らぁ、後ろからついてくるんじゃ。今度はの、『テッペン、カクシタ。テッペン、カクシタ』と言うのいや。ホトトギスは、そもそもそんな鳴き声しか出せんのじゃろうが、聞きようによっちゃ、いろいろ聞こえるもんじゃのう」
テッペン、カケタカ。
テッペン、ハゲタカ。
テッペン、カクシタ。
ちょっとした聞こえ方の違いで、同じ鳴き声でも、いろいろな聞こえ方をするものなんですね。
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