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【完結】執狼記

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ルーヴ・ファタールあるいはルー・ファタール 最初の世界大戦の前、とある村で起こったこと。その手記を見つけた。
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2021年1月の記事一覧

執狼記(旧題:人間の婿入り) 目次

おかしなことが起こっていた。 おかしなことが起こっているのを私は知っていた。 序 痛いぐ…

高野優
3年前
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執狼記 1‐2

 事の発端は1年ほど前までさかのぼります。12月下旬の、降誕祭を間近にした日のことでした。…

高野優
3年前
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執狼記 1-3

 その狼は少しばかり、不思議な毛色をしていました。雪と血に濡れた毛皮が日差しを受けて、し…

高野優
3年前
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執狼記 1-4

 本当に、出来過ぎた姿勢でした。もしこれが一枚の絵であったのなら、誰もが溜息を吐かずには…

高野優
3年前
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執狼記 2-1

 羊を連れ帰らなかったことについて、当然ながら牧場の主人は良い顔をしませんでした。考える…

高野優
3年前
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執狼記 2-2

 カリストのつがいは森林に暮らしている狼としては珍しく、白色の毛色をしていました。ぼわっ…

高野優
3年前
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執狼記 2-3

 街から帰ってきたYが最初に行ったのは羊を3匹、牧場から買い取ることでした。どれも生後3か月くらいの子羊です。毛の手入れや爪切りなどは人にやらせていましたが、餌やりだけは自分でやっていたのを覚えています。そのとき彼は必ず、瓶の中の薬を1滴だけ落としました。  また羊を育てるのと並行して、去年の冬と同じようにカリストを求めて森の中をさまよいます。もちろん猟銃を手にして。今度はあの立派な猟犬も主人とともについてきます。そうして目当ての狼の姿を見つけると、彼は自分の飼い犬に向かい、

執狼記 2-4

※動物を虐待する描写があります。ご注意ください  あくる朝、私はまた若君と森へ入りました…

高野優
3年前
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