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世界の異物

 人のことばかり考えて生きていても意味がないのだと思わされる。それでも、人の為に生きていきたいし、愛を原動力に生きていきたい。好意というものがなくなったことがないから、冷めるだとか、好きでなくなった相手のことをどう感じるのかとか、その気持ちがわからない。言われても理解ができないから、心の底から寄り添うことも叶わない。なんでなんだろうか、大多数の人間と同じにしてほしい。そんなふうに生きたい。なんで、私のことをこんなふうに作ってしまったのですか。泣きたい時に泣けるような人間であればよかった。怒れる人間であればよかった。人に嫌われたくないと自分の心を押し付け、閉じ込め、少し顔をのぞかせたら謝って、また自分の心を閉じ込める。そうやって生きた先にあるのが、好意への絶望で私の好意も人並みかそれ以下になってしまえばよかった。なのに私に残っている好意は、愛は覚めることの夢だった。悪夢であっても覚めもせず、幸せな夢な間はその幸せに浸ることができる。でも、すぐに悪夢に変わってしまう。すぐにすぐにすぐに。もう、この夢から覚めたいと思っていても、好意は変わらない。好きなものは好きなのだ。嫌なところが見えたとしても、嫌なことをされたとしても、貴方から触れられるのが気持ち悪く感じると言われても。好きなままだから辛いのだ。離れればいいと思うかもしれない。でも、離れたくないから辛いのだ。本当に、なんで人の好意は変わっていってしまうのだろうか。なんでこの時代は移り変わっていくのか。何があってもその人の好意なんて変わらないものなんじゃないのか。一度好きになった人を、何故好きじゃなくなるなんてことがあるのか。
 歪んでるのはこの世界じゃない。私の方だった。
 私がこの世界の異物だった。
 私を仲間にいれてほしかった。死んでも忘れられないようになりたかった。でも、今例え死んだとしてもきっとすぐに忘れ去られてしまう。そんなちっぽけな存在が私だ。世界の異物は、排除されこの世界から消えても覚えてさえもらえない。誰か一人覚えていてくれれば、私だけを思って変わらぬ愛で見守ってくれる人がいれば。それだけでいい。私が好きで私を好きで、変わらぬ想いでゆったりと過ごすことが出来たらそれでいい。それだけを望む。それだけを望むから、この異物をこの世界の仲間に入れてください。
 不変の愛を信じている私が、不変の愛なんてないとは言えない。でも、きっとそんな人と巡り会うことはないだろう。それでも、形を変えながらも寄り添えいあえる、そんな形の愛を貴女と送りたいとずっと願っている。私の変わらぬ愛で。



髙木 春楡

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