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令和時代の「故郷」を『梅雨の日/Rainy Season』は描くのか?

クラシックな一軒家に暮らす子供の、とある梅雨の日を過ごすショートアドベンチャーゲーム、『梅雨の日/Rainy Season』が現在開発中ということです。

https://news.denfaminicogamer.jp/news/190606d

お出かけの予定が雨で中止になってしまった日の家族の物語を描くというこの作品ですが、全体のプレイ時間は1時間に満たないものとなるようです。

これくらいショートボリュームな方が短編映画的に楽しめるので、ゲームに明るくない人にも優しい仕様と言えますね。

昭和の故郷を描いた「ぼくなつ」

トレーラーから主人公は幼い子供なのではと推測されていますが、ノスタルジックで都市から離れた自然豊かな雰囲気から「ぼくのなつやすみ」シリーズを彷彿とさせます。

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ただ、『梅雨の日』は「ぼくなつ」よりもどこか暗く都会的で、「ど田舎」というよりも「郊外の実家」感が強く、20代の自分にはこちらの方が心に響くものがあります。この違いはなんなのでしょう。

平成時代の名作、ぼくなつが描いていた「ふるさと」は、「大自然の中で太陽照りつける田舎」という昭和的な世界観でした。しかしながら『梅雨の日』が描くノスタルジーは、この点を踏まえると少し勝手が違います。

平成生まれの「故郷」となるか

トレーラーで見る限り、今作で描かれる世界観は「都会の匂いを漂わせる閑静な郊外の住宅」ぐらいのミニマルな環境にとどまっています。そもそもストーリーのあらすじにも、遊園地に行く予定だったという都会的な要素が含まれてることから、舞台は大都市の近郊であることが推測されます。

ニュータウンに代表される郊外の開発がひと段落し、経済成長も落ち着くどころか、実情は下降の一途をたどった時代。そんな影多き時代に幼少期を過ごした僕たち平成生まれにとっては、鬱屈としつつもどこか懐かしい作品となるんじゃないでしょうか。

そして令和を生きる日本人が見出す故郷を、自然あふれる田舎などではなく、都心から電車で一時間ほどの住み良き郊外に見出す可能性を捨てずにはいられません。

バブルの崩壊によって都市から田舎へ離れる余裕は失われ、未曾有の災害によって昭和的な故郷もまた文字通り喪失しました。そんな平成を乗り越えた令和元年こそ、新しい「ふるさと」を定義づける一本の登場に期待してしまうわけです。

昭和から平成の過渡期に「ぼくなつ」は世に放たれたわけですが、『梅雨の日/Rainy Season』は平成から令和へという時代に放流されたことで、令和が求めた「故郷」を提示する記念碑的なゲームとなってくれるかもしれません。

『梅雨の日/Rainy Season』はインディーズ作品となり、開発資金はpatreonで募っているようです。1ドルから出資ができるということで、心待ちにしている方はぜひ下記のページからどうぞ。

https://www.patreon.com/Inasa


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