見出し画像

おでかけと言いながら実は家出でした④

前回の③はこちらです

ホテルチェックアウト後の唯一の心残りが温泉。

うっきうきで大浴場に行ったのに『現在男湯』の看板を見て膝から崩れ落ちてしまった時のあの悲しさは今も忘れられません。

「温泉に行ってみようかな」

ワーケーションに憧れているくせに出不精で運転嫌い。
普段なら他県の知らない道を車で走って温泉なんて絶対考えない。

どうもこの歳になっても人はレベルアップできるものらしい。

ナビで近くに日帰り温泉がないか探し続ける事10分。
ホテルから2時間かかる場所で一軒見つけました。

「2時間あればスマホも充電できるだろうしここに行こうかな」

友人に『平日のサンデードライバー』『HARUの車の後ろには渋滞ができる』と揶揄される運転レベルのHARUのアドベンチャーが始まりました。

はたして目的地に無事辿り着くことができるのか。(←大げさ)

♨♨♨

幸いなことに、温泉に続く山道は車が少なくてとても走りやすい道でした。

川と山が一望できる景色のよさそうな場所を通ったのに、運転しているのでじっくり見られないのが残念すぎる。

一時間ほど走ったところでコンビニを見つけて休憩することに。
スギ花粉で霞む山をながめながら、ゆっくりホットコーヒーを嗜みました。

そういえば自分のために行動するのっていつ以来だろう?

私のスケジュール帳は家族の予定でびっしり埋まっているだけで、私個人の予定はせいぜい歯医者ぐらい。

家族のために時間を使う生活が当たり前だとずっと思っていたけれど、最近になってそれに少し虚しさを感じるようになっていました。

ワーケーションに対する憧れが強くなったのは、その虚しさを埋めたい気持ちの表れかもしれません。

♨♨♨


めざしていた温泉は山に囲まれた田園地帯にポツンとありました。

午前中にもかかわらず何台か車が止まっていました。
他県ナンバーは私の車だけ。

少し離れたところに住宅街があったので、近所の人達がよく利用する温泉なのでしょう。

入泉料は700円。タオルは購入しバスタオルはレンタルしました。総額で1200円ぐらいだったかな(うろおぼえ)

小さいながらも売店や食堂、畳敷きの広い休憩処がありました。

運転の疲れをとりたくてさっそく脱衣所に向かいました。

ロッカーの使用状況を見る限り、人がたくさんいそうな感じだったけど、入ってみたら湯船に3人いるだけでした。

広い内湯の一角にはジェットバス。
水風呂の近くにはサウナ。
露天風呂は岩風呂とヒノキ風呂がありました。

「最高じゃん✨」

かけ湯をして軽く身体を洗い、内湯に入りました。
やや温度は高めでしたが自分好みの温度。

身体をしっかり温めてから外の露天風呂へ。

誰もいないひのき風呂に入り、疲れた手足をのびのびと伸ばしました。

湯船には謎の袋がプカプカと浮いていました。
袋を持つとほんのりミントの香り。
どうもミントの葉がぎゅうぎゅうに詰め込まれているようです。

次に岩風呂へ。お湯は内湯よりややぬるめ。外だからかな?

透明なお湯に陽があたってキラキラとしてすごくきれい。

光をぼんやり見つめているとだんだん幸せな感覚に包まれていきました。

きっと体が喜んでいたのでしょうね。

♨♨♨


いい感じで身体が温まってきたところで洗い場へ。

この温泉オリジナルのものなのか、とてもいい匂いのシャンプーとボディーソープが置かれていました。

「すごく優しい匂いだなぁ・・ここで売ってるのかな」

匂いを楽しみながらガシガシと髪の毛を洗っていると、サウナの扉が開いてご近所さんらしき人達がぞろぞろと出てきました。

「もう少し人がいるような気はしてたけどサウナの中にいたのか」

もし先にサウナの方に行っていたら、扉を開けた瞬間に微妙な空気に包まれていたはず。

そんな空気・・考えただけで胃が痛くなる。

ご近所さん達はわいわいと脱衣所の方に出ていきました。

さっそくサウナに行こうとすると、再びご近所さん達が脱衣所から戻ってきてサウナの中に入っていきました。

「え????」

さすがに入りにくいのでもう少し待ってみようと、ジェットバスで時間をつぶしながら様子をうかがっていました。

ご近所さん達はサウナから出ては脱衣所で水分を補給し、再びサウナに戻るという事を繰り返していることがわかりました。

「もしや・・ご近所さんのコ〇ダ的な場所?」

学生時代バイトしていた喫茶店で、早朝ゲートボールを終えたおじいちゃんおばあちゃんたちが昼近くまでワイワイと楽しそうに過ごしていたことを思い出しました。

「この辺り何もなさそうだからコメ〇代わりに来てるのかも。健康にむっちゃよさそうでうらやましいな」

さすがにのぼせ気味になってしまったのでサウナは断念し、脱衣所に向かいました。

♨♨♨


フラフラしながら脱衣所を出ると、瓶牛乳が目に飛び込んできました。

お風呂から出ると必ず目に入るというベストポジションでの販売。

「こんなん絶対買いたくなるやん」

普通の牛乳とコーヒーとアップル?フルーツ?らしき3種類が売られていました。

しばらく悩んでコーヒー牛乳(160円)を購入。

うすい紫色のビニールとキャップを取り、伝統と格式あるスタイルで一気に飲み干しました。

「くはぁーーーーー!たまらん!瓶の飲み物ってほんとおいしいわ。そういえば私が小学生の頃、牛乳キャップめくりがものすごく流行ったんだけど、あれってうちの小学校だけだったのかしら。」

唐突に昔の事を思い出してしまったのは、瓶の牛乳を見るのがものすごく久しぶりだったからかもしれません。

ノスタルジックな気分に浸りながら休憩処に向かいました。

座布団を枕にして横になりつつ、スマホの電源をON。
鳴りやまない通知音を聞きながら少しうたた寝をしました。

♨♨♨


家族は私が家を出た理由をなんとなく察していたようです。

夫からは『車中ではなくホテルなど必ず安全で暖かい場所で過ごして、気持ちが落ち着いたら帰ってきてください』というメッセージが届いていました。

娘から届いていた大量のLINEを読み返すと、妙に「生きていて」というニュアンスの言葉が羅列されていました。

もしかしたら、ものすごく縁起の悪い事を想像しているのでは・・?

慌ててSNS全世界発信で私を探していないかを確認。

「よかった・・発信されてない」

なぜかどっと疲れが出て、再び座布団を枕にうたた寝を開始しました。

♨♨♨

軽く昼寝を済ませたあと、帰り支度をはじめました。

わかってはいたけど、私が好きに行動すると家族に迷惑や心配をかけてしまう・・さすがにもう帰らなくては。

初めての家出は慣れない事だらけだったけどなんだかすごく楽しかった。

「またしばらく家族優先の生活になるけど、いつかまた一人でホテルに泊まりたいな。」

そんな事を考えながら車に乗り込み『自宅』にナビをセットして出発しました。

ちなみにその希望はその日のうちに実現します。


注・冷えた飲み物の一気飲みはやめましょう。


ここまでお読みいただきありがとうございました。
続きはこちらです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?