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おでかけといいながら実は家出でした⑤

前回の④はこちら

温泉を出たのはお昼過ぎ。遠いところまで来ていたので暗くなる前に家に戻らなくてはと車を走らせていました。

景色が山から街に変わってきた頃、私の身体に突然異変が。

冷たいコーヒー牛乳を飲んで冷えたからか、お腹にキューーッとした痛みが襲ってきたのです。

近くにあったコンビニに飛び込みトイレを拝借。

なんとか痛みが落ち着いたので、温かいお茶を買って車に戻りました。

車の中でお茶をすすっていると再び襲ってくる腹の痛み。

しばらく耐えていましたが、今度はサーーッと血の気が引いていくような嫌な感じがしました。

「これって、もしかしたら迷走神経反射・・?」

迷走神経反射とは一時的に脳への血流が落ち、血の気が引くような感じがしたり意識が遠のいたりする症状。

腹痛はその前兆で出る時があります(個人差あり)

迷走神経反射の可能性がある以上、車の運転をするわけにはいきません。

近くにビジネスホテルがないかスマホで探し、お手頃価格のところを急いで予約。

痛みには波があるので、楽になったタイミングでホテルに向かって車を走らせました。

🚙🚙🚙

2分ほどでホテルにつき、すぐにチェックイン。
鍵と明日の朝食券を受け取ると部屋に直行しました。

眠っていたのか意識を失っていたのかよくわかりませんが、ベッドの上で目が覚めました。まだ少し頭がフワフワしています。

外はいつの間にか真っ暗です。到着した時はまだ明るかったのに。

スマホを見ると、家族からの鬼電と留守電とLINEが大量に届いていました。(そりゃそうだ)

「急いで生存報告しないと全世界発信で探されてしまう💧」

体調を崩してしまった事と明日は必ず帰る事を夫に連絡。

「ホテルかどこか安全なところで必ず休んでください」と言われました。

寝汗がひどかったのでシャワーを浴びてから着替え、そのまましばらくベッドで横になっていました。

🛏🛏🛏

フワフワ感がなくなると今度は猛烈にお腹が空いてきました。

『なぜ腹ペコなのを知っているの?』と言いたくなるようなタイミングで、大鍋で作ったカレーの画像が娘から送られてきました。

「あ、おいしそう・・私の好きなじゃがいもゴロゴロカレーだ」

カレーは私の大好物。普段料理をしない娘が、夫に手伝ってもらいながら作ったようです。

『かえってきたら食べてね』というメッセージを見て、思わず涙腺が決壊しそうになりました。

腹痛を起こしていたのだから刺激物は食べない方がいいのでしょうが、画像を見たからすっかり頭の中はカレー。口もカレー以外受け付けてくれなさそう。

館内案内を見ると一階にレストランがあったのですぐに向かいました。

メニューにはとても高級そうなカレーがありました。
残念ながらじゃがいもの姿は見当たりません(泣)

このホテルの名物メニューらしく価格もお手頃だったので、迷いなくそのカレーを注文しました。

普段は食べられないレストランのおいしいビーフカレーを堪能し、自販機で温かいお茶や明日飲むコーヒーなどを買って部屋に戻りました。

到着した時には気が付きませんでしたが、ベッドのところにUSBの差込口があるのを発見。

充電切れの心配がなくなったので夫と連絡を取り、今後の事を含めて話をしました。

通話を終えたあと、ベッドで横になりながらスマホでSNSを見てダラダラ過ごしていましたが、いつの間にか寝落ちしてしまったようです。

目を覚ますと外はだいぶ明るくなっていました。

せっかくのホテルライフ・・もうちょっと夜更かししたかった💧

🍛🍛🍛

時計を見ると朝食会場がちょうどオープンする時間。

早めにご飯を食べてチェックアウトまでくつろごうと、昨夜のレストランに向かいました。

朝一番なら人は少ないだろうと思っていたのに、朝食会場はすでに高校の野球部員らしき若者達が大勢いてとても賑やかでした。

もしかして春の高校野球?それともこのあたりで試合?

ポツポツと空いてる席が見えたのでそのままレストランに入りましたが、料理を取り終わった頃にはもう空席はなくなっていました。

「誰かと来てたら席をキープしててもらえたのになぁ・・💧」

所在なくトレイを持ったまま立っていると、野球少年の一人が周りの部員に声をかけ、席を移動して二人席を一つ開けてくれました。

(補足・決して目で圧をかけていたわけではありません)

野球少年たちにお礼を言い、ありがたく席に座りました。

人の優しさにふれて涙腺が決壊しそう。
歳をとってほんと涙もろくなっちゃった💧

朝食を食べ終えてレストランから出ると、野球少年たちが玄関に横付けされた大きなバスに乗り込む準備をしていました。

さっきご飯を食べ終わったばかりなのに・・試合会場が遠いのかしら。

『がんばれー』と心の中で応援しながら部屋に戻るエレベーターに乗り込みました。

⚾⚾⚾

チェックアウト時間までのんびり動画を見て楽しみました。

途中で『週末に過ごそうビジネスホテル』的な動画がおすすめにいくつか出てきました。もしかしてホテルのWi-Fiを使ってるから?

おもしろそうなので見てみたら、週末などに一人でビジネスホテル利用してリフレッシュしている人が多くいることがわかりました。

実際、気分転換が下手くそすぎてストレスをため込みがちの私でも、ホテル滞在ですごく気持ちがリフレッシュしています。家出前とは全然違います。

おばさんが一人でビジネスホテルを利用するのは場違いかなとずっと思っていましたが全然大丈夫なようです。

「今の生活が落ち着いたら、またホテルにお一人様で泊まろう。」

何年先になるかは全然わからないけれど、これから先の目標と楽しみができました。

時間ギリギリまでゆっくり動画を楽しんでからチェックアウト。
急いで家族の待つ自宅に帰りました。

🚙🚙🚙

自宅に到着したのはお昼を少し過ぎた頃。
なんだかカレーのいい匂いがします。

「おかえりー」と娘が玄関まで来てくれました。

お昼ご飯は大鍋で作られたじゃがいもゴロゴロカレー。
やっぱり美味しいー!(涙目)

褒められて嬉しそうに笑う娘。
こんな笑顔を見るのは本当に久しぶりです。

私は夫と話をして決めた事を娘に言いました。

「父さんも母さんもこれから本やネットで強迫の事を調べていくようにする。もう一人で悩ませることはしないからね。また普通の生活ができるようにしていこう。」

娘は驚いたようなほっとしたような表情をしてうなづいた後、泣き出しました。



2日目は体調不良であまり楽しめませんでしたが、
お一人様でもこういう過ごし方ができるのだと知れてよかったです。

娘もいつか一人でホテル宿泊をしてみたいと言っています。
強迫がある程度落ち着かないと実行は難しいので、
今は親子でそれを目標にがんばっています。

私の家出話に長々とお付き合いしていただきありがとうございました。


初回はこちらです。


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