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【人流データ×インフラメンテナンス】エビデンスに基づいた効率的なインフラメンテナンスへ

はじめに

みなさん、こんにちは!GEOTRA経営企画部マネージャーの小島です。
本日は、GEOTRAのサービスを用いたユースケースの第一段として、老朽化が進む道路や橋梁での活用事例をご紹介します。

加速するインフラ老朽化

日本では、1960年代の高度経済成長期に、道路や橋梁、トンネル、上下水道、学校など、生活の利便性や質の向上を目指した社会インフラへの投資が加速し、一斉に建設・整備されました。しかし半世紀が過ぎた今、その多くが耐用年数(50年)を大きく超えて老朽化が進み、2021年6月に公表した、国土交通省のインフラ長寿命化計画(第二期)によると、2040年の時点で建設後50年以上経過する施設は、道路橋の約75%、トンネルが約53%を占めるとされています。

(建設後50年を経過する社会インフラの割合 国土交通省のインフラ長寿命化計画(第二期)P.6を改変)

社会インフラが老朽化すると、あらゆる事に支障をきたします。例えば、上下水道が老朽化により機能しなくなれば、周囲の街では水が使用できなくなり、ライフラインと経済に大きな打撃を与えます。また、道路や橋梁が老朽化し壊れると、人命に関わる大事故につながる恐れがあります。

記憶に新しいですが、2012年に起きた山梨県にある中央自動車道の笹子トンネル天井板崩落事故や、2021年に起きた和歌山県の水道橋崩落事故といった、大きな事故が相次いでいる他、大々的にメディアで報道されていない小規模な事故も数多く発生しています。笹子トンネルの事故を契機に、国土交通省は、全国の橋やトンネルについて、自治体などに点検するよう義務づけ、その結果、多くの社会インフラが老朽化しており、修繕が必要だということが分かりました。

インフラ老朽化対策

上記の表から分かる通り、今後多くの社会インフラで老朽化による悪影響が同時期に起こりうる一方で、これらの保全には膨大なコストが発生しますが、日本の財政では全てを賄えるだけの余力がないというのが実態です。2018年11月に公表した、国土交通省の社会資本の将来の維持管理・更新費の推計によれば、社会インフラに不具合が生じてから修繕を行う“事後保全”の方法で保全を行う場合、2048年までに12.3兆円の維持管理・更新費がかかるとされる一方、事故が起こる前に修繕を行う“予防保全”の方法で保全を行う場合、その約50%の6.5兆円の維持管理・更新費で済むとされています。従い、限られた財源の中で多くの社会インフラを保全するためには、予防保全型のインフラメンテナンスの取り組みを徹底することが重要とされています。

(中長期的な維持管理・更新などのコストの見通し 国土交通省のインフラ長寿命化計画(第二期)概要より引用)

国土交通省はインフラ長寿命化計画(行動計画)の中で、①予防保全の管理水準を下回る状態となっているインフラに対して、計画的・集中的な修繕などを実施し、機能を早期回復させる、②地方公共団体などが適切かつ効率的なインフラメンテナンスの実施に資するため、新技術や官民連携手法の導入を促進させる③社会情勢の変化や利用者ニーズなどを踏まえたインフラの集約・再編や、来たる大更新時代に備えた更新時におけるパラダイムシフトの検討などを推進させる、といった3つを、重点的に実施すべき取り組みとして挙げています。

ユースケース事例

上記の取り組みを実行するためには、道路や橋梁などの利用状況の現状把握や、道路や橋梁などを封鎖若しくは喪失した場合の人流・交通流の変化や経済性指標への影響を事前に認識した上で、多角的なアセスメントを行い、効率的なメンテナンス計画を策定していく必要があります。

橋梁の全体マネジメントの手法として、富山市が提唱する“橋梁トリアージ”という考え方がありますが、これは、橋梁の修繕に優先順位を付けて対応しないと通行止めだらけになるため、架け替える橋、架け替えの順番を待つ橋、修繕をしない橋、現時点では修繕が不要な橋といった、「選択と集中」の判断で橋を見極め、橋の統合や廃止まで踏み込み、計画的な保全を行うといった手法です。橋梁トリアージは、名前に橋梁とはついていますが、他の社会インフラ全てにおいても活用出来る手法として注目されています。

実際に、“橋梁トリアージ”の土台となる、道路や橋梁などの優先順位付け・アセスメントを目的に、弊社サービスをご活用頂いています。具体的には、生活者ひとりひとりの行動データが分かる、GEOTRA Activity Dataを用いて、道路や橋梁などの利用状況(通行量や利用者の属性、利用目的など)の把握や、道路や橋梁など封鎖時の人流・交通流のシミュレーションを行っています。

(GEOTRAにて作成)

まとめ

本記事では、老朽化が進む道路や橋梁でのユースケース事例をご紹介しました。

地方自治体が管理する橋は、2021年3月末の時点で、約6万8000か所の橋で修繕が必要と判定されていますが、全体の約6~7割程度の橋では、まだ修繕が終わっておらず、国土交通省の試算によると、今後も毎年約5000か所の橋が、新たに修繕が必要とされる可能性が高いとされ、現状で必要とされる橋の修繕を終えるのに20年以上かかるとされています。

限られた予算の中で、人流データなどを通じて現状を正しく把握し、優先順位を付けた効率的な対応が、これまで以上に求められることは言うまでもありません。

(補足)GEOTRA Activity Dataを活用したシミュレーション

前段でご紹介した通り、道路や橋梁など封鎖時の人流・交通流のシミュレーションに弊社サービスをご活用頂いていますが、他にも都市人流の未来予測、例えば、まちづくり施策実施時の歩行者の回遊の変化、大型連休や施設新設時の渋滞予測、他にも災害時の想定人流などをシミュレーションすることが可能です。

(GEOTRAにて作成)

最後に

5回目の投稿となる今回は、老朽化が進む道路や橋梁でのユースケース事例をご紹介しました。
今後も、noteを通じて、ユースケース事例をご紹介しますので、乞うご期待ください!
皆様のお役に立てるコンテンツを配信できればと思っておりますので、少しでもご興味をもって頂けた方は、いいね or フォローをよろしくお願いします!

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