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女子大生ひとり旅の記録〈Vol.25〉22歳のの修学旅行の夜

【前回の話】


Aの家に着き、お風呂に入って、宴の始まりである。今日の夜はひとりではない。

「デザートを用意してます」
と謎のキャラクターを憑依させてそう言うAは両手に瓶に入ったプリンを持っていた。ここらへんでは有名なプリンらしい。

突然押しかけて迷惑かと心配していたのだが、Aもいくらか楽しみにしてくれていたのかと思うと安心した。

それからさっき買った醤油バターのポテトチップスもあるから今日は宴だ。

Aが「炭酸嫌いやから飲めへんくてずっと置いてあるオロナミンCがある」と言っていたから密かに楽しみにしていたのに、冷蔵庫を開けると入っていたのはリポビタンDだった。

プリンを食べる前にAがポテトチップスを開けたから、バター醤油風味のプリンになってしまったから、部屋の端っこでバター醤油の香りに邪魔されないようにプリンを食べた。


それからスカイツリーのショップで、家に帰ったら一緒に作ろうと買ったスカイツリーのナノブロックを組み立てた。
私の方が順調だったはずなのに、気づいたらAのスカイツリーは完成していた。
どうせ京都に帰る時に崩さないといけないから、もう完成させずにカバンにしまった。

疲れ果ててすぐに寝ることにした。Aの家にあったブランケットと座布団を借りて、夜行バス用に持ってきていたネックピローとアイマスクをすれば雑魚寝にしては快適な睡眠環境をつくることができた。
翌日も仕事を控えてるAが他人がいるから寝づらくないだろうかと心配していたけれど、消耗してすぐにガーガーいびきをかき始めた。

そうだった。忘れていたけれど、こいつ、めちゃくちゃ寝るんだった。
こいつの第一印象が蘇る。7年前初めてAを認識した時、高校生活が始まったばかりの英語の授業の最前列で白目を剥いてうたた寝していた。そのあとクラスが同じになってかぶる授業が増えて、その睡眠の多さと長さに驚いたのだった。

いびきはうるさいが、家主がぐうぐう眠っていることに安心して間も無く私も眠りについた。


翌朝目が覚めて、昼過ぎの出勤まで寝ると言っていたAを起こさないように、静かに身支度を整えて、Aに泊めてくれたお礼と昨日が楽しかったと置き手紙を書いて家を出た。


ひとり旅、最終日。
今日は推しに会いに行く。

その推しというのは、1日目の渋谷と2日目の北千住の喫茶店を紹介してくれた推しだ。

ひとまず、私は神保町駅へ向かう。

これまた推しが教えてくれた喫茶店でモーニングでも、と思っていたのに、閉まっていた。本日閉店。旅行に行くと必ず行きたいお店の一つは閉まっている。

いい旅になる予感がしていたけれど、そこには抗えなかったようだ。

(つづく)

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