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取締役会アジェンダを見直せば経営力が向上する訳

TAKA(@Murakami_Japan)です。今日は取締役会という、企業や社会そしてそこで働く人にとって大変重要であるにもかかわらず、経営に関わるごく一部のメンバーしか参加しないため、中々一般的な認知が高まらないテーマについて少し書いてみたいと思います。

取締役会の運営については、色々なTipsが存在します。今日は敢えて「アジェンダ設定」のみについて書いてみたいと思います。

「え、なんでもっと取締役会について知りたいこと沢山あるのに、なんで?」と思った方も多いと思います。結論から先にお伝えすると、色々あるけど実はアジェンダ設定が最も重要だと思っているからです。

ありがちな取締役会でのアジェンダの決まり方

アジェンダ設定を工夫している会社も数多くあると思います。一方で、以下のようにアジェンダを設定をしている会社も多いのではないのでしょうか。取締役会の運営方法が定まっていない比較的若い会社や未上場企業(スタートアップ等)はもちろんのこと、上場企業でもみられる光景だと思います。

1)ルールドリブン:
会社法等で求められる取締役会の決議事項に沿ってアジェンダが設定

2)執行ドリブン:
足元の業績の報告、またそれに対する対応策をメインにアジェンダが設定

3)気分ドリブン:
アジェンダが不明確で社長が気になっていることが実質的なアジェンダ

どのケースでもそうですが、このアジェンダを取締役会の運営チームが事務的・機械的に決めている企業も多く存在するのではないでしょうか。例えば、法務部、例えば経営企画部、の誰か、という風に。そこには経営のチェックも意思も存在していません。

なにが問題なのか

ルールドリブンな取締役会は極めて形式的なものになりがちですね。もちろん、決議に際して十分な議論をしている場合は別ですが、実質承認されることを前提にアジェンダが決まってしまっていては、経営力云々の前にガバナンスも効いていない状況です。

執行ドリブンの取締役会も多くみられます。業績が順調であればよいですが、どんな会社にも課題はつきものですから、短期的な業績の議論ばかりしていると、どんどん場当たり的な、短期思考の、PL脳に陥った経営の議論が支配的になってきてしまいます。

気分ドリブンは経営者の感覚が冴え渡っているうちは、実は一番効果が高かったりします。社長が経営にとって最も大事なことを把握できているという前提が成り立つ訳ですから、社長の頭の中=アジェンダというのはまさに理想的とも言えます。ただ、一度その前提が成り立たなくなってしまったら、経営にとって重要なこと以外に取締役会の時間が割かれてしまうことに陥ってしまいます。

そうして、本来取締役会で議論したり監督したりするテーマが議題に上がらず、その影響がどんどん会社の経営を蝕んだり、チャンスを逸したりしてしまうのです。

なぜそうなってしまうのか

どんな会社も創業間もない頃は、取締役会で議論したり、決議をとったりすることの重要性が極めて低いものです。なんなら、取締役会が非設置の会社も多いのが実態です。

会社が小さく、事業や組織や資本政策の複雑性が低いフェーズでは、経営=執行でも問題がなく、むしろ創業社長=最高かつ唯一の意思決定機関であるというガバナンスが最も効果的だったりします。

そういう状況から次第に会社が大きくなっていき、複雑性が増してくると、徐々に執行の議論だけでは見落としてしまう経営の視点が出てきます。にもかかわらず、取締役会が、ルールドリブン、執行ドリブン、気分ドリブンのいずれかに堕ちってしまっていると、その問題にどんどん気が付けなくなっていくのです。

取締役会を構成しているのは「人」です。そこには創業以来積み上げてきた独特の雰囲気=「カルチャー」があります。どういう風に議論を進めるのか、何を議論するのか、誰が発言するのか、そういうものには強い「慣性」が働きます。変えることを難しくする現状維持、現状肯定的な雰囲気です。

なぜアジェンダ設定が大事なのか

取締役会はガバナンスにおける最も重要な機関の一つです。経営の監督と執行の分離とよく言われますが、なぜそれが大事なのでしょうか。

執行とはフィールドでプレーする選手のような存在です。それをスタンドから見渡し戦局を見定めているのが取締役会を中心とした経営の監督機能です。

経営の監督がうまく機能しないことで、大きな経営の舵取りを間違ってしまうことがあります。例えば、以下のようなケースです。

このプロダクトには課題がある。競合対比スペックが負けている。したがって市場シェアが落ちてきており、売上高成長率が鈍化しており、粗利率が低下傾向にある。プロダクトを磨き込んで売上高を再成長軌道に載せるべきだ

もしかすると、このようなケースでは本来議論すべきことは、以下のようなものかもしれません。

・スペックの問題ではなく価格戦略の問題かもしれない
・スペックの問題ではなく営業戦略・ブランド戦略の問題かもしれない
・そもそもプロダクトに競争優位性がなく撤退を検討すべきかもしれない
・そもそも市場が長期的には魅力的ではなく、早期に統合や事業売却を検討すべきかもしれない

正しくアジェンダがセットされなければ上記の議論は話題にすら昇らない可能性があります。そうして、本来議論すべきことが議論されず、寧ろ議論してはいけないことばかりが議論され、それが経営のマインドシェアを大きく奪ってしまい、執行がより強く現状打破に向けてリソースを投下してしまうことにつながっていきます。

「なぜあの時、こういう意思決定ができなかったのか」

そういう経営判断を悔いる前に、そもそも正しいタイミングにそのテーマについて取締役会で議論する場があったのか、から振り返るべきだと思います。

参考)ガバナンスに興味がある方は以下のリンクなどいくつもnoteしているので、是非そちらも参照ください。

取締役会アジェンダ設定=経営そのもの

取締役会で何を議論すべきか、は経営そのものだと思います。同じリソースを投下してより大きな売上を上げるような戦術は執行の議論です。

求められる議論は、「なぜ今この議論が重要なのか」「なぜ他のテーマよりもこの内容が重要なのか」「執行会議ではなく取締役会でこそ議論すべき内容である」等について納得感があるものでなければいけません。

つまり取締役会のアジェンダ設定は経営そのものだということです。

そのアジェンダ設定が経営の意思が存在しない、特定の人や特定の部署が機械的に決めてしまっているとしたらどうでしょうか。その会社に経営力があると言えるでしょうか。

日本企業に対して、ガバナンス強化の議論が叫ばれて久しいです。ガバナンス強化は何のためにするのでしょうか。ステークホルダー価値の向上であり、それを実現するための経営力の向上に他なりません。

経営力の向上やガバナンスの向上という大テーマに取り組むにはまだまだ乗り越えるべき課題は多数あります。ただ、そんなことをやる前に、まず「取締役会のアジェンダ設定の方法」という極めてシンプルなプロセスを見直すだけで大きなインパクトがあると私は考えています。

日本企業の経営力向上のために、まずどうやって「取締役会のアジェンダ」を決めていくのか。そこから取り組みを始めてみても良いと思います。

取締役会の運営方法、そこでの議論内容、アジェンダの設定方法に課題を感じている方がいれば、是非議論いたしましょう。

追伸)
今回の写真はいつぞやの皇居へ紅葉を見に行った際の写真です。門が開いて大勢の人が我先にと入って言ってました。withコロナ の昨今ではもう見られない風景です。

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