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紙の上のスクリーンーー鳥取の映画館と「読む」メディア① 『THE PRESS HUSTLE』

2023年1月30日(月)~2月5日(日)にかけて、Galleryそらにて開催する展覧会「見る場所を見る2」の第2部「紙の上のスクリーンーー鳥取の映画館と「読む」メディア」の解説文(会場に設置予定)を、5回に分けて掲載します。

映画研究の分野では近年、映画館から配布されていた印刷物などオフ・スクリーンのメディアが注目を集めています。そこで、前回の展覧会「見る場所を見る」以降に提供していただいた資料を基にして、今回の企画を担当しました。鳥取市内の映画館が発行した印刷物に注目することで、当時の個性豊かな映画館や観客の姿が見えてきます。映画を「見ること」に加えて、「読むこと」「書くこと」を通して鳥取の映画文化を見つめ直す試みの本企画。会場に来られない方も、以下の文章から鳥取市内の映画館や観客の姿を想像してもらえると嬉しいです。


『THE PRESS HUSTLE』

◆『THE PRESS HUSTLE』(ザ・プレス・ハッスル)
発行元:シネマスポット フェイドイン(1991年~2006年)
調査状況:1991年7月のVol.0から1996年8月28日付のVol.22までの発行を確認(Vol.20欠号)

THE PRESS HUSTLE』(以下、『プレス・ハッスル』)は、1991(平成3)年7月に南吉方に開館したシネマスポット フェイドイン(以下、フェイドイン)から発行されていた印刷物です。A4縦サイズで両面印刷あるいは見開き1ページの形式によって、カラフルな紙面で発行されています。

当初は3~7か月に1度の不定期の発行でした。1993(平成5)年7月15日付のVol.5になると「プレス・ハッスルもちょっぴり変わって再登場。これからは年6回発行を目標にということですが、抱負などは?」と記載され、これ以降は2か月に1度の定期発行となりました。現在確認できる『プレス・ハッスル』は、1991(平成3)年7月に発行されたと考えられるVol.0から1996(平成8)年8月発行のVol.22までです。(Vol.20は残念ながらまだ見つかっていません。)

『プレス・ハッスル』の特徴は、バラエティに富んだ投稿欄です。
例えば、新作上映に併せて企画されたコーナー(Vol.9「ドラえもん魅力大分析」、Vol.12「公開特別企画㊤「ゴジラ」に関する腑に落ちない7つの事柄」)や、映画館に焦点を当てたコーナー(Vol.1「映画の中の映画館」、Vol.17「映画館情報あれこれ 映画館って何だ!?」)が目を惹きます。これらのコーナーは、レンタルビデオ店や衛星放送によって映画館の存在意義が問われる中、新たに市内にオープンしたフェイドインを盛り上げるために企画されました。

『プレス・ハッスル』Vol.1、1991年7月13日付

また、読者に薦めたい映画紹介のコーナー(Vol.5「Dr.NOの私的ジャッキー賛美論&Dr.NOの香港電影指南」、Vol.10「お笑い映画番付表」、Vol.13「1995 あれも見たい!これも見たい!注目しちゃう映画 FADE IN厳選の3本」)には、映画館に勤務しているスタッフの意見が特に反映されており、当時の鳥取で楽しまれていた映画がここから読み取ることができます。新たに公開する映画情報と併せて、「フォレスト・ガンプに会いたい!+いち早く〈ガンプ〉体験をした支配人に聞きました」(Vol.14)では、当時の支配人であり、現在の鳥取シネマの社長でもある中村俊一郎さんへのインタビュー記事も見受けられます。

『プレス・ハッスル』Vol.10、1994年5月18日付

1996(平成8)年になると、県中部に位置する倉吉市に「倉吉シネマエポック」という映画館がオープンします。シネマエポックは有限会社世界館が経営するフェイドインの姉妹館であることから、『プレス・ハッスル』でも特集が組まれました。待望の映画館がオープンした倉吉市をさらに盛り上げるべく、映画館周辺の観光マップ(Vol.21「ブラっと倉吉散歩モデルコース」)や2館のスタッフが共同で執筆したおすすめの映画作品に関する記事(Vol.22「FADE INスタッフ+倉吉Cinema Epochスタッフがお贈りするサントラ大全」)など地域性を強調した記事が掲載されました。

『プレス・ハッスル』Vol.21、1996年6月29日付


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