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自分の人生をもっと楽しめる文化を。地域コーディネーター 三宅康太さんインタビュー

「地域コーディネーター」という仕事を知っていますか?
地域と学校の橋渡し役を担い、地域社会と連携しながら、社会に開かれた学校を作る仕事です。
香川県出身で大阪の証券会社勤務を経た三宅康太さんは、現在は岡山県内の高校で地域コーディネーターを務める27歳(2021年現在)。
学生と共に地域の可能性を探究しながら、大芦高原キャンプ場の運営や、「___にまつわるエトセトラ」など、幅広い活動をされています。
今回の取材では、地域コーディネーターとしての活動や、豊かな人生を実現するための教育についてお話を伺いました。

プロフィール

三宅康太(みやけ こうた)さん
1993年生まれ。香川県出身。大学卒業後に大阪の証券会社で働き始めるも5ヶ月で退職。「どうすれば幸せに暮らせるか」と考えた結果、岡山県美作市上山へ。キャンプ場で自然の魅力を人々に伝える傍ら、外部講師として岡山県の2つの高校で地域学に携わる。現在の活動は、上山の棚田や里山の再生、大芦高原キャンプ場の運営、地域コーディネーター、「___にまつわるエトセトラ」共同代表。

FaceBook: https://www.facebook.com/kota.miyake.1
Instagram: @kota_1010

地域コーディネーターになった経緯

——地域コーディネーターになったきっかけは何でしたか?

番最初のきっかけは、友人との会話でした。

岡山県倉敷市児島の地域おこし協力隊のメンバーで、倉敷鷲羽高等学校の地域コーディネーターでもある池上慶行さんと会話していたら、「自分の人生をもっと楽しんで生きられる人が増えたら良いよね」と意見が合致して。

お互い、周りにそれが実践できずに悩んでいる人が多かったんです。
どうアプローチすれば良いか考えた時に、小中高の教育を通じて、人生を楽しむのは当たり前だという文化を作っていきたいと思いました。

大人になってから固まってしまった考えを崩すのは難しいじゃないですか。
だから、小さいうちからそういう考え方を提示してあげたいなと思って。
そしたら偶然、池上さんを通じて、一度高校の授業を作ってみないかという誘いが来たんです。

そこから高校生向けのイベントを開催して、2019年から津山東高校と林野高校の地域コーディネーターになりました。


——津山東高校と林野高校では、それぞれどのような授業をされていますか?

津山東高校では、週1回1時間、総合的な学習の時間に「行学」という授業があります。

「正解が一つではない問題の解決手法を実践から学ぼう!」という強化目標を掲げ、身近なテーマで課題発見・解決型学習の実践を行なっています。

林野高校の「みまさか学」は選択制で、地域をフィールドとした体験型活動や、ローカルで身近な課題解決型の活動をする授業です。

どちらの授業も、生徒達はまず地域のことを学び、次に探究したい分野を選んでグループを組み、フィールドワークで地域住民と交流して課題を立て、解決策を考え、実践していく授業です。

最後には地域の方々も招いてプレゼンテーションをして、アウトプットまで行っています。


地域について学ぶこと


——グローバル教育が増えていく中で、地域について学ぶ魅力はどこにあると思いますか?

“Think globally, act locally(地球規模で考え、足元から行動する)”っていう言葉がある通り、行動を起こすのは身近なところからだと思っていて。

学生の視野を広げるのは賛成だけれど、その先の活躍の場は政府も企業も用意できていないですよね。
加えて、日本でも多くの地域が人口減少などの課題を抱えています。
しかし、それは裏返せば地域には可能性があるということです。

地域をフィールドにチャレンジしていくことも、視野を広げればグローバルな課題解決だと思います。
まずは地域について学び、ローカルな行動を起こしていけば幸福度が上がって、その結果、良い社会を作っていけると考えています。


生徒と共に成長する

——印象に残る生徒との出来事について教えてください。

2年生の時に授業を受け持った女の子がいるんですけど、進路選択に悩んでいて。

その子は「行学」の授業で、上山の再生や神社の東屋の修復、地域の収穫祭にも携わってくれました。
その体験を元に、地域についてもっと知りたいと興味分野が定まったんです。
その後、推薦入試で希望の大学へ進学することができました。

推薦入試だったので、僕も面接の練習を手伝ったのですが、色々ある高校生活の中で頑張ったことの中心が「行学」だと言ってくれたことが嬉しくて。

恥ずかしくて直接は聞けなかったんですけど、その子が地域に興味を持ったきっかけは、僕だったみたいです。


——三宅さんは、生徒や学校にとってどんな存在だと思いますか?

僕は、先生ではないけれど生徒のそばにいて、かつ年齢的にも生徒と近いので、生徒のよりどころとなる存在だと思います。

先生達の中には、縁のない地域に配属されて来ている人もいるので、いきなり地域学の授業を任されても戸惑ってしまうと思うんですよね。
インターネットで情報収集できるかもしれませんが、実際の声はまた違う。
それを知っているのも地域コーディネーターの強みです。

毎週、生徒達とはほんの数時間しか顔を合わせられませんが、自分も楽しいし、成長できます。やりがいを感じる仕事です。

——地域コーディネーターを務める中で、どんな成長を実感しましたか?

僕が向き合っているのは多感な時期の高校生なので、どうやったら上手くコミュニケーションがとれるか、どういうストーリーがあれば生徒達が動いてくれるのかなど、日々考えています。

一方で、先生達とも良い関係を作らなくてはいけません。色々な人との接し方を学びました。


——地域コーディネーターにはどのような課題がありますか?

地域コーディネーターという仕事は、まだ仕組み化できていません。

地域コーディネーターの仕事だけで食べていくには難しく、他に活動してくれる人を増やしたくても、声をかけにくいのが現状です。
思いがある人は活動に参加してくれるかもしれませんが、結果的にその人を苦しめることになってしまったら本末転倒なので。

財源を確保して、職業として成り立たせたいですね。
例えば、高校と自治体と企業が連携できるようなコンソーシアムが組めたら、お金やノウハウといった資源が集まりますよね。

こういった組織が組めれば、社員研修として企業から地域コーディネーターを派遣してもらうこともできます。そうすれば給与は企業が担保できるので、社員も参加しやすくなる。
地域コーディネーターという活動も、広い視野で見れば可能性があると思います。


「どうやったら幸せに暮らせるのか」

——三宅さんは、どのような学生時代を過ごしましたか?

元々、僕は中学校を卒業したら専門学校へ進学して、美容師になりたかったんです。
自分の手で誰かが自分に自信を持ったり、人を変えられたりできるのって素敵だなと思って。

でも、そのことを親に話したら学歴を気にして猛反対で。
結局は高校に進学しましたが、美容師への憧れはずっと抱いていました。
その後、高校でも大学進学を勧められたんですね。
美容師になりたいという進路は、周りの大人からの賛成を得られないままでした。

あの時に自分の背中を押してくれる存在がいたら、別の人生を歩んでいたかもしれません。
もちろん今の人生も肯定しています。

だから、今の学生にはいろんな選択肢を提示できて、背中を押せる存在でありたいなと思います。


——現在も様々な活動をされていますが、全ての活動に通じる思いを教えてください。

「どうやったら幸せに暮らせるか」。
これはずっと考えています。

僕は、大学時代に、後輩と先輩を亡くしました。後輩は病気で、先輩は自殺で。
先週まであんなに元気だった人が突然いなくなってしまって、その理由ももう聞くことができなくて。
意味がわかりませんでした。

話によると、先輩は就活で悩んでいたそうです。それで人が亡くなるって、おかしいじゃないですか。
自分が望んでいたことが叶わなくても、幸せな人生を送れる社会にしたい。

そんな思いが、全ての活動に一貫しています。

何か特別なことがなくても幸せになれるし、幸せに暮らして良い。
この気付きを皆が持てればいいと思っていいます。


違和感を行動に移してほしい

——一般的な「社会のレール」から自ら外れた経験から、学生に伝えたいことはありますか?

人と違うことをする不安や恐怖は大きいですよね。僕もそうでした。
でも、やってみれば手を差し伸べてくれる大人は沢山います。

もしも今、「皆はこう思っているけれど、それってどうなのかな?」というような違和感を抱えているなら、それは素晴らしいことです。

違和感が蓄積されて行動に移せる瞬間が訪れたら、恐れずに動いてください。
動いた先に僕が関われることがあったら、SNSで連絡をください。
キャンプに会いに来ていただいても嬉しいです。焚き火を囲みながら、対話しましょう。


——違和感を感じても、それに向き合えない人もいるかもしれません。そういう場合はどうしていけばいいと思いますか?

結局は、自分が一歩踏み出さないと何も変わりません。
僕も会社を病欠で休んでいたときに、インターネットで情報収集をしたり色々な人に連絡をとったりして、上山に来るきっかけを得ました。

少し無理をしてでも違和感と向き合う時間を作ることが大切だと思っています。

あとは、散歩中にスマホに思っていることを書き出すのも良いと思います。自分にできる小さなことから始めて欲しいです。

今の高校生にも、もっと身近に相談できる大人がいたらいいなって思いますね。
自分の興味のある仕事をしている人にSNSで直接連絡を取ったり、大人と知り合えるイベントに参加したりすれば、一歩踏み出せるかもしれない。


———最後に、教育において大切にしている価値観を教えてください。

一人の人間として、お互いを尊重し合うことです。

生徒にも先生にも、その日の体調だって抱えている悩みだってありますよね。

それを踏まえた上で、どうやったら一緒に良い時間を作れるかを、これからも考えながら生徒と接していきたいです。

学生の皆さん、僕にできることがあれば、SNSから気軽に連絡をください。

キャンプ場で一緒に焚き火を囲むのも良いですよ。

>>大芦高原キャンプ場HP


インタビューを終えて

「幸せに生きるには」。

あまりにもシンプルで複雑な問いゆえに、多くの人は目を背けてしまいます。
三宅さんは、真正面からこの問いに向き合っていると感じました。

まずは、自分とその周りを幸せにして、最終的には社会全体に幸福を伝染させる。
そんな思いが発言の端々から伝わってくる、濃厚な取材でした。


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この記事は、過去のインタビューを『無花果シロ』としてnoteに移転したものです。現在と状況等変わっている場合もあるかもしれませんが、その場合はご了承ください。

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