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ぶっちゃけイヤだと思っている「フリースクール無償化」


「いちじくこばち」とは
無花果inc.&NPO無花果をつくった「ひー」と「やまだ」が
1ヶ月に起こった特徴的な事象を振り返り、
"よい教育"について対話しているものである・・・。

 


ぼくたちの愛すべき雑談


東京異常気象。雹の粒が桜のようだ。

山田さん:まずは、この記事のタイトルを決める過程を導入として記事に残しましょう。キラキラしたことばっかり話すのは疲れますから、良くも悪くも沢山の気持ちを置いておく場所にしたい。そんなニュアンスのあるタイトルが良いですね。

ライター未来さん:イチジクコバチ(蜂の一種)は、雄がイチジクの中で一生を終えるという変わった生活環をもつのですが、タイトル名にするのはいかがでしょう?

山田さん:「いちじくこばち」は無花果の中で一生を終えるの…?!僕たち運営側の内情に触れるという意味でも、記事タイトルにぴったりかも。早速それでいきましょうか(笑)

ひーくん:いちじくこばち、言葉の響きが可愛いですね。よく考えると、無花果について知らないことも沢山あります。秋になると思い出したように「あっ、旬がきたんだ!」と感じますが、無花果との接点と言えばそれくらいかなぁ。
山田さん:あの、僕、実は一度も無花果を食べたことがないんです…(笑)
スタッフ一同:えーーーーー!!!!


山田さん:ところで、ひーくんの最新トピックは?
ひーくん:無事、9月末に大学を卒業でき、社会人と名乗れるようになりました(笑)
加えて、無花果高等学園(以下、花高)の生徒さんたちの合否発表等もありましたね。
就職が決まった生徒が2名、大学への進学が決まった生徒が1名います。僕自身も生徒たちも進路が決まって一安心です。子どもたちの学びの過程自体が尊いものなのですが、今までの活動が数字にもなって表れてきており、心からホッとしています。

山田さん:進路については来月号の「いちじくこばち。」でも詳しくご報告したいですね。毎月更新の記事「いちじくこばち。」は、全力で近況を出し切る場所にしましょう。


トピックス3つ

topics①「青春は青くない」オレンジプロジェクト始動

山田さん:エモいポスターが目を引く「オレンジプロジェクト」が10月に始動しましたね。「オレンジ」は、岡山大学さんとNPO法人だっぴさんと無花果が合同で運営している高校生起業家コミュニティです。

  ひーくん:内容としては、「起業したい!」「好きなこと、得意なことを活かして大学進学をしたい!」等の相談を受け、生徒一人ひとりと一緒にプロジェクトを行っています。 例えば、学校への出前講座や、学校外でのイベントを通してプロジェクトを進めており、もっと活動したいという子向けには毎週木曜日の放課後の時間、17〜21時に+αの活動を行います。 これまでの活動に合計約50名が参加してくれました。岡山県内の高校生なら誰でも参加可能なので是非多くの学生さんに参加してもらえると嬉しいですね!

 

通信制高校の合同説明会の時のスタッフ。お揃いのカーディガンで。


山田さん:「オレンジプロジェクト」と謳っているものの、一旦は「オレンジ」というコミュニティとして認識してほしいです。ここには、「内なるエネルギーを持て余している人たち」にどんどん参加してほしい。こちらがモチベーションを上げてあげるのではなく、もともとモチベーションの高い人が集まってきてくれています。
リア充のコミュニティが沢山ある中で、「自分が高校生起業家コミュニティに参加していいのだろうか?」と考えてしまう方もいると思いますが、ここに来る方は別にリア充じゃなくてもいいんですよ(笑)
無花果は「内なるエネルギー」の象徴でもあります。
高校生起業家コミュニティー「オレンジ」は、くすぶっているエネルギーを爆発させる場所にしたいです。



topics②「あまり多くを語れない」フリースクール協議会

11月下旬の青空と木枯らし。急に寒くなる頃は、フードが心強い味方だ。

ひーくん:最近は、岡山県のフリースクール協議会発足に向けて準備をしています。
協議会を作る理由は、フリースクールに対する行政の支援をスムーズにするため。
子どもたちを支援する団体は沢山存在するので、一定以上の団体数が集まり組織化しておいてくれると行政の方々もサポートしやすいんですよね。
また、フリースクールにも色々あって、運営形態も多様。
「フリースクールとは何ぞや」という定義も難しいからこそ、フリースクール自体のあり方の指針を作ることがとても大切だと考えています。
そういった目的のあるフリースクール協議会の事務局窓口を、僕が担当させていただく運びとなっています。
タスクは多いけど、本質的に「よい教育」を届ける中では絶対に必要な活動です。
他地域には「フリースクールに通う子どもがいる家庭への給付金制度」「フリースクールに対する給付制度」など、様々な公的支援があります。
協議会を通して地域教育の在り方を考え、ゆくゆくは、岡山市のフリースクール利用者負担を0にしたいです…!
 
山田さん:僕達たちはそれが待てなくて、フライングで無償化をはじめたんですよね。



topics③「ぶっちゃけ、イヤだと思っている…」フリースクールもえぎの完全無償化

実は毎週やってるフットサルが、3年目に突入。全てはいいね!と思った瞬間から始まる。

山田さん:「いいね!」と思ったことにすぐに取り組むのが無花果。
実はお金が理由でフリースクールに通えない子がいるという現実が…。
金額面での補助がないのなら自分たちで始めようと思い、さっそく「フリースクールもえぎの無償化」に乗り出しました。

だからと言って、資金が潤沢にあるというわけでは決してないんですよ。
資金が乏しいからこそ、僕たちは多くの人と会い、情報を集め、知恵を出し合って活動しています。
例えば、「まとまった資金ができてから無償化すればいいんだ」と構えて、目標金額の収集に2年間かかったとしましょう。
子どもの2年間と、大人になってからの2年間では重みが全然違いますよね。その間に何人の子が学ぶ機会を逃すのだろうか…と考えると、やはり「今すぐ無償化を始めよう!!」という結論に至りました。
お金だけが理由で無償化できないというなら、お金を使った後でかかった費用を回収できるように動けばいい。そうすれば僕たちだけのリスクで済むじゃないですか。
生徒が悲しい思いをしなくて済むんです。
僕たちがどれだけ深夜まで考え、脳汁を絞り出し、工夫を重ねていても、「実はお金があるから無償化できるんでしょ?」という方もいるのですが、何度でも声を大にして言いますよ!お金は無いっ!!(笑)

ひーくん:逆に協力してくださる方も沢山いて、ずっと有難さを感じていますよね。ボランティアをしながら、なおかつ寄付をしてくださる方もいらっしゃいます。応援してくれる方々、通っている子たちがいるからこそ、持続性のある運営をしなくてはならない。そんな想いをもって運営していると、数百円の寄付も本当にありがたいんです。「何か力になりたいけど、何をしたらいいのか分からない」という方々へは、まず500円の寄付をお願いしています。

山田さん:現在、書籍を購入して無料プレゼントをしたり、生徒の関心から繋がったeスポーツ大会の協賛をしたりと、様々なプロジェクトを行っています。僕は将来への投資と考えてこれらの活動を行っていますが、「やっぱりお金持ってるんだ!」と捉えられて、ネガティブキャンペーンになっているのかも…と悩んでしまう時もあります。将来への投資より、「生徒に明日のご飯を提供する」というような即効性のある活動を発信すればいいんですけど、僕たちのしていることは路線が違うから。

無料プレゼントした書籍「学校に行かない君が教えてくれたこと」(著者:今じんこ)

ひーくん:その点はよく話題に上りますよね。子どもたちを「助けるべき存在」「かわいそう、恵まれない存在」と発信すると寄付は集まりやすいのかもしれません。しかし、僕たちにとって生徒たちはキラキラした存在。輝く姿をそのまま表現して発信しているので、寄付をする必要性を感じてもらいにくいのかと思っています。
 
山田さん:一概には言えないですが、目前の事象に投資するよりも、将来性のある事業に投資する時の方が面白いと思うんです。本来、お金を何かに変換する時ってワクワクするものじゃないですか?寄付もそうであるべきで、「良い使い方したな!」って思ってもらえる対象でありたい。
最近では継続寄付をしてくださる方も増えて、本当に有り難さを感じています。今後の「いちじくこばち。」でも無償化をはじめとする寄付の活用先について発信し続けていきたいですね。


今月の教育哲学:「よい教育って何だ?」


奉還町のバンクシー。アートと落書きの境目ってどこだろう。

ライター未来さん:「いちじくこばち。」最後は、毎回「今月の教育哲学」で締めくくろうと思っています。無花果が掲げる「子どもに“よい教育”をとどける」というスローガンの、“よい教育”にはどんな定義があるのでしょうか?

 山田さん:たしかに、敢えて漠然とした言い方にしているので、気になる方も多いかと思いますね。ここは哲学分野から定義を掘り起こしていく必要がある。僕はしゃべりすぎてしまいそうなので、ひーくんにバトンタッチします。 

ひーくん:無花果では、「自由と自由の相互承認」を軸に、“よい教育”を考えています。これは、教育学者である苫野一徳先生が提唱している教育哲学なんですよ。
ある時、哲学者ヘーゲルは「なぜ人々は争うのか」という問いについて考えました。そこで「人は自分が自由に生きたいということを自覚している唯一の生き物であり、自身の自由を求め争いがおこる」という回答を出しています。
争いが繰り返されるのは、自由を侵害されてる人たちが命を懸けて自由を取り戻そうとするからです。戦争に勝って他国を統治すれば、また自由を侵害された人々が集まり、いつか反乱がおきる。
ですから、本当の意味で生きたいように生きていくためには、相手の自由も承認することが、自分の自由にも繋がっていくんです。これをルールにした社会を実質化する役割を担っているものの1つが「公教育」です。
「自由の相互承認」を育むことを土台にしながら、「全ての子ども達が生きたいように生きていく力を育む」のが教育の本質、一番の役割だと捉えてます。

集まっても集まらなくてもよい。自由の相互承認を土台にしながら。

一方で、「何がよい教育なのか?」という問いに直面した時、子どものクリエイティビティが発揮される世の中がいいとか、学歴関係なく誰でも稼げるようになった方がいいとか、いろいろな意見が出ますね。

 山田さん:もちろん、クリエイティブさ、お金を稼ぐ力も大切かも知れません。しかし、それらは自由をつくるツールでしかないんですよね。
「自由の相互承認」を具体的にいうと、生徒同士でルールメイクも含めて何かを決定できるようになるみたいなこと。
例えば、自分は修学旅行絶対行きたくないけど、行きたいと主張する人がいる。
絶対に行くのも、絶対に行かないのも違うなら、「では、どうする?」という話し合いができる状態こそが、よい教育が実現できている状態だと思います。

 ひーくん:“よい教育”の軸をもっていないと、教育者それぞれの個人的な感想のもと教育が展開されてしまいます。
例えば、「夢はあった方が良い?無くても良い?」とか「学校に行った方が良い?行かなくて良い?」とか、そういったクエスチョン自体がナンセンス。
生徒1人1人の「自由と自由の相互承認」を実質化していくために、こういった時は夢は必要で、こういった時に夢は必要ではない瞬間もある...などのように、条件解明的に思考・実践をしていくのが“よい教育”かと思います。


真庭で有名な黒田酒店。見た目は隠れ家的だが、夜喫茶など様々なイベントが開催される。

山田さん:例えば、無気力に見える子がいて、その子が「生きたいように生きているんだ」と言っても誰も評価しないと思います。
しかし、「何もしたくない」という欲求があるのも事実です。
まずは、その欲求を僕たちが感じ取る。マイナスの感情もプラスの感情も、きちんと見つめるということが教育のはじまりだと思います。
 
ひーくん:無花果では子どもたちの自由を大切にしているといっても、もちろん、ほったらかしにしているわけではないんです。
自由とは解放を意味するのではない。
人にはその瞬間瞬間で持っている欲求があり、その欲求が叶うかもしれないと感じられる度合いが高い時、自由を感じます。
このように自由の裏には欲求が必ずあるからこそ、僕たちは、生徒のあらゆる欲求や感情をそのままに大切にしています。
 
山田さん:ノールールでもないし、怠けているわけでもない。
全ての瞬間の生徒の欲求や感情が、何よりも大切なんです。
 
ひーくん:“よい教育”を定義するのは傲慢だとか、単一的な教育になるとイメージする方もいるのですが、むしろ逆です。“よい教育”を土台にするからこそ、生徒1人1人の欲求や感情を起点にした多様な教育が生まれていくんです。
その上で、生徒にとっての“よい”、保護者にとっての“よい”、僕たちスタッフにとっての“よい”が重なり合った取り組みを、これからも深め広めていきたいと感じています。
面白いことに、生徒から「これは“よい教育”っていえるのか?」と、つっこまれたりもしますよ(笑)
 
山田さん:さすがですね。みんな、本当に賢いし、強い…(笑)


ひーくん:「生きていること自体が探究である」と哲学者デューイが唱えています。
それを受けて、僕達は「DOとBEの探究」という考え方をつくりました。
人は「DO=何をしたいか」「BE=どうありたいか」を探究し続けるものだと考えています。
「自由の相互承認」を北極星に、何をしたいか、どうありたいかという探究をグルグル繰り返して、実はちょっとずつ前進している。その過程、いわゆる道草こそが尊いものだと思うんです。
生徒たちが「DOとBEの探究」を繰り返してきた回数やその質自体が、卒業後にもその子自身が「生きたいように生きていく」ため何よりの土台になると考えています。
 
山田さん:結局僕らも幼い時からずっとやっているんですよね、「DOとBEの探究」を。学生時代は社会人になるための準備期間の様に考えられがちですが、別に何かを目指して生きているわけではない。今この瞬間自体が本来の人生なんだし、大事な時間なんだと思って子どもたちと向き合っています。


ギターと一緒に寝る生徒。奥にはギターを弾いてる生徒も。

ひーくん:一見無花果での日々はゆるやかに見えるからこそ、「無花果に通っている子どもたちは本当に将来大丈夫なの?」と言われることもあります。しかし、子ども達は今この瞬間の姿で「大丈夫」だと伝えてくれているんです。例えば進学・就職した生徒も実際にいますし、実際の生徒たちを見てもらえたら一目瞭然のはず!
次回の「いちじくこばち。」では生徒たちの進路についても深堀りしたいですね。

おわりに

ひーくん:今月のトピックスと教育哲学で、初回からボリューム満点の記事になりましたね。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
さて、皆さんも是非「いちじくわぁるど」の住人になりませんか?
「1日33円からできる応援」や「1回500円からできる応援」をお待ちしております!

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