見出し画像

装丁の想定『ふたりのロッテ』

12/13は双子の日。
ネットでは11/25が「いい双子の日」なんて言われていたりするけども。

「装丁の想定」
実在する本の表紙に使われるイラストをイメージして、個人的に制作した絵のシリーズ。2010年くらいから細々と描き続けています。

お転婆なふさふさの巻毛ちゃん・ルイーゼ(左)と、真面目なおさげちゃん・ロッテ(右)。

『ふたりのロッテ』 著:エーリヒ・ケストナー

多くの子供たちが夏休みを過ごす「子どもの家」。
9歳のルイーゼ・パルフィーは、そこで自分とそっくり同じ顔の女の子ロッテ・ケルナーに出会う。
ルイーゼは驚きと戸惑いからロッテに意地悪をしてしまうが、ほどなく大の仲良しになる。
そして気づいてしまった、自分たちは幼い頃に生き別れた双子の姉妹なのだと!
ふたりはお互いの格好をそっくり取り替え、ルイーゼは出版編集者のお母さんが待つミュンヘンの、ロッテは指揮者のお父さんの待つウィーンの、行ったこともない家へ「帰る」。
双子の入れ替わり作戦が始まった。

私はタイトルに惹かれて実写映画から入りました。
実写版はいくつかあるようですが私が見たのは『Charlie & Louise: Das doppelte Lottchen』。
双子の名前が「シャルロッテ」と「ルイーズ」で、時代設定も現代よりにアレンジされています。お転婆なシャルロッテの愛称が「チャーリー」で、いかにも真面目なルイーズの格好が「ダイアナ妃みたい」と揶揄われていたのが記憶に残っています。グラサンでちょっと不良っぽい?チャーリーとルイーズの対比がおもしろい。

日本アニメにもなってますがこちらはDVD化はしてないもよう。
わかりやすく派手なキャッチーさはないけど人間ドラマとして今見てもおもしろいんだけどな〜
最近「世界名作劇場」がたくさんアマプラに入ったしこれも来ないか〜?



前々から『ふたりのロッテ』を描いてみたいな〜と思っていたところ、11/25「いい双子の日」が近づいて衝動的に描き始めました。

二人の名前は母親の名前「ルイーゼロッテ」を半分こしたもの。
著者ケストナーの内縁の妻の名がルイーゼロッテ・エンダーレ。彼女は伝記作家として知られるジャーナリストだったそうです。

ルイーゼはふさふさの巻毛を広げて、常にロッテを引っ張って走り出すイメージ。表情もロッテより大きく口を開けていたり、それとなく違いが出せたらなと…思いながら描いたのですがイラストだと「そっくり同じ顔」だとわからせるのが思ったより難しかったです。
前髪をそろえるとそれっぽく見える気がする。
ロッテのおさげは今時のゆるふわじゃなくてキュッとひっつめてるかんじ。ポーズも内股でお淑やかな印象になるように。

この物語の年代がいつ頃なのか正確にはわからないのですがたぶん50年代あたり?なのかな?
日本版アニメを見てても女の子がズボンを履くことはまずない時代っぽいな〜とは思ったのですがルイーゼにキュロットを履かせたくて…
お仕事でもないし自分が描きたいの優先するか!とこうなりました。実際のお仕事ならスカートの翻りで太腿が見えるのも自粛する場合があるかもな〜と思ったり。生き生きとした動きはつけたいけど児童文学の雰囲気も崩したくはないのでバランスに迷うところ…

線画と簡単な彩色まではやったけどなんか絵柄がしっくりこないな?
と感じたので描き直しました。
実際のお仕事では許されなさそうな方向転換…

ポーズはそのまま、デフォルメ感をガラッと変更。
ルイーゼはシャープな形の襟と袖にハイソックス、ロッテは丸襟・パフスリーブ・三つ折り靴下…で、活発そう⇄おとなしそうの対比。
おでこちゃんverで考えてみたりもしました。
この絵柄だと余計に「同じ顔で違う表情」は難しい…やはり前髪がポイントか?
ロッテはリボンがあるのにルイーゼの頭に何もないと寂しいな…ということで帽子。
 …だったのだけど作中で「花冠をかぶせて仲直りする」シーンがあるので、「描きたい!」となってまた変更。
当初は「シンプルな白背景にキャラクターがふたり」という構図で考えていたのですが、読み返しているうちにいろいろ描きたくなり、飾り枠を作ることにしました。
左上から時計回りに──
ルイーゼの好物オムレツ(ロッテはオムレツ嫌い)、犬のぺぺル、楽譜と指揮棒、お父さんの写真と手紙、レモネード、ルイーゼの人形クリストル、トランク、秘密のノート、レシピ本とお母さんの好物のヌードルスープ、お母さんの写真立て、リボンと櫛とブラシ。
表紙をみた人が「どんな物語なんだろう?」とわくわくしてくれたらいいなと。
周囲のモノはそのまま挿絵に使えるのでは?と思ったのでモノクロで描き始めています。
隙間を埋めるのに植物っぽいのがほしいな…と敷き詰めてみる。
青い花は勿忘草。
ふたりはそれぞれの家から連絡を取り合う手紙の宛名を「わすれな草さま」としています。
ひとつずつ地道に彩色。
この物語の装画は生き生きとかわいらしく!したかったので、明るくカラフルに(難しい…)。
でもちょっとうるさくなりすぎた気がする…

完成

最終的に葉っぱをなくし、勿忘草の花を増やしてバランスを取りました。
全体の色を整えて完成。
我ながらかわいく描けたと自画自賛。

軽い気持ちで始めたのに、仕事か?というくらいがんばってしまいました。
(なんだかんだいつもそうなる…)
このまんまる顔の絵柄はクセが強いので使い所がけっこう難しいのではと自分でも思うのですが、色の塗り方などで児童文学の薫りを演出することもできるのでは…と挑戦してみました。
やわらかで繊細な表現にしたいときはシャーペンでモノクロ画を作ってPhotoshopで彩色という手法を使うのですが、時間がかかるので、今回はすべてPhotoshopでどれくらいそれっぽくできるかも挑戦してみたり。

こんな雰囲気で児童小説のお仕事がしてみたいのですがどうでしょうか。
お仕事ください。



サポートしていただいた売り上げはイラストレーターとしての活動資金や、ちょっとおいしいごはんを食べたり映画を見たり、何かしら創作活動の糧とさせていただきます。いつも本当にありがとうございます!!