「聖ニコラウスの日のスペクラティウス」
12/6は聖ニコラウスの日(ドイツ語ではSankt Nikolaus Tag)。
サンタの起源であるといわれている聖人の命日です。
サンタクロース・デーとも呼ばれるこの日は、
よく磨いたブーツを玄関やベッド脇に置いて眠ると、朝にはブーツの中にお菓子やプレゼントが入っているそうな。
スペクラティウスとは?
聖ニコラウスは日本でイメージする典型的サンタより「聖人」ってかんじの服装。十字架のついた帽子を被り、杖を持っている。
そして1年間いい子でいたかどうかを記録してある本を持っていたり。
あとトナカイでなくロバに乗っているらしい。
プレゼントをくれる聖ニコラウスのために、5日の夜にはクッキーとミルク、ニンジン(ロバの餌)を置いておく風習も。
ブラックサンタ
中村光先生の『ブラックナイトパレード』も実写映画化したし、昔より日本での認知度も上がってるのかな?
サンタ的なおじさんといっしょにやってくる「怪物」役は
オーストリアや東ヨーロッパでは「クランプス」、フランスでは「ペール・フェタール(ペーフェター?)」、オランダでは「ズワルトピート(ピート少年)」、スイスでは「シュムッツリー」、チェコやスロバキアでは「チェルト」など、いろいろあるようです。
天使と悪魔の両方を連れている地域もあり。
聖ニコラウスもニコラやらミクラーシュやら、呼び名がいろいろ変わるのでなかなかややこしい。
OLIVIYAが扮しているのは「クランプス(Krampus)」をイメージ。
この子には怪物の格好がよく似合う。
黒っぽく毛むくじゃらで、大きな山羊のツノやヒヅメが生えていて、悪い子を籠に入れてさらったり鞭(白樺の束?)を振るったりする。
クランプスという名前はバイエルン語の「死んだ、腐った」あるいは古高ドイツ語で「鉤爪」という意味の言葉に由来すると考えられているそう。
オーストリアやドイツのバイエルン地方では12月5日の夜「クランプスナハト (Krampusnacht)」に、クランプスのパレード「クランプスラウフ(Krampuslauf )」があります。たくさんのクランプスが行進し、悪い子を鞭で叩いたり、シュナップス(果物の蒸留酒)をふるまったり。
ナハトは夜、ラウフは走るという意味。
藁のクランプスはほんとになまはげ感がある…
現代はハロウィンっぽいかんじなんですかね。
ニューヨークタイムズの動画には伝統的な木製の仮面を彫るシーンもあっておもしろい。
2023.12.13追記
「グレーテルのかまど」でクランプスのパン特集がされました〜
こちらでは主に毛皮の着ぐるみのクランプス衣装に触れてた感じ。
番組では「クランプスブレッド」と紹介されていたけど、たぶん現地はドイツ語圏?だから違う呼び名(日本人に伝わりやすいような紹介の仕方をしている)なんじゃないかな〜
英語のブレッドにあたるのはドイツ語のブロートですよねたぶん…
と呟いたら
・シンプルなパン生地の場合はSemmelkrampus
・バターたっぷりの生地だとBrioche-Krampus
・南ドイツだと呼び名が変わってKlausenbrotなど
とのこと。おもしろいですね〜
2023年のクランプスブレッド回で取材をされていたという方のアカウントでもおもしろい情報をいただけました↓
↑こちらでは後述するペルヒタも載っていますね。
ちなみにドイツではクリスマスのことをWeihnachtenというらしい。
サンタクロースに相当する言葉はヴァイナハツマン(Weihnachtsmann)。フランスのペール・ノエルと似た表現ですね。日本語にするとクリスマスおじさんってニュアンスなのかな。
これはアメリカのサンタクロース像が逆輸入されたかんじらしく、日本人にも親しみ深い、赤服のふくよかなおじいさん。
クリスマスイヴはHeiligabend(Heilig(聖なる)+ Abend(夜))。
プレゼントをもらうのが12/5〜6なら12/24〜25は何をするの?というと、その日はその日で「クリストキント(Christkind=幼児のキリスト)」がプレゼントをくれるそうです。ドイツ南部ではサンタよりこっちのほうがメジャーなのだとか。カトリックとプロテスタントの違いらしい。
私が「クランプス」を初めて知ったきっかけは
ドイツ映画『命みじかし、恋せよ乙女』(2019年)。
原題は『Kirschblüten & Dämonen』(桜と悪魔)。
クリスマスシーズンにヨーロッパ版なまはげみたいなのの行進と出くわすシーンがあるのです。たぶんこれは「ペルヒテン」の行進「ペルヒテンラウフ」。
キリスト教に異教の神としてペルヒテン(女神ペルヒタが原型?)が禁止され、クランプスと統合された…というような記述も見かけましたが詳しいことはよくわかりませんでした。
ペルヒテンはたぶん白い毛むくじゃらの姿なんだけど、12/5にクランプスと一緒に現れたりで混同されることも多くなってる…のかな?
「悪い子」「悪夢」「井戸」「子供の幽霊」…などのワードが映画のいろんなシーンと重なってOh…となる。
たぶんそんな「おもしれー!!」てなる映画ではないと思うんですが、題材が好みで5回くらい見ました。
これは2008年の『Hanami』という映画の続編なので、まずそっちのストーリーを頭に入れてないと、筋はわかっても心に響きにくい作りだと思います。
『Hanami』は妻に先立たれた男ルディが、日本へ旅立ちます。そこは生前の彼女が行きたがっていた国であり、息子カールの働いている国でもある。
仕事が忙しい息子に冷たくあしらわれ、ルディは亡き妻の代わりにその服を身に付けて東京を彷徨ううちに、桜が満開の公園で踊る少女に出会います。
『命みじかし、恋せよ乙女』はそのルディの死後、息子カールが主人公となった物語なのです。
父親が死んでなおその呪縛(男らしくあることの強制…など)から逃れられない息子が、謎の日本人少女と交流することで少しずつ開放されていくかんじ。
これほんと、ネットであらすじを読む前と後では映画から感じとれる情報が段違いでした。息子にとって父はずっと厳格な支配者なんだけど、『Hanami』ではその父の弱さとか、女性ものの服と化粧を纏って踊ることで解放される様が見れるんですねたぶん。でもそれを知らない息子は、抑圧され続けた過去の記憶に苛まれ続ける。記憶が悪霊になり、それに飲み込まれると自分自身も鬼になる…みたいな…?
「電話」は人との繋がりの象徴にもなるけど(視覚的にもコードが人の縁みたい)、「電話に出ないという行為」はものすごい拒絶と断絶の象徴にもなるんだなぁ…と繰り返し見ていて思いました。
『Hanami』も見たいけど日本では円盤化してないようだ…
なまはげと似た来訪神の風習は、日本国内にもいろいろあり。
鹿児島県・種子島の「トシドン」とか。
子供を厳しく叱ったり、逆にできていることは褒めてあげたり、お年玉の原型とも言われる「歳餅」を背中に乗せてあげたり。
トシドンの地域だったかどうかは記憶が曖昧だけど
こうした風習が続いているけど人口減少の影響(小さな子供も、成り手も不足)でこのままだと途絶えるかも…という地域で
「外部からイベント的に派遣してほしいという要望もあるが、それでは本来の行事の意味合いが変わってしまう。そんなふうに残すなら滅んだ方がいい」というインタビューを見たこともあります。
商業主義に呑まれず文化を継承するって私が想像するよりずっと難しいんだろうな。
最後のほうクリスマスと関係ないけど、ここは備忘録もかねているのでまぁ。
クリスマスシーズンのお菓子は美味しそうで楽しくて描きたいのがいっぱい。
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