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チェコの民俗学者カレル・ロズム

中欧や東欧の聖バルバラの日について調べていたある日、画像検索でとても気になる仮面装束の図版を見つけた。一体誰が描いたものなのか。今回は探偵気分でネットを彷徨いお目当ての図版が載っている本を手に入れたお話し。


◆この図版の作者は誰?

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この図版を初めて目にした時、民俗学云々よりも暗くてちょっと不気味で霊的な雰囲気に心惹かれた。どうしても作者が知りたくなり画像検索をしてみると Pinterestとtumblerにピンされた画像ばかり。どちらかのリンクを踏むとどちらかに飛ぶ……その繰り返しでいつまで経っても掲載元に行けないという負のスパイラル。3日かけてやっとその画像がチェコの民俗学者カレル・ロズムという人が描いたものだと判明。嬉しさのあまり小躍りしたものの掲載書籍を探すのにチェコ語は難解。Google翻訳を使い、数日後にやっと書名を突き止めた。

そこから海外発送をしてくれるチェコの古書店を探し数ヶ月。購入する巻数を間違えたり支払いがカード不可だったり右往左往しながらどうにかロズムの図版が掲載された本を購入することができた。

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『Veselé chvíle v životě lidu českého   I~IV., VI~VIII + 別冊』          Čeněk Zíbrt著   1909 - 1911年発行(右)   (左の赤い本は巻数を間違えて購入しロズムの図版が掲載されていなかった『Český lid XXVI』1929年発行 装幀が美しいので良かったことに)

◆カレル・ロズム

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1856年8月12日チェコ生まれ。ウィーンの工科大学で数学と画法幾何学を学び、同時に美術工芸大学で素描と油画を学ぶ。大学生卒業後に出会った画家であり民族誌学者のヤン・プルセクという人物の助言がきっかけで19~20世紀にかけてチェコの民俗的な風習を収集し、その際に仮面装束などを描いて記録した。

◆カレル・ロズムが描いた仮面装束

『Veselé chvíle v životě lidu českého』に掲載されているロズムの図版を一部ご紹介。

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↑”Brûna z Keblic”聖ニコラウスの日12月6日に訪れる来訪神。

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”Perychta z Dufit” エピファニー(公現祭)の日に登場する民間伝承の女神ペルヒタに由来する来訪神。

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“Perychta z Podřipsko”同じくエピファニー(公現祭)に登場するペルヒタ。 左側の人物は聖ニコラウスと思われる。

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“Perychta z Hrdel” こちらもエピファニー(公現祭)に登場するペルヒタ。やはり左側の人物は聖ニコラウスと思われる。

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”Lucky z Budějovic”  聖ルチアの日12月13日に登場する来訪神。Luckyは聖ルチアのこと。この本や最後にリンクしたサイトだとこの来訪神はLuckyと呼ばれている。しかしネットで調べてみるとこの来訪神をBarborky(聖バルバラ)と呼び、同行している赤いリボンを腰に巻いた少女たちがルチアと呼ばれている場合もありはっきりしたことがわからない状態。         

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”Barbory z Roudnici”聖バルバラの日12月4日の来訪神。

「◯◯◯ z 〜」の◯が来訪神の呼び名、zの後が地方名。こうして見るとペルヒタなど同じ民俗行事でも地域ごとに異なる仮面装束が見比べられとても面白い。それにしても見れば見るほどロズムの描いた図版には不思議な魅力がある。

最後に実際のBarborkyやPerychtaが見られるチェコラジオ局のサイトを。