The Stone Rosesの革命
1989年に或るバンドが出現した時、価値観というか、既成概念というか、そんなものが丸ごとひっくり返ってしまうような経験をした。
彼らの何が凄かったのか、その後多くの評論で語られているので、ここでは避けるとして、驚いたのは、彼らの音が世界に轟いた最初期のアルバムのアートワークそのままに、当時勝手に楽曲をリリースしたレコード会社に乗り込んでいき、ペンキをぶちまけた事(上写真)。
もちろんメンバーは逮捕されたが、結果的にそれがパブリシティとなって、バンドが世界唯一の、目が離せない存在となっていった経緯は、今でも忘れがたい。
行為がアート的に社会への批評となるところはジョン・レノンのようだし、逮捕されたり叩かれたりすればするほど、強く太々しくなってゆくところは、ブライアン・ジョーンズ以外のストーンズ的でもある。
けれども、1989年においてさえ、ロックって、『ノルウェーの森』という本が売れまくっていて当時の大学生たちによく話題になっていた事以外、終わったんじゃない?と言うか、遠い昔の事みたいだった。
ビートルズもストーンズも、大学に通う者たちの間ではあまり話題になりそうになく、独りで聴いていた。ところがストーン・ローゼズは、1960年代直系みたいな楽曲を、一晩中ダンスフロアで踊りたくなるような強烈なビートに乗せ響かせた。
こんな事が、あっていいんだ、と思ったし、凄まじく風通しが良くなったように感じた。
彼らが空けた風穴からは、眩い色彩が身体に吹きつけた。
あの時の風の感触を、以降は主にファッションのプロダクトに感じてきた。
MVや番宣などの広告でも、この手法はインパクトを与えるものとして用いられた。
しかし、メイキングを見ていても思うのだが、ペンキをぶちまける、という方法だと、色と色が混ざり合って濃色になり、キレイに発色が出ない。
飛沫のとび散りや、インクの跳ね具合に、風の様々な表情が現れるよう、デザインを行なった。もちろんインクジェットによる工法で。
2024年の今年、元Oasisのリアム・ギャラガーと元Rosesのジョン・スクワイアがアルバムを出すというので、やはり期待は高まる。
ストーン・ローゼズが空けた風穴はあまりにも大きく、もしかしたら当人たちにとっても困難なものかもしれないが、たとえ逆風になったとしても、あの、革命の季節の鮮やか過ぎる風の感触は、皮膚に刻まれている。
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