高校生に起業を教えてもらうことになりそうです
昨年から特別非常勤講師として関わらせて頂いている神戸市の甲北高校さんが、この度2025年から神戸北高校と統合されて生まれ変わることになりました。
文科省の発表によると、2021年時点で2002年から2020年までの18年間で公立の小中学校、高等学校は廃校の延べ数が8580校までにものぼっています。
県立高等学校教育改革の一環として、地域の人口減少をきっかけとして、学校の統廃合を必ずしもマイナスな側面で捉えるのではなく、「学びたいことが学べる魅力と活力ある学校づくり」の機会として、今回の高校再編が進められています。
その中で統合される新学校における教育の特色の中に驚くべきことに「兵庫からスタートアップを生み出そう」というものが掲げられています。
https://www2.hyogo-c.ed.jp/hpe/uploads/sites/10/2023/12/3jikeikaku_jissikeikaku-R512.pdf
大学の教育や私立高校で学習指導要領が変わったことをきっかけに探究学習の中にアントレプレナーシップ教育が積極的に進められている事例は徐々に出てきているかと思いますが、公立の高校の特色の中に明確に「スタートアップを生み出そう」と明示されているのはかなり珍しいのではないかと思います。
2019年頃から教育プロジェクトを始めたことがきっかけで中学生・高校生とお会いさせて頂く機会が急に増えましたが、私自身が大学生だった10年前にも大学生の間で一部流行っていた学生団体の立ち上げや大卒後すぐに起業する人たちを見て、「思い切りのある人たちもいるんだなあ」と感心していた覚えがありますが、
こういった挑戦を始めるタイミングが20代から一気に10代の早いタイミングにシフトしています。
当時最も驚いたのはコロナ前の2019年当時に既にZoomを駆使して、イベント当日までお互いに一度も会ったことがない全国の高校生がオンラインで繋がって、組織を作って当日までのプロジェクトマネジメントを全て進めて、大人の登壇者だけでなくスポンサーまで集めて200人規模のリアルイベントを実施していたことです。
正直当時会社員として働いて7年目に突入して、職場において働き方改革(中でもテレワークなどの場所に捉われない働き方)を担当していた自分として、この中高生達の意識レベルの高さには大きなショックを覚えました。
それだけでなく、そして既に10代の早い段階でこの自律分散的な組織体制を経験している彼らが、あと5年後にこの世代の子達が今の大企業の働き方に順応するのは難しいどころではなく、そもそも入口の段階で就職を選ぶことはほぼないのではないかという危機感を覚えました。
恐らくは20代だけで構成されているスタートアップ起業に就職したり、副業で起業を選んだり、大学生の間に創業してしまうだろうなと。国からの起業家向けの支援は10年前20年前よりも手厚くなっており、特に若い世代にこそ起業というものがそんなに遠い存在ではなくなっているのではないかと思います。
彼らに出会ったことが私自身が起業という道を選ぶ大きなきっかけの一つになっていたことは間違いないだろうと思います。
そんなこともあり、これからの時代は起業で成功する人は時代に選ばれた(若しくは死にも狂いで血と汗と涙を流した)ごく一部の人だけではなくなり、その気になれば日本人全員が起業できるようになった起業の民主化時代に突入しました。
ただし、5教科7科目やスポーツと「起業」との間で明確に違うところはそこにマニュアルや決められた正解が存在しないということです。
特に昭和・平成と続いていた大量消費大量生産型ビジネスが主軸だった時代における起業と、AIが民主化された今の時代において新たに始める起業では、マーケットの潮流から人の巻き込み方まで全ての局面が変わってきます。
特に今のビジネスの作り方の基本となっている「課題解決型」のビジネスは今後主流ではなくなるのではないかと予想しています。
本当の意味でのダイバーシティー&インクルージョンが進んだ世界においては、ただの多様性が広がるだけでなく、一人ひとりが別のパラレルワールドに暮らしているのではないかと思うほどに見ている世界が違います。そんな世界において、一人ひとりにとっての課題はまるっきり違ってくると思いますし、何よりアンケートを取って抱えている課題感をヒアリングして、そこから出てくる課題を取り除いたところで対処療法にしかならず、原因療法になっていないケースが多く見られます。
そこでこれからの時代におけるビジネスのメインストリームになってきそうな領域は「祭り」「遊び」「エンターテインメント」等のいわゆる”おもしろい”ことなのではないかと予想しています。
既に物質的に豊かになっている現代において、表層的な課題を解決するだけではなく、別にやらなくてもいいけどやったら盛り上がりそうなこと、人を笑顔にできること、結果的に目の前にある課題だと思っていたことがどうでも良くなるほどに心が高揚してくることにこそに、潜在的なビジネスの需要があるのではないかと思います。
そしてそのような本質的なビジネスは最初はただのお遊びから始まり、それでお祭りが始まり、それはやがて世の中の新たな「文化」になるポテンシャルすら秘めています。
大変ありがたいことに、2024年度から神戸市の某公立高校さんの探究授業の中で、高校生に起業を教える講師として入らせて頂く可能性が高まっています。
しかしながら、私自身は起業して現在2年目という段階で起業における正解も不正解も現時点では手探りの状況です。
きっと起業を教えるというよりも、高校生自身が起業するプロセスを一緒に体験させてもらうことで、これからの時代の起業を共に学んで共に進んで行かせてもらうのではないかと思います。ある意味で「起業」の授業こそが、中高生と学校の先生方、民間で働いている大人が壁を超えて繋がって、共に道を歩んでいける唯一の授業かもしれません。
一緒に起業を学ばせてもらいつつ、私の役目としてはこれからの時代の起業を作っていく彼らにこれからの時代がおもろいと感じてもらえるようなそんな大人を一人でも多く世の中に作ること、そして私自身が一人の起業家として今を思いっきり楽しんでいる姿を体現することではないかと思います。