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あきはたんころりん

幼少期は田舎で育ちましたから、
家も大きかったんです。
庭、草木、畑、納屋などを含めると
かなりの敷地でした。当時の記憶なので正確にはわかりませんけどね。
古い木造でして、昔ばなしに出てくる庄屋どんの家みたいな

とにかく古くてね
コールタールって分かりますか?
あれが納屋の壁に塗ってあるみたいな。
そんな昔ながらの農家で育ったんです。

自宅の周りの約半周が柿の木に囲まれ
その数、おそらくは20本ほど
他は松、竹、梅、棗、椿、など他
とにかく2階の屋根と同じかそれ以上の背の高さ。
そんなところでわんぱくに育ちました。

たんころりんとは

なんともまぁ、可愛らしい響きですこと。
ご存じない方は たんころりん 水木しげる で
ググってください。そうです知る人ぞ知る、柿の妖怪でございますなぁ。

これがまた名前の割に、エラい形相でございまして
妖怪好きの少年であった当時の私を震え上がらせたもんです。何故って、柿の木に囲まれてますからね、季節になればおびただしいほど柿の実が付きますので
もちろん食べきれないわけです。

干し柿にしてみたり、渋柿の焼酎付けがあったり
それでも取り切れないんです。
すると野鳥たちが啄みに来るんですが、
そのうちに完熟しきった真っ赤な柿が


ヒュッ


べチャッ!!


地面に落ちるわけですね。
甘ったるい臭いと、潰れて飛び散った赤い柿が
なんとも恨めしそうに声を上げてる気がしたんです。
地面から「ギョロ」っとこっちを見ているようでした。

学校からの帰り道、潰れた柿を避けながら
玄関まで歩くというのが憂鬱…

今でも柿の匂いを嗅ぐと
少年だったあの頃を思い出します。

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