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短歌

余裕があるので、幾首ほど。

爪切りて 肉裂き 滲む血と痛み 痛みの諄さがあなたと似たり
海水魚 硝子の世界の 海の中 青い照明が 照り映える夜
造られし 人口の自然 硝子箱 蜥蜴と 地を這う蟋蟀の子ら
造るのは 愉しむためと 子供らが 工具を揃えて 父上の真似
毬を蹴る 幼き仔らが グランドで レガース巻く手は 得意げなりか
刎ねられて 泣く子も グランドの闇経て 今では 芸術気取りの先生
仔を殺し 叔父も討ちとり 館焼き 戦火を駆ける日も まだ最近   
波が打つ 碧い巌の 群れうるは 潮風が喉 焼けつかす海辺
喉枯れど 涙は枯れぬ  我が叔父は 安らがらぬ冬の 海辺に一人
世の果ての ひび割れし大地 その向こう 巌の隅で 虫喰う鼠
根菜は 温かくなると テーブルに座りて ごぼうを切る 午後三時
灰汁を取り 捨てし 流しのステンレスに 窓から射すは 午後の薄日なり
ネメアーの 獅子の絵の如き アクはなし サバンナに寝る 雄の“らいおん“

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