歌集「遠ざかる情景」#2
思い出……。もう、失ってしまった“それ“は、今も心の中に存在し、今の私の荒んだ心に冷たい水のような潤いを与える。その反面、それを失った悲しみは、私の貧弱な心臓を突き刺す。それは時に、胸に太い杭を打ち込まれていな痛みになって現れるのだ……。
目を閉じれば確かに存在している、緑あふれる田園や、夕陽の差す海辺の街並み。もし、それがなければ、あの苦しみや痛みはない。しかし、目に浮かび続ける“それ“を手放すことができない、私がいる。
引き出しから、薄汚れた宝石箱を開け、古くなり、