1999_yr

スペースジャンク

明日の記憶

 1  雨が。  雨が降っている。  車は死んだ義兄を乗せて、雨に降られる街に消えていく。雨を吸い込んだ喪服が一層重くなる。 「ミツ。私たちも行こう」 「凪」 …

愛の降る季節

 この人が雨を連れてきたんだ。 教壇に立つあの人を初めて見た時、そう思った。 きっとこの人が、雨の季節を呼び寄せたのだと。 「弥永です。よろしくお願いします」 …

心臓に消えない愛を

   ママが死んだ。まだ四十にもならなかった。  ママはまるで魔物のように美しい人で、私はずっと、この美しい人が人間だなんて、私の母親だなんて思えなかった。この…

ねこのはなし

そとで猫が鳴いている。けんかだが発情だかわからないが、ぶみゃあぶみゃあとやたらと濁音のおおい声で鳴いている。 クローゼットで眠るまさむね(最近のおきにいりの寝ど…

死にゆく人

   最寄りの駅から坂を登り続けること十五分。お兄さん、着きましたけど。愛想のない運転手の声で微睡みから目が覚める。領収書をもらい、帰りも迎えに来るように頼む。…